セックス拒否の離婚の慰謝料・・・
妻と夫は、共に再婚同士で結婚したが、結婚後5ヶ月間別居するまで、妻はセックスを拒否しました。
新婚旅行中は、生理だからと言って、帰ってしばらくは疲れているからと言って、一度もセックスに応じませんでした。
夫は、妻の親戚に相談したところ、初婚のときもセックスを嫌がるのが原因で、100万円を支払って離婚したとのこと、産婦人科で診てもらうと身体に異常はないのですが、年齢の割りに精神面で幼児的なところがあるとのことだそうです。
夫は、セックス拒否症を承知の上で、それを内密に結婚したことは、許し難く、離婚と慰謝料500万円を請求をする訴訟を起こしました。
正常なセックスが夫婦関係にとって重要な要素であることは、最高裁の判例でも、性交渉が婚姻を継続しがたい重大な理由のなることを認めています。
(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
性の不一致による裁判例の多くは、妻側から夫側を訴えるものが多く、夫のインポテンツ、ノーセックス、異常性行動などを理由とします。
判例として、挙式上、事実上の結婚生活を始めたものの、男性が性交渉をもてなかったため、女性側が慰謝料900万円を求めた事件で、裁判所は、男性は性的不能を隠したとまでは言えないが、気づいた後も適切な対応を取らなかったとして、男性に500万円の賠償を命じています。
男性から女性の性交渉拒否に対して慰謝料を請求する事例は少ないのですが、当然、夫婦の問題としては平等ですから、夫は勝訴し、裁判所は妻へ慰謝料150万円の支払を命じました。
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ダブル不倫の有責配偶者の離婚請求・・・
結婚後も勤めを続けた妻は、元々不倫関係にあった上司と結婚後も関係を続けていました。
それを知った夫は怒ったが、妻は上司との関係を清算し、会社も辞めると謝ったので、夫は全てを許しました。
その後、妻は専業主婦となり、長男も生まれ、夫婦円満に過ごしていました。
しかし、今度は夫が取引先のOLと浮気を始めました。
残業や接待、出張が急激に増え、家を空けることが多くなった夫の様子に、疑惑を感じた妻は夫を尾行し、その浮気現場を押さえました。
妻は怒り、女性のアパートや実家に押しかけただけでなく、職場にまで押しかけ、夫と別れるよう執拗に迫りました。
夫は、妻に謝り、女性と二度と会わないと約束すれば、自分が許したように、妻も許してくれると思っていました。
しかし、妻は納得せず、相手女性を非難し続け、結局、女性の上司が中に入り、夫と別れること、慰謝料として50万円支払うことで、一応の示談は成立しました。
相手の女性は勤め先を辞めざるを得なくなり、夫と取引先もギクシャクしてしまいました。
夫婦は激しく夫婦喧嘩をするようになり、妻は長男を連れて実家に帰ってしまったのだが、離婚だけは拒否していました。
別居期間が3年近く続き、夫は、離婚を考えるようになりました。
最高裁の判決により、有責配偶者からの離婚請求も認められるようになりましたが、これには長期間別居状態にあり、夫婦間に未成熟の子がなく、経済的に十分な給付をしている場合など一定要件が必要で、裁判所が全面的に破綻主義の立場で判決を下すわけではありません。
普通は、有責配偶者からの請求は認められません。
また、ダブル不倫をしている夫婦の一方が離婚請求した事件で、裁判所は、原告である夫の離婚意思は固く、また婚姻関係は破綻して回復の見込がないと認定しながら、破綻の責任は専ら不倫を後からした夫側にあるとしました。
被告妻の不倫は解決済みの問題であり、夫の不倫に対する対応に多少の行きすぎがあったとしても、夫は妻も責める立場にないとしても、本件請求は有責配偶者からのもので、原告夫の請求は認容できないと棄却したのである。
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婚約解消の結納金の返還・・・
女性は、勤め先の上司のお誘いで縁談を持ちかけられた。
その縁談を受け、先方の男性もその両親も女性を気に入って、それから数ヵ月後に正式に婚約の申入れがあり、まもなく50万円の結納金が届けられた。
結婚式の日取りは、先方の母が気学に凝っており、祝言は今月中に、方除けとして3ヶ月以間西北の方角に家を見つけて2人だけで同棲生活をし、それから両親の家に移転しなければならないということを強く主張するので、正式な結婚式と披露宴は3ヶ月先にするとして、家族だけで仮祝言をあげると同時に、同棲を始めました。
しかし、女性は、その男性との性格、性的趣向の不一致のため、母の頑強な反対も押し切って、3ヶ月前に逃げ出してしまいました。
男性の両親は、女性に帰ってくる気がないなら、結納金を返してくれと再三催告してきました。
この場合、結納金を返さなければならないのかが、問題になります。
結納金というものは、婚姻の成立を条件として男の側から贈与した金員であるから、婚姻が成立しなかった場合には返し、返さなければ不当利得とされ、民法上返還義務を負うことになります。
(不当利得の返還義務)
民法第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
婚姻が成立したかどうかは実態に即し社会通念によって決せられます。
事実上の婚姻、すなわち内縁でもよいとされます。
最高裁の判例で、挙式後8ヶ月同棲をし、その間に婚姻届をしていた場合は返還義務はないとした事例や、反対に挙式後2ヶ月間同棲したが婚姻届をしておらず、かつ両者の融和がなかった例で、いまだに婚姻成立とはいえないとして返還義務を認めた事例があります。
また、婚姻解消の原因が結納の授与者にあった場合は返還請求できないとする事例もあります。
今回の例の場合、正式な結婚式も婚姻届も出していませんが、これは、男性の側で勝手に迷信にとらわれて遅らせていたにすぎず、仮祝言までして2ヶ月間夫婦生活を続けていたわけですから、結納金を返す必要はないと考えられます。
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