遺留分減殺の価額弁償の選択権・・・

遺留分減殺の価額弁償の選択権・・・

遺留分減殺の対象となった財産を現物で返還するか、その価額を弁償するかの選択権は、受遺者側にあります。

(遺留分権利者に対する価額による弁償)
民法第1041条 受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。
2 前項の規定は、前条第1項ただし書の場合について準用する。

遺留分権利者の受遺者に対する価額弁償として金員の請求が認められた事例があります。

遺留分権利者がこれをなし得るには、受遺者が価額弁償の意思を表明した場合に限られると解した事例があります。

現物返還が可能である場合、遺留分権利者は、当然に価額弁償を求めることはできませんが、受遺者が価額弁償を選択したときは価額弁償を受けることができるとした事例があります。

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遺留分減殺の価額弁済の弁済の提供・・・

受遺者が価額弁償の方法を選択した場合、現物返還義務を免れるためには価額弁償の意思表示をしただけでは足りず、価額の弁償を現実に履行するか又はその弁済の提供をしなければなりません。

(遺留分権利者に対する価額による弁償)
民法第1041条 受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。
2 前項の規定は、前条第1項ただし書の場合について準用する。

遺留分権利者が不動産について現物返還、その余りの受贈財産について価額弁償を請求し、受遺者は価額弁償の抗弁をした場合、価額の弁償を現実に履行したこと、又はその弁済の提供をしたことが認められないから、受遺者は現物返還義務を免れることはできないとして、不動産について現物返還、その余りの受遺財産について価額弁償を命じた事例があります。

価額弁償はその弁済を了することを意味し、単に弁償する旨述べたにすぎない場合は、減殺の結果生じた返還義務は免れないとして、遺贈による所有権移転登記の抹消登記を命じた事例があります。

遺留分権利者が選択的にせよ受遺者に対し価額弁償を請求しているときは、受遺者において価額弁償の現実の履行又は履行の提供をしたことの主張立証がなくても価額弁償を命ずることができるとした事例があります。

被控訴人の価額弁償のための供託は控訴人らの遺留分回復請求訴訟判決の確定後にされているところ、遺留分権利者が得るものが価額弁済時における等価の金銭であって、いわば目的物そのものを得るに等しい点に鑑みるときは、遺留分回復の訴訟が先行した場合に、その事実審の口頭弁論終結時までに価額弁償の提供をしなければならないとして、時間的制限を科する必要はなく、遺留分の完全な回復が得られるまでは、価額弁償をなしうるものと解するのが相当であるとした事例があります。

価額弁償として提供・供託した金員が遺贈の目的の適正な価額に不足する場合であっても、その後に不足額を追加して提供・供託したときは、受遺者は目的物返還義務を免れるとした事例があります。

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遺留分減殺の価額弁償額の算定 ・・・

原告の遺留分減殺請求に対し、被告は価額弁償の主張をしているが、右申出は被告独自の評価算定に基づき相殺処理をして右弁償を履行したというものであり、右以上に具体的な弁済提供をするものではなく、また、裁判所の算定に基づく価額弁償を申し出るなどの意思表示をしているものとも認めがたいから、適法な価額弁償の申出と解することはできないとした事例があります。

(遺留分権利者に対する価額による弁償)
民法第1041条 受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。
2 前項の規定は、前条第1項ただし書の場合について準用する。

原告(受遺者)の相続人に対する更正登記手続請求訴訟において、被告が遺留分減殺の抗弁を提出し、原告が価額弁償の再抗弁を提出した場合、原告の価額弁償申出額を上回る弁償を条件として、原告の請求の一部が認容された事例があります。

価額弁償の目的物の価額算定の基準時は事実審の口頭弁論終結時とされています。

受贈者が目的物を第三者に処分した後に遺留分減殺請求がなされた場合、価額弁償額算定の基準時は当該処分の時であるとした事例があります。

価額弁償の対象土地の時価を評価鑑定した事例があります。

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遺留分減殺の価額弁償の判決・・・

減殺請求をした遺留分権利者が遺贈の目的物の返還を求める訴訟手続において、受遺者が、事実審口頭弁論終結前に、裁判所が定めた価額により民法1041条の規定による価額の弁償をなすべき旨の意思表示をした場合には、裁判所は、右訴訟の事実審口頭弁論終結時を算定の基準時として弁償すべき額を定めた上、受遺者が右の額を支払わなかったことを条件として、遺留分権利者の目的物返還請求を認容すべきものとされます。

(遺留分権利者に対する価額による弁償)
民法第1041条 受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。
2 前項の規定は、前条第1項ただし書の場合について準用する。

この判決の主文は、「被上告人は、上告人に対し、被上告人が上告人に対して、民法1041条所定の遺贈の目的の価額の弁償として**万円を支払わなかったときは、第一審判決添付第一目録記載の各不動産の原判決添付目録記載の持分につき、所有権移転登記をせよ」とされます。

遺留分権利者からの遺贈の目的物の返還を求める訴訟において、目的物の返還を命ずる裁判の内容が意思表示を命ずるものである場合には、受遺者が、裁判所の定める額を支払ったという事実は、債務者の証明すべき事実に当たり、同条の定めるところにより、遺留分権利者からの執行文付与の申立を受けた裁判所書記官が受遺者に対し一定の期間を定めて右事実を証明する文書を提出すべき旨を催告するなどの手続を経て執行文が付与されたときに、意思表示をしたものとみなされる判決の効力が発生し、また、受遺者が裁判所の定める額について弁済の履行の提供をした場合も、右にいう受贈者が、裁判所の定める額を支払った場合に含まれるというべきであり、執行文付与の前に受遺者が右の履行の提供をした場合には、減殺請求によりいったん遺留分権利者に帰属した権利が再び受遺者に移転する反面、遺留分権利者は受遺者に対して右の額の金銭の支払を求める権利を取得します。

原審判決は、「上告人が本件不動産について前記持分権を有することを確認する。被上告人は、上告人に対し、右持分について所有権移転登記をせよ。被上告人は上告人に対し、**万円を支払ったときは、前項の所有権移転登記義務を免れることができる」とされました。

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