通常訴訟手続の流れ・・・

通常訴訟手続の流れ・・・

訴訟は裁判所への訴状の提出から始まり、訴状には何を請求するのかという請求の趣旨と、どういう根拠に基づいて請求するのかという請求の原因を記載します。

これに請求の原因に記載した事実を証明する証拠も添えて提起します。

訴訟手続は、弁論、準備手続、証拠調べ、和解で行われます。

裁判は公開して行われるのが原則ですが、準備手続や和解手続は非公開で行われます。

訴訟を提起すると、訴状の記載の間違いがあれば訂正を求められ、主張内容が不完全だと補正命令が出されて主張を補正します。

第1回期日は、訴訟提起してから約1ヵ月後になり、被告が欠席して答弁書も出てこなければ、その日のうちに裁判は終結し、1週間程度で訴状で請求したとおりの判決がでます。

被告は欠席したけれども答弁書が提出されている場合には、次回期日が決められます。

被告が出廷して請求を争ってくると、訴訟が進行し、それぞれの言い分や反論を準備書面にまとめて裁判所に提出し、補充する証拠も提出します。

ある程度準備手続が進んで争点が明確になると、裁判所が和解の勧告をしてくることがあり、また、証拠調べが終わった後でも裁判所から勧告される場合があります。

この場合には、裁判所は判決ならばどちらが勝訴するのかを決めた上で、裁判所が和解案を提示してきます。

和解が成立しないと判決の言い渡しになり、仮執行宣言付判決であれば、そのままで債務名義になります。

そうでない判決の場合には、被告に判決正本が送達されてから2週間以内に上訴がされなければ確定しますので、その確定判決が債務名義になります。

上訴されると控訴審や上告審で決着がつくまで債務名義をとることができません。

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小額訴訟と手形小切手訴訟の流れ・・・

訴額が60万円以下の請求では、簡易裁判所の小額訴訟を利用でき、小額訴訟による審理を求めることを明記した訴状で訴訟提起をします。

3~4週間程度で第1回期日となりますが、このときにすべての証拠を提出し、その日のうちに証人尋問も行われます。

和解かもしくは判決になりますが、判決の場合には、裁判所が被告の資力を考慮して3年以内の支払期限の猶予や分割払いを宣告することもあります。

ただし、小額訴訟は被告が小額訴訟手続に同意した場合でないと、通常訴訟に移行してしまいます。

これは、判決に不服があっても上訴できないためです。

また、取引先から支払手形に基づいて請求する場合には、手形小切手訴訟を利用でき、不渡り処分になった手形について、その手形債権の債務名義を取得するのに便利です。

訴訟では証拠提出できるのは原則として書証だけですから、手形小切手とその振り出しの原因となっている契約書などだけが証拠となります。

判決が出るまでの期間は短く、判決には仮執行宣言をつけてくれます。

手形訴訟では、判決に不服があっても上訴できず、異議申立てをされると通常訴訟に移行します。

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抵当権の担保権実行の競売申立・・・

抵当権者が不動産を競売にかける場合などにも強制執行といいますが、厳密には債務名義の基づく執行を強制執行といい、担保権者による競売などは担保権実行といいます。

担保不動産競売の申立は不動産の所在地の管轄裁判所に、担保不動産競売申立書を提出して行います。

申立書には、抵当権に基づいて競売申立をする旨の記載をし、主要な内容は別紙目録として別紙にして提出します。

<別紙目録>

目録 記載内容 補足
当事者目録 申立人(債権者)
債務者
(物上保証人)
転居などで登記簿上の住所と債務者の住所が一致しないときは、債務者(所有者)の住民票を添付するなどして住所のつながりを証明する必要があります。
担保権・被担保権・請求債権目録 抵当権
抵当権によって担保されている被担保債権
請求する債権額
抵当権の表示は、
①(設定日)の抵当権
②登記(受付法務局)受付日・受付番号
を記載する。
物件目録 抵当権が設定されている不動産 抵当権が設定された不動産登記簿の記載どおりに記載し、共有物件については持分を明記します。

区分所有物件を複数持っている所有者の一部のみに抵当権を設定している場合には、敷地持分の特定のために「**(抵当権設定者)の持分**分の**のうち甲区**番で登記した**分の**」と、どの持分が対象となるのかの特定が必要です。

なお、ほどんどの裁判所では不動産執行事件処理をコンピュータ化しているので、目録や利害関係人情報をフロッピーディスクに納めたデータで提出を求められます。

<申立書に添付する書類>

添付書類 補足
法定書面 競売申立では「担保権の存在」「被担保権の存在」「被担保債権の弁済期の到来」が要件となっています。

これらを示す書面の添付が必要です。

競売申立の時点で被担保債権の存在を証明する必要はなく、債務者が履行遅滞に陥っていることを証明する必要はありません。

これらは債務者・物上保証人が異議を出すことになります。

自分が抵当権者であることを証明する法定文書としては、通常は登記簿謄本を提出すれば足ります。

担保提供不動産が債務者から第三者に譲渡されている場合にも、抵当権実行通知をする必要はありません。

登記簿謄本 区分所有建物の場合には、1棟の建物の登記簿の競売対象区分所有建物のすべてが記載された登記簿抄本を、建物のみの競売の場合でも底地である土地の登記簿謄本を提出します。
所有証明書 債務者が所有している証明書が必要になりますが、通常は登記簿謄本で兼ねます。
公課証明書 競売対象不動産の税額の記載されている公課証明書を提出します。

固定資産税・都市計画税評価証明書は不可です。

資格証明書 法人の場合には商業登記簿謄本を添付します。
その他 現況調査などの便宜のために
公図、建物所在図の写し
債務者(所有者)の住所証明書(住民票、商業登記簿)
現地案内図
も添付します。

更地に抵当権を設定した後に建物が建築・登記された場合には、土地と建物を一括して競売申立できます。

一括競売を希望する場合には、抵当権が設定されていない建物の登記簿謄本も申立時に提出します。

申立書には「なお、物件目録**記載の建物には別紙担保目録記載の抵当権は設定されていないが、その敷地である物件目録**記載の土地は抵当権設定時に更地であり同建物は同土地を占有するのにつき抵当権者に対抗できる権限を有していない所有者によって建築されたものであるので、民法389条に基づき一括競売を求める。」と記載します。

(抵当地の上の建物の競売)
民法第389条 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
2 前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。

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