発起人の開業準備行為・・・

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発起人の開業準備行為・・・

最判昭和33年10月24日(報酬金請求事件)
民集12巻14号3228頁、判時165号25頁、商事123号13頁

<事実の概要>

YとAらは、各種織物の精錬・売買等を営むことを目的とするB株式会社の設立を計画したが、設立登記(昭和30年9月12日)にいたる前の昭和30年1月ころからYはB社代表取締役と称してB社名義で事実上営業をしていた。

Aは、将来成立するB社の宣伝等のためX(大映スターズ)を招聘してB社主催で野球試合を開催する企画をし、これに賛成したYはその実施のためにB社名義によるXとの交渉の一切をAに一任した。

Xは当時すでにB社が存在しYがその代表取締役である信じ、昭和30年3月12日、B社代表取締役Yとの間で野球試合実施に関する契約を締結し、3月21日トンボ・ユニオンズとの野球試合を実施した。

その際、B社主催名義のポスター等の配布・宣伝があり、Yも主催者側を代表して挨拶するなど、Yはこの契約締結に関する事実をすべて了知していた。

ところが、約定の出場報酬金および費用合計18万8200円の支払がなかったので、XはYに対して、民法117条1項の類推を主張して、その支払を求めた。

第1審、第2審ともXが勝訴した。

Yが上告した。

<判決理由>上告棄却。

「原審の確定した事実によれば、要するにYらは、かねてB株式会社の設立を計画発起し、昭和30年3月、未だその設立手続未了で設立の登記をしていない右会社の代表取締役として、Xとの間に本件契約を締結したというのである。

原審判示の本件契約は、会社の設立に関する行為とはいえないから、その効果は、設立後の会社に当然帰属すべきいわれはなく、結局、右契約はYが無権代理人としてなした行為に類似するものというべきである。

尤も、民法117条は、元来は実在する他人の代理人として契約した場合の規定であって、本件の如く未だ存在しない会社の代表者として契約したYは、本来の無権代理人には当たらないけれども、同条はもっぱら、代理人であると信じてこれと契約した相手方を保護する趣旨に出たものであるから、これと類似の関係にある本件契約についても、同条の類推適用により、前期会社の代表者として契約したYがその責に任ずべきものと解するを相当とする。

それ故、右と同趣旨に出た原判決は正当であって、論旨は理由がない。」

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財産引受の無効の主張と信義則・・・

最判昭和61年9月11日(売掛金請求事件)
判時1215号125頁、判夕624号127頁、金判758号3頁

<事実の概要>

X株式会社はその有する3つの工場のうちの1つに属する一切の営業をY社の設立前発起人代表Aに譲渡した。

この譲渡についてX社は株主総会の特別決議を経ていなかったが、それは法の不知によるもので、株主総会は容易にできる状況にあった。

Y社はその後代表取締役をAとする株式会社として設立され、上記営業を承継したが、その原始定款には財産引受の記載はなかった。

しかし、これも法の不知によるもので、反対者が存在した等の事情はなかった。

Y社はその後営業を継続し、この営業譲渡についてX社に苦情を述べたこともなかった。

この営業譲渡の代金はその一部が支払われ、XY間で残代金額の確認・支払の猶予などの合意がなされたが、営業はその後思わしくなく、Y社は営業活動を停止するに至った。

X社はY社に残代金の支払を求めて本訴を提起した。

Y社は第1審で前商法168条1項6号違反による無効を主張し、第2審でX社が営業譲渡にあたり株主総会の特別決議を経ていないので無効であると主張した。

なお、これまで、XYともその株主・債権者等の利害関係人から営業譲渡契約の無効が問題とされたことはない。

第1審・第2審ともX社勝訴した。

Y社は上告した。

<判決理由>上告棄却。

「AがX社との間で締結した本件営業譲渡契約は、その契約の実質的な目的及び内容等に鑑みるならば、AがY社の発起人組合の代表者として設立中のY社のために会社の設立を停止条件としてした積極消極両財産を含む営業財産を取得する旨の契約であると認められるから、本件営業譲渡契約は、商法168条1項6号の定める財産引受に当たるというべきである。

そうすると、本件営業譲渡契約は、Y社の原始定款に同号所定の事項が記載されているなければ、無効であり、しかも同条項が無効と定めるのは、広く株主・債権者等の会社の利害関係人お保護を目的とするものであるから、本件営業譲渡契約は何人との関係においても常に無効であって、設立後のY社が追認したとしても、あるいはY社が譲渡代金債務の一部を履行し、譲り受けた目的物について使用もしくは消費、収益、処分又は権利の行使などしたとしても、これによって有効となりうるものではないと解すべきであるところ、原審の確定したところによると、右の所定事項は記載されていないというのであるから、本件営業譲渡契約は無効であって、契約の当事者であるY社は、特段の事情のない限り、右の無効をいつでも主張することができるというべきである。」

「つぎに、本件営業譲渡契約が譲渡の目的としたものは、原審の確定したところによると、たばこ製造機械・小型ディーゼルエンジンの製造販売を目的とするX社の有する3工場のうち専ら小型ディーゼルエンジンの製造販売に当たっていた長岡工場の営業一切であるというのであるから、商法245条1項1号にいう営業の「重要なる一部」に当たるものというべきである。

そうすると、本件営業譲渡契約は、譲渡をしたX社が商法245条1項に基づき同法343条に定める株主総会の特別決議によってこれを承認する手続を経由しているのでなければ、無効であり、しかも、その無効は、原始定款に記載のない財産引受と同様、広く株主・債権者等の会社の利害関係人の保護を目的とするものであるから、本件営業譲渡契約は何人との関係においても常に無効であると解すべきである。

しかるところ、原審の確定したところによると、本件営業譲渡契約については事前又は事後においても右の株主総会による承認の手続をしていないというのであるから、これによっても、本件営業譲渡契約は無効であるというべきである。

そして、営業譲渡が譲渡会社の株主総会による承認の手続をしないことによって無効である場合、譲渡会社、譲渡会社の株主・債権者等の会社の利害関係人のほか、譲受会社もまた右の無効を主張することができるものと解するのが相当である。

けだし、譲渡会社ないしその利害関係人のみが右の無効を主張することができ、譲受会社がこれを主張することができないとすると、譲受会社は、譲渡会社ないしその利害関係人が無効を主張するまで営業譲渡を有効なものと扱うことを余儀なくされるなど著しく不安定な立場におかれることになるからである。

したがって、譲受会社であるY社は、特段の事情のない限り、本件営業譲渡契約について右の無効をいつでも主張することができるものというべきである。」

「Y社に本件営業譲渡契約の無効を主張することができない特段の事情があるかどうかについて検討するに、原審の確定した事実関係によれば、X社は本件営業譲渡契約に基づく債務を全て履行済みであり、他方Y社は右の履行について苦情を申し出たことがなく、また、Y社は、本件営業譲渡契約が有効であることを前提に、X社に対し本件営業譲渡契約に基づく自己の債務を承認し、その履行として譲渡代金の一部を弁済し、かつ、譲り受けた製品・原材料等を販売又は消費し、しかも、Y社は、原始定款に所定事項の記載がないことを理由とする無効事由については契約後約9年、株主総会の承認手続を経由していないことを理由とする無効事由については契約後約20年を経て、初めて主張するに至ったものであり、両会社の株主・債権者等の会社の利害関係人が右の理由に基づき本件営業譲渡契約を無効であるなどとして問題にしたことは全くなかった、というのであるから、Y社が本件営業譲渡について商法168条1項6号又は245条1項1号の規定違反を理由にその無効を主張することは、法が本来予定したY社又はX社の株主・債権者等の利害関係人の利益を保護するという意図に基づいたものとは認められず、右違反に藉口(しゃこう)して、専ら、既に遅滞に陥った本件営業譲渡契約に基づく自己の残債務の履行を拒むためのものであると認められ、信義則に反し許されないものといわなければならない。

したがって、Y社が本件営業譲渡について商法の右各規定の違反を理由として無効を主張することは、これを許さない特段の事情があるというべきである。」

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他人名義による株式の引受・・・

最判昭和42年11月17日(株券引渡請求事件)
民集21巻9号2448頁、判時504号85頁、判夕215号101頁

<事実の概要>

Y株式会社の新株発行に際し、代表取締役Aは税金対策上の理由から従業員であるXの承諾をえてその名義を借用し、新株の引受及び払込の手続をした。

XがY社に対して株券の発行を求めて本訴を提起した。

第1審・第2審ともXは敗訴したので上告した。

<判決理由>上告棄却。

「他人の承諾を得てその名義を用い株式を引き受けた場合においては、名義人すなわち名義貸与者ではなく、実質上の引受人すなわち名義借用者がその株主となるものと解するのが相当である。

けだし、商法第201条は第1項において、名義のいかんを問わず実質上の引受人が株式引受人の義務を負担するという当然の事理を規定し、第2項において、特に通謀者の連帯責任を規定したものと解され、単なる名義貸与者が株主たる権利を取得する趣旨を規定したものとは解されないから、株式の引受及び払込については、一般私法上の法律行為の場合と同じく、真に契約の当事者して申し込みをした者が引受人としての権利を取得し、義務を負担するものと解すべきであるからである。」

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株式の相続と訴訟の承継・・・

最大判昭和45年7月15日(会社解散、社員総会決議取消等請求事件)
民集24巻7号804頁、判時597号70頁、判夕251号152頁

<事実の概要>

X1はY有限会社の社員たる資格に基づきY社の解散、及び、昭和33年8月4日開催の臨時社員総会決議の取り消しと予備的に決議の無効確認を請求していたが、第1審係属中に死亡した。

X1の出資持分を相続したX2が、これらの訴訟の原告たる地位も承継したと主張して本訴を追行したが、第1審は、有限会社における社員の会社解散請求権、社員総会決議の取消及び無効確認請求権は、会社の利益を擁護するために社員に与えられたいわゆる共益権であり、財産的内容をもつ権利ではなく社員の一身専属的な権利であるとして、相続人が訴訟承継することはできず、訴訟は当然終了すると判示した。

原審もほぼ同様の見解のもとにX2の控訴を棄却したため、X2は上告した。

<判決理由>破棄差戻し。

「有限会社における社員の持分は、・・・社員が社員たる資格において会社に対して有する法律上の地位・・・を意味し、社員は、かかる社員たる地位に基づいて、・・・いわゆる自益権と本件におけるような・・・いわゆる共益権とを有するのであるが、会社の営利法人たる性質に鑑みれば、これらの権利は、・・・いずれも直接間接社員自身の経済的利益のために与えられ、その利益のために行使しうべきものと解さなければならない。

このことは、社員が直接会社から財産的利益を受けることを内容とする自益権については疑いがないが、社員が会社の経営に関し、不当な経営を防止しまたはこれにつき救済を求めることを内容とする共益権についても、異なるところはない。

けだし、共益権も、帰するところ、自益権の価値の実現を保障するために認められたものにほかならないのであって、その権利の性質上権利行使の結果が直接会社及び社員の利益に影響を及ぼすためその行使につき一定の制約が存することは看過しがたいにしても、本来それが社員自身の利益のために与えられたものであることは否定することができないからである。

そして、このような共益権の性質に照らせば、それは自益権と密接不可分の関係において全体として社員の法律上の地位としての持分に包含され、したがって、持分の移転が認められる以上、共益権もまたこれによって移転するものと解するのが相当であり、共益権をもって社員の一身専属的な権利であるとし、譲渡又は相続の対象となりえないと解するいわれはないのである。

ところで、社員が・・・訴を提起したのちその持分を譲渡した場合には、譲受人は会社解散請求権、社員総会決議取消請求権及び同無効確認請求権のごときは取得するけれども、譲渡人の訴訟上における原告たる地位までも承継するとはいえない。

これに反して、相続の場合においては、相続人は被相続人の法律上の地位を包括的に承継するのであるから、持分の取得により社員たる地位にともなう前記のごとき諸権利はもとより、被相続人の提起した訴訟の原告たる地位をも承継し、その訴訟手続を受継ぐことになる。

してみれば、本件訴訟については、X1の死亡により、同人の有した被上告会社の持分の全部を相続により取得したX2において原告たる地位をも当然に承継したものというべきであり、X1の死亡により本件訴訟が終了したものとすることはできない。」

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