船舶遭難者遺言の確認・・・
船舶遭難者遺言は、口頭遺言が認められている場合ですから、家庭裁判所の確認を得なければ、その効力を生じません。
(船舶遭難者の遺言)
民法第979条 船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人2人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができる。
2 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。
3 前2項の規定に従ってした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の1人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
4 第976条第5項の規定は、前項の場合について準用する。
船舶遭難者遺言の確認申立は甲類審判事項です。
確認の申立期間は、船舶遭難者遺言の場合、証人の署名押印後「遅滞なく」とされています。
船舶遭難者遺言は、遺言者が普通方式の遺言をすることができるようになった時から、6ヶ月生存するときは、その効力がありません。
(特別の方式による遺言の効力)
民法第983条 第976条から前条までの規定によりした遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6箇月間生存するときは、その効力を生じない。
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伝染病隔離者遺言の要件・・・
伝染病隔離者遺言は、一般隔絶地遺言ともいい、この遺言は、伝染病のために行政処分によって、交通を断たれた場所に在る者について認められる方式です。
(伝染病隔離者の遺言)
民法第977条 伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官1人及び証人1人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
(遺言関係者の署名及び押印)
民法第980条 第977条及び第978条の場合には、遺言者、筆者、立会人及び証人は、各自遺言書に署名し、印を押さなければならない。
伝染病隔離者遺言の作成要件は次の4つです。
①伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者であること。
民法977条は、伝染病にための行政処分の場合だけを定めていますが、伝染病隔離者遺言はこれに限らず、一般社会との自由な交通が事実上又は法律上遮断されている場所にある場合にはこれに限らず、一般社会との自由な交通が事実上又は法律上遮断されている場所にある場合にも認めるべきであるとされています。
例えば、裁判によって刑務所に在る者、暴動・洪水などのように事実上交通が遮断された場所に在る者などの場合です。
交通が遮断された場所は、自己の家屋であると、病院であるとを問わないとされます。
その場所にいる者は、伝染病の患者でも、健康な者であっても、伝染病隔離者遺言をすることができます。
②警察官1人及び証人1人以上の立会いがあること。
警察官は、交通が遮断されている場所にも出入りすることが比較的自由であるため立会人とされています。
また、警察官は、遺言の立会いを求められた場合には、正当な理由なくしてそれを拒絶できません。
③遺言者が遺言書を作成すること。
遺言書は、遺言者の自書である必要はなく、他人が代筆してもよいとされます。
口頭遺言は許されないとされます。
④遺言者、筆者、警察官及び証人が署名押印すること。
伝染病隔離者遺言は、家庭裁判所の確認が行われないため、関係者である遺言者、遺言書を他人が筆記した場合にはその筆者、立ち会った警察官及び証人は、各自遺言書に署名押印しなければなりません。
ただし、署名押印することができない者があるときは、立ち会った警察官又は証人がその事由を付記して、これに代えることができます。
(署名又は押印が不能の場合)
民法第981条 第977条から第979条までの場合において、署名又は印を押すことのできない者があるときは、立会人又は証人は、その事由を付記しなければならない。
署名できない事由は、無筆、病気、負傷、印を持参していないなどなんでもよいのですが、付記を欠いた場合、遺言そのものが無効になるとされています。
日付の記載は要件ではありません。
伝染病隔離者遺言は、遺言者が普通方式の遺言をすることができるようになった時から6ヶ月間生存するときは、その効力がありません。
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船舶隔絶地遺言の要件 ・・・
船舶隔絶地遺言は、在船者遺言ともいい、この遺言は、船舶中に在って一般の人と連絡がとれない場合に認められる方式です。
(在船者の遺言)
民法第978条 船舶中に在る者は、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
船舶隔絶地遺言の作成要件は、次の4つです。
①船舶中にあるものであること。
船舶中である者であれば、乗務員のほか旅客でも、一時的に便乗した者でもこの方程式の遺言ができます。
②船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いがあること。
事務員とは、船員法に定められている船長以外の職員、航海士、機関長、機関士、通信長、通信士及び命令の定めるその他の海員です。
命令の定めるその他の海員とは、運航士、事務長、事務員、医師、その他航海士、機関士又は通信士と同等の待遇を受ける者です。
③遺言者が遺言書を作成すること。
遺言書は、遺言者の自書である必要はなく、他人が代筆してもよいとされます。
口頭遺言は許されないとされます。
④遺言者、筆者、立会人及び証人が署名押印すること。
船舶隔絶地遺言は、家庭裁判所による確認が行われないため関係者である遺言者、遺言書を他人が代筆した場合の筆者、立会人としての船長又は事務員及び証人は、各自遺言書に署名押印しなければなりません。
ただし、署名押印することができない者があるときは、立ち会った船長若しくは事務員又は証人がその事由を付記して、これに代えることができます。
(署名又は押印が不能の場合)
民法第981条 第977条から第979条までの場合において、署名又は印を押すことのできない者があるときは、立会人又は証人は、その事由を付記しなければならない。
署名できない者も証人となることができますが、付記を欠いた場合、遺言そのものが無効になるとされています。
日付の記載は要件ではありません。
船舶隔絶地遺言は、遺言者が普通方式の遺言をすることができるようになった時から6ヶ月間生存するときは、その効力がありません。
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在外日本人の遺言・・・
外国にある日本人が遺言する場合は、「遺言の成立及び効力は、その成立当時における遺言者の本国法による」の原則に従い、遺言の方式の準拠法に関する法律2条に掲げる
①行為地法
②遺言者の遺言の成立又は死亡当時の本国法
③遺言者の遺言の成立又は死亡当時の住所地法
④遺言者の遺言の成立又は死亡当時の常居所地法
⑤不動産に関する遺言についてはその不動産の所在地法のうち、前記②を除いた外国法に認める方式に基づいて有効な遺言をすることができます。
公海上の船舶でなされた遺言は、船舶所属国の法律をもって行為地法とするべきものと解されています。
(準拠法)
遺言の方式の準拠法に関する法律第二条 遺言は、その方式が次に掲げる法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とする。
一 行為地法
二 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法
三 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法
四 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法
五 不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法
在外日本人が日本法に従って遺言をする場合に、公証人が関与する公正証書遺言及び秘密証書遺言を作成することができないので、民法は、日本領事の駐在する地にある日本人については、その領事に公証人の職務を行なわせる領事方式によって公正証書遺言又は秘密証書遺言ができるとされています。
この場合は、領事に公証人の職務を行なわせるだけで、その他の方式については、民法に規定に従います。
在外で遺言するときに遺言者が印鑑証明書を所持していない場合は、旅券又は運転免許証を提示させて本人であることを確認できます。
証人は、適格者ならば外国人でもよいとされます。
ただし、証人は、遺言が真実に成立したことを証明する人であるから、証書の作成に当たって遺言者の申立を全て理解できることが必要です。
証人が印鑑を所持していない場合は、署名及び拇印でよいとされます。
遺言書の末尾に公証の上、署名押印する者は、領事官です。
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