家庭裁判所の調停とは・・・
親子間の争いや夫婦間の争い、相続関係の争いなどの家事事件を扱うには、家事審判法という法律があります。
家事審判法は家庭の平和と健全な親族共同生活の維持をはかることを目的として、調停前置主義をとっています。
これは、家庭内のトラブルについてはいきなり訴訟ということは認められず、原則として、必ず家庭裁判所の調停を経なければならないというものです。
家事事件といわれるものは、大きく3種類に分かれています。
1つ目は家事審判法9条に定める甲類審判事件といわれるものです。
本来紛争性がなく、家庭裁判所が当事者の意思に拘束されずに、公の立場から判断すべきだとされている事項です。
2つ目は家事審判法9条に定める乙類審判事件といわれるものです。
これは紛争性があり、最終的には家庭裁判所の判断によって解決される事項なのですが、当事者の協議や合意にもとづく解決が望ましいとされる事項です。
3つ目はまず家庭裁判所に調停を申立、その後でなければ訴訟を起こすことはできません。
家事事件の種類
<甲類審判事件>
①後見開始の審判とその取消
②保佐開始の審判とその取消
③不在者の財産管理に関する処分
④失踪宣告とその取消
⑤子の氏の変更許可
⑥未成年養子の許可
⑦利益相反行為における特別代理人選任
⑧親権・管理権喪失宣言とその取消
⑨後見人などの選任・辞任の許可・解任
⑩限定承認・放棄の申述の受理
⑪特別縁故者への遺産分与
⑫遺言書の検認
⑬遺言執行者の選任
⑭遺留分の放棄許可
など42項目
<乙類審判事件>
①夫婦の同居・協力・扶助に関する処分
②婚姻費用の分担
③財産分与
④親権者の指定・変更
⑤扶養
⑥推定相続人の排除とその取消
⑦遺産分割
など10項目
<人事訴訟事件>
①婚姻事件として、婚姻の無効・取消の訴え、離婚とその取消の訴え
②養子縁組事件として、養子縁組の無効・取消の訴え、離縁とその取消の訴え
③親子関係事件として、嫡出否認の訴え、認知とその無効・取消の訴え、父を定める訴え
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家庭裁判所の審判とは・・・
家事事件に関しては、訴訟を起こす前にまず家庭裁判所に調停を申し立てなければなりません。
家事調停は、家事審判官と家事調停委員からなる調停委員会によって行われます。
調停を申し立てられても、不調に終わったり、当事者から異議申立てがあったような場合は家庭裁判所の職権で審判を行うことができます。
調停手続で当事者が合意に達しない場合でも、家庭裁判所は必要な事実を調査し、家事調停委員の意見を聞いた上で、当事者の合意を正当と認める場合には、合意に相当する審判をすることができます。
これは婚姻・離婚・縁組や親子関係の確定などについて、当事者の合意だけで定めては不都合な場合に備えた手続です。
この審判に対して、2週間以内に関係者から異議申立てがあれば、効力を失います。
また、調停手続で完全な合意に達しない場合でも、家庭裁判所が相当と認めるときには、家事調停委員の意見を聞き、当事者双方のために一切の事情をみて、職権で調停に代わる審判を行うことができます。
この審判に対しても、2週間以内に関係者から異議申立てがあれば、効力を失います。
いずれの審判でも、この期間内に異議申立てがなければ、確定判決と同一の効力をもつことになります。
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支払督促とは・・・
相手方が債務の存在を認めているもののなかなか支払いに応じないという場合には、支払督促という手段があります。
支払督促は迅速で簡単に支払いを実現させる法的手続きです。
債権者からの申立を受けて、裁判所が債務者に対し債権の支払いをするように命令を出します。
申立を受けた裁判所は、証拠調べや債務者に事情を聞くなどの行為は一切行わず、債権者の申立書を形式的に審査するだけで支払督促を出します。
訴訟のように費用や時間はかかりません。
支払督促は、債権者の一方的な申立に基づいて行うものですから、申立人の請求に誤りがあったり、請求自体が不当だという場合には、債務者は異議を申し立てることができます。
債務者からの異議があれば訴訟に移行することになっています。
しかし、相手方から異議がなければ強制執行に着手することもできます。
支払督促を利用できる権利には制限があります。
金銭又は有価証券その他の代替物の一定量に関する請求、つまりお金や株券・手形や小切手などの有価証券の支払いを請求する場合や、お米やガソリンなどの代替物を請求する場合だけに限られています。
土地や建物の明け渡しや動産の引渡を求めるためには利用できません。
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支払督促は簡易裁判所へ申立てる・・・
支払督促は、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申立書を提出します。
相手方が法人なら、請求する債権が生じた支店や営業所の所在地を管轄する簡易裁判所へ、手形・小切手による支払い請求では、住所地と支払い地が異なっていれば支払い地を管轄する簡易裁判所に申立をします。
訴訟の場合、訴額が140万円を超える場合は地方裁判所、140万円以下の場合は簡易裁判所が管轄になりますが、支払督促の場合はそうではありません。
請求金額がいくらであっても、簡易裁判所に申立をします。
支払督促は相手方に送達される事が条件になっていますから、例えば債務者が国外にいて送達できないような場合には利用できません。
申立手数料は請求金額によって決まります。
大体、訴訟費用の半額の費用がかかります。
手数料は収入印紙にして、申立書に貼ります。
その他に送達手数料として債務者1人につき1,040円分と80円の切手代が必要です。
これらの申立手数料は、相手方から異議が出て訴訟に移ったとしても、訴訟費用にそのままあてられます。
支払督促の申立手続とは・・・
支払督促の申立が受理されれば、裁判所は訴訟の場合と違って法廷を開かないで発令します。
書面の審査も、所定額の収入印紙が貼られているかとか郵券が添付されているかといった形式的なチェックや請求の趣旨と原因が関連性のあるものになっているか、といった整合性を確認するだけです。
裁判所へ行く必要があるのは、督促の申立とその後の仮執行の申立のときだけです。
申立がなされると、正本は申立人と相手方に送達されます。
相手方は送達を受けた後2週間以内であれば、異議申立てができます。
異議申立書は、とくに不服の理由を記載しなくてもよい形式になっていて印紙代も不用です。
ただし切手代はかかります。
送達後2週間しても相手方から異議申立てがなければ、債権者は裁判所に仮執行宣言の申立をして、強制執行に移れます。
仮執行宣言とは、支払督促が確定していなくても、仮に強制執行してもよいのです。
仮執行宣言の申立は、その申立が可能になった日から30日以内にしておかないと、支払督促自体が失効してしまいます。
その後、仮執行宣言付の支払督促が相手方に送達されますが、これを受け取ってからやはり2週間以内に異議申立てがなければ、支払督促は確定し、確定判決と同じ効力を持つことになります。
仮執行宣言付支払督促に対して相手方が異議申立てをしたとしても、すぐに執行手続がとまるわけではありません。
この異議申立ては、仮執行宣言付支払督促が法的に確定してしまうのを防ぐだけの効果しかありません。
実際に執行を止めるには、相手方が新たな訴訟を起こすしかないのです。