支払督促の異議申立とは・・・
支払督促の申立が受理されますと、裁判所は支払督促を出してくれます。
支払督促の正本は債務者と債権者に送達されます。
支払督促は、タイトルの下に、判決の主文に相当する「債務者は、請求の趣旨記載の金額を債権者に支払え」という文句が記載されてます。
次に「債務者が支払督促送達の日から2週間以内に督促異議を申し立てないときは、債権者の申立によって仮執行の宣言をする」という文言が記載されています。
支払督促が出されてから、債権者は債務者の督促異議申立期間の2週間は待つ必要があります。
債務者がその期間に、督促異議申立をしなければ、仮執行の申立をすることができます。
仮執行宣言とは、すでに出されている支払督促に、ただちに強制執行をできる効力を付与する旨の宣言をすることです。
仮執行宣言が付与される事によって、支払督促は裁判における判決と同様の効力を持ちます。
しかし、支払督促が出されて2週間以内に、債務者から督促異議申立がなされると、その支払督促は、異議の範囲内で効力を失います。
督促異議申立を受け付けた裁判所は、その申立が権利のある者からの申立かどうか、督促異議申立の期間内の申立であるかどうかを審査し、不適法と判断した場合には却下します。
適法な督促異議申立がなされると、その支払督促申立の時に遡って、通常の訴訟が起こされたものとみなされ、請求金額が140万円以内であれば同じ簡易裁判所へ、140万円を超えるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所へ移行します。
適法な督促異議申立を受けた簡易裁判所は、支払督促を申し立てた債権者に対して、補正命令によって訴訟手続の手数料の追加納付をするよう命じます。
支払督促申立の場合の手数料は、訴訟の場合の半額ですから、訴訟を進めるために残りの半額を納めさせる事が必要だからです。
訴訟費用の追納が終われば、後は通常の訴訟手続になります。
ちなみに督促命令が出され、2週間の間に債務者から異議が出されなければ、仮執行宣言の申立ができます。
この仮執行宣言とは、すでに出された支払督促に、「執行力」を付与する裁判です。
「執行してもよい」ということを裁判所に認めてもらうわけです。
これを執行裁判所や執行官に持ち込み、強制執行の手続を進めてもらうわけです。
しかしあくまでも「仮」であり、暫定的なものですから、これをひっくり返す事も可能ですし、強制執行を止める事も可能です。
民事訴訟法386条(支払督促の発布等)
一 支払督促は、債務者を審尋しないで発する。
二 債務者は、支払督促に対し、これを発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所に督促異議の申立をすることができる。
民事訴訟法387条(支払督促の記載事項)
支払督促には、次に掲げる事項を記載し、かつ、債務者が支払督促の送達を受けた日から2週間以内に督促異議の申立をしないときは債権者の申立により仮執行の宣言をする旨を付記しなければならない。
1、第382条の給付を命ずる旨
2、請求の趣旨及び原因
3、当事者及び法定代理人
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仮執行宣言の申立とは・・・
支払督促の申立をし、裁判所から支払督促が債務者に対して出されて、債務者が債務の返済もせず、また督促異議申立もしない場合には、仮執行宣言の申立をすることになります。
仮執行宣言というのは、すでに出されている支払督促に対して、ただちに強制執行をしてもよいと裁判所が言ってくれているわけです。
支払督促に執行力が付与されるわけです。
支払督促に仮執行宣言が付与されると、債権者はただちに強制執行の申立をすることができるようになります。
判決や調停調書などの場合には、執行文の付与を受けなければ、強制執行の申立はできないのですが、仮執行宣言付支払督促だけは、執行文の付与なしで強制執行の申立ができることになっています。
支払督促が出されたのに、この仮執行宣言の申立をしないで30日が経過してしまうと、裁判所から発せられた支払督促の効力はなくなってしまいます。
また、支払督促が出されて2週間を過ぎた後で、仮執行宣言の申立がされないでいる間に、債務者が督促異議申立をすると、この申立は有効となり、支払督促の効力はなくなってしまいます。
裁判所は、仮執行宣言付の支払督促の場合にも、債務者に送達します。
債務者は、送達を受けた日から2週間以内に督促異議申立ができることになっていますが、この場合の申立には強制執行を停止させる効力はありません。
強制執行を停止させるためには、別に強制執行の停止決定を求める裁判を起こさないければなりません。
仮執行宣言の申立に対する裁判も支払督促の裁判と同様、当事者を呼んで言い分を聞いたりしません。
裁判所は、仮執行宣言の申立があると、支払督促の送達報告書を調査し、送達日から2週間を経過しているかどうか、2週間の間に債務者から異議の申立がなかったかどうかを確認して、その上で直ちに仮執行宣言を付する裁判をします。
ただし、2週間を経過した後であっても、仮執行宣言が出される前であれば、その間に支払督促の異議の申立があったときには、支払督促は失効し、仮執行宣言の申立は却下されます。
民事訴訟法391条(仮執行の宣言)
一 債務者が支払督促の送達を受けた日から2週間以内に督促異議の申立をしないときは、裁判所書記官は、債権者の申立により、支払督促に手続の費用額を付記して仮執行の宣言をしなければならない。
ただし、その宣言前に督促異議の申立があったときは、この限りではない。
二 仮執行の宣言は、支払督促に記載し、これを当事者に送達しなければならない。
ただし、債権者の同意があるときは、当該債権者に対しては、当該記載をした支払督促を送付する事をもって、送達に代えることができる。
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仮執行宣言の異議申立てとは・・・
裁判所は、債権者の申立だけを信じて、証人調べや証拠調べもしないで、支払督促を出してくれます。
それについて、法律は債務者の不利にならないように2つの保証を与えています。
①支払督促は必ず債務者に送達される事
②支払督促に不服があれば督促異議を申し立てる事ができ、この申立があれば、支払督促は効力を失い、あとは訴訟によって解決が図られる事
支払督促に対する督促異議は、請求の原因となっている事実関係に誤認がある、あるいは請求された金額に誤りがあるなどの場合だけでなく、分割払いにしてほしい、支払について話し合いをしたいなどという場合にも、申立は行われます。
また、支払督促が送達される際に、督促異議申立書と注意書が一緒に送達されますので、債務者にとっては、申立が簡単にできるようになっています。
支払督促の申立が送達されてから、2週間を経過すると、申立人は仮執行宣言の申立ができ、仮執行宣言が出されると、債務者の財産について、強制執行をすることができるようになります。
債務者は仮執行宣言付支払督促が債務者に送達される場合にも、督促異議申立をできることになっています。
この場合にも、督促異議申立書が同封されます。
しかし、督促異議申立をしたからといって、仮執行宣言付支払督促に基づいて開始した強制執行を停止できるわけではありません。
この場合の効果は、仮執行宣言付支払督促が確定するのを停止する効力を持つだけになります。
強制執行を停止させるためには、別に強制執行の停止または取消しの決定を求める裁判を起こさなければなりません。
ちなみに仮執行宣言付支払督促で、債務者の財産に対して強制執行をするには、執行機関である執行裁判所や執行官に、債務名義、執行文、送達証明書を持って行って依頼します。
債務名義とは、債権者がどうような権利に基づいて、どのような範囲で執行しようとするのか、その根拠となる公の文書です。
仮執行宣言付支払督促も債務名義となります。
他の債務名義の場合は、執行文が必要ですが、仮執行宣言付支払督促の場合は、例外として不要です。
民事訴訟法393条(仮執行宣言後の督促異議)
仮執行の宣言を付した支払督促の送達を受けた日から2週間の不変期間を経過したときは、債務者は、その支払督促に対し、督促異議の申立をすることができない。
民事訴訟法394条(督促異議の却下)
一 簡易裁判所は、督促異議を不適法であると認めるときは、督促異議に係わる請求が地方裁判所の管轄に属する場合においても、決定で、その督促異議を却下しなければならない。
二 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
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