持分会社の持分の相続・・・
会社法では、合名会社、合同会社を持分会社と総称しています。
会社法第575条
1.合名会社、合資会社又は合同会社(以下「持分会社」と総称する。)を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
2.前項の定款は、電磁的記録をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
持分会社は社員で構成されますが、合名会社は社員の全部を無限責任社員とし、合資会社は社員の一部が無限責任社員、その他の社員を有限責任社員とし、合同会社は社員の全部を有限責任社員とします。
会社法第576条
1.持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 社員の氏名又は名称及び住所
五 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別
六 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準
2.設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、前項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
3.設立しようとする持分会社が合資会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
4.設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
持分会社の社員は、死亡により退社しますが、持分会社は、その社員が死亡した場合における当該社員の相続人その他の一般承継者が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができます。
会社法第607条
1.社員は、前条、第609条第1項、第642条第2項及び第845条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと。
八 除名
2.持分会社は、その社員が前項第五号から第七号までに掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定めることができる。
会社法第608条
1.持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。
2.第604条第2項の規定にかかわらず、前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の一般承継人(社員以外のものに限る。)は、同項の持分を承継した時に、当該持分を有する社員となる。
3.第1項の定款の定めがある場合には、持分会社は、同項の一般承継人が持分を承継した時に、当該一般承継人に係る定款の変更をしたものとみなす。
4.第1項の一般承継人(相続により持分を承継したものであって、出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、連帯して当該出資に係る払込み又は給付の履行をする責任を負う。
5.第1項の一般承継人(相続により持分を承継したものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、承継した持分についての権利を行使する者一人を定めなければ、当該持分についての権利を行使することができない。ただし、持分会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
会社法608条1項の一般承継人(相続により持分を承継したものに限る)が2人以上ある場合には、各一般承継人は、承継した持分について権利を行使する者1名を定めなければ、当該持分についての権利を行使することができません。
ただし、持分会社が当該権利を行使することに同意した場合を除きます。
持分会社が解散して清算中に社員が死亡した場合、会社法608条1項の定款の定めがないときであっても、当該社員の相続人その他の一般承継人は、当該社員の持分を承継します。
この場合においては、会社法608条5項の規定が準用されているので、一般承継人が2人以上ある場合には、各一般承継人は、持分会社が当該権利を行使することに同意した場合を除き、承継した持分について権利を行使する者1名を定めなければ、当該持分についての権利を行使することができません。
旧商法144条は、合名会社の社員が死亡した場合、その相続人が数人あるときは、清算に関して社員の権利を行使すべき者1人を定めることを要すると定めていましたが、共同相続人全員が社員の場合、権利行使者の指定の要否につき、次の判例があります。
死亡した社員の持分の遺産分割がされ、その共有関係が解消されるまでの間、共同相続人が清算に関する権利を行使するには、そのうち1人を当該権利を行使する者と定めることを要しますが、死亡した社員の共同相続人の全員が社員である場合、各社員が死亡した社員の持分に基づき、清算に関する権利を行使するときも、いずれか1人を当該権利を行使する者と定めることが必要です。
旧商法第百四十四条
社員ガ死亡シタル場合ニ於テ其ノ相続人数人アルトキハ清算ニ関シテ社員ノ権利ヲ行使スベキ者一人ヲ定ムルコトヲ要ス
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社債の共有相続・・・
社債発行会社が社債権者に対してする通知又は催告は、社債原簿に記載し、又は記録した当該社債権者の住所に当てて発すれば足ります。
この通知・催告は、その通知・催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなされます。
会社法第六百八十五条
1.社債発行会社が社債権者に対してする通知又は催告は、社債原簿に記載し、又は記録した当該社債権者の住所(当該社債権者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該社債発行会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。
2.前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。
3.社債が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、社債発行会社が社債権者に対してする通知又は催告を受領する者一人を定め、当該社債発行会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければならない。この場合においては、その者を社債権者とみなして、前二項の規定を適用する。
4.前項の規定による共有者の通知がない場合には、社債発行会社が社債の共有者に対してする通知又は催告は、そのうちの一人に対してすれば足りる。
5.前各項の規定は、第七百二十条第一項の通知に際して社債権者に書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合について準用する。この場合において、第二項中「到達したもの」とあるのは、「当該書面の交付又は当該事項の電磁的方法による提供があったもの」と読み替えるものとする。
社債が2以上の者の共有に属するときは、共有者は、社債発行会社が社債権者に対してする通知又は催告を受領する者1人を定め、当該社債発行会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければなりません。
この場合においては、その者を社債権者とみなして、会社法685条1項、2項の規定が適用されます。
会社法685条1項から4項の規定は、社債権者集会の招集者が会社法720条1項の規定により、社債権者集会の招集通知を書面でする場合に準用されています。
会社法第七百二十条
1.社債権者集会を招集するには、招集者は、社債権者集会の日の二週間前までに、知れている社債権者及び社債発行会社並びに社債管理者がある場合にあっては社債管理者に対して、書面をもってその通知を発しなければならない。
2.招集者は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、同項の通知を受けるべき者の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該招集者は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
3.前二項の通知には、前条各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
4.社債発行会社が無記名式の社債券を発行している場合において、社債権者集会を招集するには、招集者は、社債権者集会の日の三週間前までに、社債権者集会を招集する旨及び前条各号に掲げる事項を公告しなければならない。
5.前項の規定による公告は、社債発行会社における公告の方法によりしなければならない。ただし、招集者が社債発行会社以外の者である場合において、その方法が電子公告であるときは、その公告は、官報に掲載する方法でしなければならない。
権利行使者の指定通知がなくても、会社が当該権利を行使することに同意したときは、この指定通知が不要です。
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被相続人による祭祀主宰者の指定・・・
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、民法896条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。
民法第896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
民法第897条
1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2.前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
被相続人は、その生前に祭祀の主宰者を指定することができます。
その指定は、必ずしも明示的にされることは必要ではなく、例えば、被相続人が生前にその全財産を贈与して家業を継がせた者を祭祀の主宰者に指定したものと認定した事例があります。
また、被相続人はその所有する墓碑に祭祀を承継させる者の氏名を建立者として刻んで、その意思を明らかにしているとして、この者を祭祀の承継者に指定した事例があります。
被相続人の指定による祖先の祭祀主宰者がある場合でも、祭祀財産の承継者指定の申立があり、被相続人の指定の存否や慣習の存否について当事者間に争いがある限り、家庭裁判所は、これらを審理し、指定の内容や慣習の内容に従い、祭祀財産の承継者を指定する審判をすべきであると解した事例があります。
被相続人は、遺言で祭祀の主宰者を指定することもできます。
遺言により祭祀の主宰者に指定された者は、遺言の効力発生と同時に当然祭祀主宰者になり、辞退できません。
しかし、指定された祭祀の主宰者は祭祀財産を自由に贈与、売買できますから指定に束縛されることはありません。
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相続人の協議による祭祀主宰者の指定・・・
民法897条の祭祀財産の承継者は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するか、被相続人の祖先の祭祀を主宰すべき者の指定があるときはその者が承継するのであるから、相続人らが祭祀承継者を協議して定めても、被相続人のその祭祀承継者を相続人らで協議して定める旨の指定がない限り、家庭裁判所が指定する際の一資料になるとしても、その者を祭祀承継者であると認めることはできないと解した事例があります。
民法第897条
1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2.前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
祭祀承継者は、関係人の合意で定めることはできますが、合意の成立を否定した事例があります。
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