手形が不渡りになった場合・・・

手形が不渡りになった場合・・・

手形が不渡りになってしまった場合、銀行に不渡りになった理由を確かめます。

不渡り事由が第何号かによって、その後の対策が違ってきます。

<第0号不渡りの場合>

第0号不渡りとは、形式不備、裏書不備、呈示期間経過などです。

形式不備や裏書不備ならば、すぐに完全な形にして、もう一度取立委任します。

呈示期間内に再取立すれば、支払ってもらえます。

ただし、呈示期間経過後の場合は、振出人に直接呈示して支払ってもらう必要があります。

<第1号不渡りの場合>

第1号不渡りとは、資金不足や取引なしです。

この場合は、振出人が倒産する可能性があります。

裏書人がいる場合には、裏書人に不渡りになった事実を通知するとともに、全ての債務者の資産を調べます。

支払い能力のある者に遡求します。

誰に遡求しても支払ってもらえない場合は、裁判所に資産のある者に対する財産保全の仮差押を申請します。

正式の判決が出る前に、債務者がこの手形の支払いにあてるべき財産を処分してしまうのを防ぐための処置で、裁判所は短時間で仮差押を出してくれます。

この場合は保証金として手形金額の約10%を供託所に供託しなければなりません。

そして、手形訴訟に持ち込みます。

<第2号不渡りの場合>

第2号不渡りとは、契約不履行、詐欺、紛失、偽造などをいいます。

この場合は、まず振出人に不渡りの理由を問い合わせるとともに、異議申立提供金が積まれているかどうかを支払銀行に問い合わせます。

もし積まれていれば、異議申立て預託金を仮差押する手続をとります。

そのうえで、振出人と話し合うか、話し合いがまとまらなければ手形訴訟に持ち込むことになります。

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手形の振出人が倒産・・・

所持している手形の振出人が倒産してしまった場合、所持人は、支払期日前でも裏書人に遡求することができます。

遡求するためには、期日前でも振出人に支払のための呈示をし、拒絶証書を作成した上で裏書人に請求します。

手形の表面には、拒絶証書不要の記載がないので、振出人が支払を拒絶したことを公証人に証明してもらう必要があります。

振出人が取引停止処分を受けている場合は、支払期日前に支払銀行に手形を呈示して、「期日前並びに取引停止処分による解約後」という付箋をつけてもらうことで、不渡りの事実を裏書人に証明します。

手形の振出人が会社更生法の適用を受けていたり、内整理に入っている場合には、次にように債権回収していきます。

会社更生法とは、株式会社だけに適用される法律で、裁判所が介入して会社再建を目指す制度です。

手形の振出人の会社が会社更生法の適用を受けている場合は、裁判所から債権の届出書が送られてくるので、これに必要事項を記入して、手形の写しを添付し、届出日までに着くように裁判所に書留郵便で送り返します。

会社更生法の場合は、財産保全処分命令によって財産の処分が禁じられます。

債権総額が10万円以下なら保全処分命令に反しないので、手形金額が10万円以下で、それしか債権がない場合には支払ってもらえる可能性があります。

手形は、更生会社に対する債権のうち担保の付かない更生債権に分類されるので、例えば元利合計の80%を切り捨てられて、残り20%を3年から5年の分割払いで、というように支払を受けます。

しかし、次の3つの条件がそろった場合には、手形金額の全額を支払ってもらえます。

①手形の所持人が中小企業であること

②所持人にとって更生会社が主要取引先であること

③手形金を支払ってもらえないと所持人が事業を継続できなくなること

この場合には、更生会社の管財人に依頼して、裁判所に支払許可の申請を出してもらいます。

なお、裏書によって手形が流通し、それによって取得した者などは裁判所もわかりませんから、債権の届出書が送られてきません。

しかし、届出をしないと配当は受けられません。

届出書はどこの裁判所にもありますから、手形の所持人は、裁判所に直接取りに行って届け出なければなりません。

内整理は、裁判所が介入しない倒産処理の方法で、会社再建にも会社の清算にも利用されます。

内整理は、私的整理とか任意整理とも言われますが、決められた法的手続があるわけではありません。

手形の所持人は、債権者集会の通知を受け取ったら必ず出席して、債権者についての情報を集めます。

会社に資産がなくても、会社経営者個人に責任を追及する可能性があるからです。

債権者集会で決定された配当案に賛成ならば、債務者と和解契約を結んで議決された配当を受けることになりますが、議決には法的な拘束力がありませんから、その議決に反対、あるいは債権者集会に欠席したならば、個別に手形金の支払を請求することもできます。

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不渡り手形の遡求権とは・・・

手形が不渡りになった場合、所持人は、振出人・裏書人・保証人に対して、手形金額、その他の費用を請求できます。

この権利を遡求権といいます。

裏書人に遡求する方法としては、次になります。

①内容証明郵便の通知

自分の直前の裏書人に支払呈示の日から4日以内に、後で証拠が残るように内容証明郵便で通知します。

②支払のための適法な呈示をする

振出日白地や受取人白地のままで取り立てに回しても、支払ってもらえますが、この手形不渡りになった場合には、適法な呈示がなかったとみなされ、裏書人に遡求できません。

手形の所持人には白地部分の補充権があるので、必ずこれを埋めてから呈示するようにします。

③拒絶証書を支払呈示期間内に作成する

統一手形用紙の裏書欄には、「拒絶証書不要」と印刷されていますので、一般にはこの作成は免除されています。

これが抹消されている場合には、公証人に作成してもらいます。

その費用は裏書人に請求できます。

④遡求権が消滅時効にかかっていないこと

遡求権は支払期日から1年で時効消滅してしまいますので、1年以内に遡求権を行使します。

複数の裏書人がいる場合には、その全員に同時に遡求することもできますし、そのうち1人に遡求することもできます。

また、遡求の順序は、裏書の順序に従わなくてもかまいません。

遡求するときは、不渡り手形を相手に呈示し、それと交換に手形金の支払を請求します。

手形金額のほかに、支払期日後の経過日数について年利の利息と、遡求するためにかかった諸費用も請求できます。

所持人の請求に応じた裏書人は、再遡求といって、自分より前の裏書人に遡求権を行使できます。

遡求されても支払わない裏書人が不渡り処分を受けることはありません。

こんな場合、所持人は手形訴訟を起こすことになります。

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