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遺留分と相続放棄・・・
共同相続人が相続放棄をすると他の共同相続人の遺留分は増大します。
被相続人の子8名のうち4名は家庭裁判所に相続放棄を申述がされている場合、相続放棄をしなかった相続人4名の遺留分は各8分の1であるとされます。
子の遺留分全員で1/2ですので、子が8人いると、子1人につき1/16が遺留分になります。
その中の4名が相続放棄をすると、子の人数が1/2になりますから、1/8になります。
相続放棄をした4名は初めから相続人でなかったとみなされるのであるから、相続放棄をした者について遺留分という観念は初めから存在せず、したがって、その放棄も考えることはできないところ、民法は遺留分と自由分の割合を遺留分権利者の数と無関係の立場を採っているため、共同相続人が相続放棄をすると他の共同相続人の遺留分は増大するが、これは民法が遺留分の割合について右の立場を採っている結果であって、遺留分が放棄されたことによるものではないし、したがって、この場合、遺留分の放棄があったとして、民法1028条の特別規定である同法1043条の適用又は準用を考える余地はないとして、控訴人の共同相続人の1人が遺留分を放棄しても他の共同相続人の遺留分に影響しないのであるから、被控訴人らの遺留分は各16分の1であるとの主張を排斥しました。
(遺留分の帰属及びその割合)
民法第1028条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
1.直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
2.前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1
(遺留分の放棄)
民法第1043条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 共同相続人の1人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
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遺留分放棄許可審判取消 不当な審判・・・
裁判所は、裁判をした後、その裁判を不当と認めるときは、これを取消し又は変更することができます。
非訟事件手続法第19条 裁判所ハ裁判ヲ為シタル後其裁判ヲ不当ト認ムルトキハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得
2 申立ニ因リテノミ裁判ヲ為スヘキ場合ニ於テ申立ヲ却下シタル裁判ハ申立ニ因ルニ非サレハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
3 即時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判ハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
非訟事件手続法19条1項による裁判の取消・変更は、当該裁判が当初から不当である場合に行なうとした事例があります。
審判が当初から無効である場合も非訟事件手続法19条に基づいて取消ができると解されています。
申立人が未成年の時にされた遺留分放棄許可審判の相続開始後の取消申立につき、被相続人が申立人の母に財産変動を正確に告げず、同人が被相続人の土地取得の事実を知らなかったとしても遺留分放棄に要素の錯誤はないとした事例があります。
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遺留分放棄許可審判取消 事情変更 ・・・
裁判所は、裁判をした後、その裁判を不当と認めるときは、これを取消し又は変更することができます。
非訟事件手続法第19条 裁判所ハ裁判ヲ為シタル後其裁判ヲ不当ト認ムルトキハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得
2 申立ニ因リテノミ裁判ヲ為スヘキ場合ニ於テ申立ヲ却下シタル裁判ハ申立ニ因ルニ非サレハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
3 即時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判ハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
遺留分放棄許可審判後であっても、許可を相当とすべき前提事実が変更したときは、これを維持しておく理由はないと解した事例があります。
遺留分放棄許可審判後であっても、事情の変更によりその審判を存続させておくことが不適当と認められるに至ったときは、これを取消し又は変更することが許されるが、遺留分放棄許可の審判は、諸般の事情を考慮した上、公権的作用として法的安定を目指すものであり、遺留分放棄者の恣意により、みだりにその取消し、変更を許すべきではなく、遺留分放棄の合理性、相当性を裏付けていた事情が変化し、これにより遺留分放棄の状態を存続させることが客観的にみて不合理、不相当と認められるに至った場合でなければならないと解し、本件では遺留分放棄の状態を存続させることが不合理、不相当と認められるに至ったものとは認められないこと、抗告人の主張に係る事実関係は、本件許可審判がされた当時の事情がその後変更したことを示すものではないなどとして、抗告を棄却した事例があります。
申立事由の事情変更は主として地価の高騰であるが、地価の高低は当然あり得ることであり、このような社会一般の変動は、これを考慮しないと著しく不当、不正義な結果をもたらすなどの特別な事由のない限り、直ちに取消し事由にならないというべきであると解した事例があります。
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遺留分放棄許可審判取消 相続開始後・・・
裁判所は、裁判をした後、その裁判を不当と認めるときは、これを取消し又は変更することができます。
非訟事件手続法第19条 裁判所ハ裁判ヲ為シタル後其裁判ヲ不当ト認ムルトキハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得
2 申立ニ因リテノミ裁判ヲ為スヘキ場合ニ於テ申立ヲ却下シタル裁判ハ申立ニ因ルニ非サレハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
3 即時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判ハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
裁判が第三者に対して効力を生じた後は、非訟事件手続19条1項の規定による取消・変更は許されないと解されています。
相続開始後の遺留分放棄許可審判取消については、相続開始前であることを理由にあげて、遺留分放棄許可審判を取消した事例があります。
これを容易に認めると被相続人が生前贈与をして遺留分放棄をしてもらい死後の紛争を回避しようとした趣旨を没却することを理由の一つとして、結果的に審判取消を認めなかった事例があります。
相続開始後に遺留分放棄許可の審判が取消されて遺留分権が行使された場合は、既に生じた権利関係に影響するのは自明であるが、本件の場合は抗告人の遺留分権が行使されれば、取り戻された財産につき遺産分割をするというだけのことであり、また、遺留分減殺を受けるべき財産を他人に譲渡された場合であっても、譲受人が譲渡の当時遺留分権利者に損害を加えることを知らなかったときは、その者は減殺を受けることはないのであるから、第三者と関係で無用の混乱を生ずることは考えられないとして、これを可能と解した判例もあります。
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遺留分放棄許可審判手続・・・
裁判所は、裁判をした後、その裁判を不当と認めるときは、これを取消し又は変更することができます。
非訟事件手続法第19条 裁判所ハ裁判ヲ為シタル後其裁判ヲ不当ト認ムルトキハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得
2 申立ニ因リテノミ裁判ヲ為スヘキ場合ニ於テ申立ヲ却下シタル裁判ハ申立ニ因ルニ非サレハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
3 即時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判ハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
①申立権者
遺留分を放棄した相続人です。
②管轄
遺留分放棄を許可した家庭裁判所になります。
③添付書類
申立理由を証する資料です。
④審判手続
この申立は家庭裁判所の職権発動を促すものであり、家庭裁判所は、申立に対する応答義務はありません。
審理の必要性が認められるときは、遺留分放棄を許可する審判の基礎となった事情に変更を生じ審判の効力を維持することが実情に適しなくなっているかどうか、真実相続人が遺留分放棄許可の取消しを欲しているかなどにつき、家庭裁判所は職権で調査をして、取消の当否を決します。
遺留分放棄の許可審判を取消す審判は、申立人に告知されて効力を生じます。
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