消滅時効の後に相殺できるか・・・

消滅時効の後に相殺できるか・・・

民法508条には「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は相殺をすることができる」とされています。

AがBに債権を持っていて、BもAに債権を持っている場合に、両方の債権とも弁済期が来ているなど、相殺をするための法律上の条件を満たしていれば(相殺適状)、AからでもBからでも一方的な意思表示で両債権を相殺することができます。

このとき、Aの債権が時効にかかって消えていたらどうでしょうか?

Aは消えているはずの債権を使って、Bの債権と相殺することができるのです。

相殺は、正当な債権と反対債権とが存在したわけですから、時効完成前に相殺敵状にあったときはこの相殺を優先し、あとからでも相殺を主張できるとしたのです。

時効には援用が必要ですが、相殺にもその主張が必要とされています。

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銀行預金は消費寄託契約・・・

銀行預金は、消費寄託契約であるといいますが、消費寄託契約とはどのような契約なのでしょうか?

物を売る契約は売買契約、物を貸す契約は賃貸借契約、物をただで貸す契約を使用貸借契約といいます。

そして、お金を貸す契約を消費貸借契約といいます。

お金は代替性があるので、これを借りた人はそのお金を消費することができます。

そして、同額の別のお金を返せばよいことになります。

銀行はお金を預かりますが、銀行はそのお金を消費することができます。

そして、預金者である寄託者には、同額の別のお金を返せばよいわけです。

これを消費寄託契約といいます。

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取締役報酬請求権の時効・・・

サラリーマンの給料は、3年間請求しないと時効にかかりますが、会社の取締役の報酬請求権は何年で消滅時効にかかるのでしょうか?

ただし、退職金請求権は5年となっています。

会社の取締役の場合ですが、取締役というのは、世間では役員と呼ぶように、会社側の人であり、使用者側の人であって労働者ではないのです。

ですので、取締役が毎月手に入れるお金は、給料ではなく、役員報酬といわれるものなのです。

この報酬の法的性質は、委任事務処理の報酬ということになります。

取締役は会社から会社の経営事務を委任されており、その委任事務を処理するのが取締役の業務内容なのです。

これは商事委任事務ですから、その報酬についても商事債権となります。

民法改正(2020.4.1)によって商法による消滅時効の規定「商取引から生じた債権の消滅時効期間を原則5年とする」が廃止され、民法の規定に統一されました。

民法の規定では、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使することができる時から10年」のいずれか早い方となります。

ですので、5年ということになります。

取締役といっても、取締役営業部長の場合はどうでしょうか?

営業部長というのは雇われている人ですから、労働の対価として給料を受けています。

この給料請求権について、労働基準法115条により3年間で消滅時効にかかります。

ですが、取締役営業部長の取締役のほうについては、株主総会でその報酬額を定める事が原則となっています。

取締役営業部長という人は、使用者側と従業員側の2つの顔を持っているのです。

ですので、それぞれについて、時効期間が違ってくるのです。

また、退職金の請求権の消滅時効は5年です。

退職金請求権の時効については、取締役も営業部長も同じ5年となっています。

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拾得物の取得時効とは・・・

ゴミや竹やぶの中で、3億円を見つけた場合、3億円は誰のものになるのでしょうか?

民法240条には「遺失物は遺失物法の定めるところに従い公告をした後3ヶ月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する」と定められています。

遺失物法4条1項によれば、遺失物を拾得した者を拾得者といい、拾得者は速やかに、拾得した物を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない、と規定しています。

この拾得者というのは、必ずしも現実に拾った人だけに限らないのです。

遺失物法4条2項では、建築物や車両、船舶などの施設を管理する者は、施設内で拾得した拾得者から拾得物の交付を受ける事になっており、交付を受けた施設占有者は遺失者に返還し、又は警察署長に提出する事になっています。

竹やぶの中で拾った人は、これに該当しませんので、拾った人が拾得者になります。

産業廃棄物業者の会社の構内の廃棄金庫の中から3億円を拾った時は、その拾った人が管守者(守衛など)であったときは、この人が拾得者ではなく、占有者である会社が拾得者になると考えられます。

問題は、この拾得物を犯罪者が置き去ったものと認められる物であったときです。

犯罪組成物と確定すれば、通常は没収の対象となります。

その確定ができず、警察が捜査をしているときはどうでしょうか?

その場合、警察署長は提出を受けた拾得物が、公告をする前に刑事訴訟法の規定により押収を受けたときは、捜査が終了して還付を受けるまでは公告をしないことができます。

公告の日から3ヶ月を経過すると、拾得者は拾得物の所有権を取得しますが、公告が遅れれば遅くなります。

そして、公訴時効は各犯罪によって違っており、もしこの3億円が強盗の産物とすると公訴時効は10年、横領の産物とすると5年となっています。

しかし、これは犯罪行為のときですから、竹やぶに捨てられていた3億円が、いつ捨てられたのかの確定が重要になります。

3億円の真の所有者が出てくれば、拾得者はその5%から20%の報労金がもらえます。

拾得者と占有者とがあるときは、それを2分の1ずつに分けることになります。

また、拾ったお金の所有者が現れ「あのお金は袋に入れて竹やぶに置いておいた」という場合には、遺失物法2条では「誤って占有した他人の物」や「他人の置き去りにした物」は準遺失物として扱われ、民法240条が準用され、報労金を請求できる事になっています。

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