手形振出の理由・・・
手形には、商取引で使用される手形と、銀行からの借入で使用される手形とがあります。
商取引の手形は、商品の代金などを何ヵ月後に支払うという約束をするときに振出されます。
手形用紙には金額の制限がないため、高額の支払に便利です。
他の人が振出した手形を持っていれば、その手形を譲渡して支払に代えることができます。
受け取る人は銀行に取立を依頼することで集金する労力も省けます。
また、銀行などの金融機関から借入をする場合に、金融機関を受取人として手形が振り出されることがあります。
これを手形貸付といいます。
受領した手形は裏書によって現金化することができ、借用書による貸付よりも印紙税が安いという利点があります。
もし、融資した金額の支払がない場合には、手形の不渡りを理由に銀行取引停止処分をとることができ、手形訴訟に持ち込んで強制執行をすることができます。
手形の書換などで満期日を延期することもできます。
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手形の振出人の責任・・・
手形の振出人とは、統一手形用紙に必要事項を記入し、署名押印をして受取人にこれを交付する人です。
統一手形用紙には、支払約束文句などの一定事項がすでに記載され、振出人欄や振出地住所欄など設けられています。
振出人が手形を振り出しますと、自動的に満期時に手形金を支払うことを約束したことになります。
しかし、統一手形用紙の支払約束文句などを故意に消していたり、振出人が支払の義務を負わないということを統一手形用紙に書き込むと、その手形は無効となります。
振出人の手形に対する支払義務は満期日から3年を経過すれば、時効消滅してしまいます。
手形保持者はその手形の満期日から3年以内に支払い請求しておかないと、手形金を受け取ることができなくなります。
(時効期間)
手形法第70条 引受人に対する為替手形上の請求権は、満期の日から3年間行使しなければ消滅時効が完成する。
二 所持人の裏書人及び振出人に対する請求権は、適法な期間内に作成させた拒絶証書の日付から無費用償還の文言が記載された場合には、満期の日から1年間行使しなければ消滅時効が完成する。
三 裏書人の他の裏書人及び振出人に対する請求権は、その裏書人が手形を受け戻した日又はその者が提訴された日から6月間行使しなければ消滅時効が完成する。
(時効の完成猶予又は更新)
手形法第71条 時効の完成猶予又は更新は、その中断事由が発生した者に対してのみ効力が発生する。
振出人が満期に支払をすませて手形自体を取り戻した場合は、振出人としての責任を果たし、手形自体の効力はなくなります。
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手形の無益的記載事項と有益的記載事項・・・
統一手形用紙には、必ず記載しなければならない事項以外に、記載してもその効力がない無益的記載事項というものがあります。
例えば、「支払にために」などと記載していても、それは手形金の支払そのものとは何ら関係ないことなので、手形自体の効力には影響を及ぼしません。
満期日ある確定日払手形や振出日から手形に記載されている期間を経た後に満期となる日付後定期払手形などは、あらかじめ利息の計算ができるので、これらの手形用紙に「手形金額に年*%の利息をつけて支払う」と記載しても、効力はなく無益的記載事項となります。
また、手形上に記載しなくても問題はないものの、記載しておくと効力が認められる事項のことを有益的記載事項といいます。
例えば、満期日のある確定日払手形や日付後定期払手形に利息文句を書いても無益的記載事項なのですが、一覧払手形や一覧後定期払手形に利息文句を書くと、その効力が認められ、有益的記載事項になります。
確定日払手形や日付後定期払手形は満期日が記載されているため利息の計算ができるのですが、一覧払手形や一覧後定期払手形では、振出日には満期までの期間が定まっていないため、利息の計算ができないからです。
手形が譲渡されるのを防ぐために書き入れる「裏書禁止」「指図禁止」といった文言も有益的記載事項です。
統一手形用紙に記載してある「あなたはまたはあなたの指図人へこの約束手形と引換えにお支払いたします」という文言の「またはあなたの指図人」という部分を抹消し、その上で、用紙の表面に「裏書禁止」「指図禁止」などの文言を書き入れて振出せば、裏書の方法で手形が他の人に譲渡されることはなくなります。
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