胎児の認知・・・
父は、胎内にある子でも、これを認知することができます。
認知は、出生の時に遡って、その効力を生じ、胎児認知された子は、出生によって父との間に嫡出でない親子関係を生じます。
民法第783条
1.父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。
2.父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。
民法第784条
認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。
胎児認知をする場合には、母の承諾が必要です。
母の承諾は、胎児認知届出書に承諾を証する書面を添付するか、届出書のその他欄に署名押印して、その旨を証明します。
戸籍法第38条
1.届出事件について父母その他の者の同意又は承諾を必要とするときは、届書にその同意又は承諾を証する書面を添附しなければならない。但し、同意又は承諾をした者に、届書にその旨を附記させて、署名させ、印をおさせるだけで足りる。
2.届出事件について裁判又は官庁の許可を必要とするときは、届書に裁判又は許可書の謄本を添附しなければならない。
母の承諾を欠いた胎児認知の届出は、受理されず、誤って承諾を欠く届出が受理されたときは、承諾者は認知取消の訴えを提起することができます。
胎児認知をする場合は、届出書にその旨、母の氏名及び本籍を記載し、母の本籍地で、これを届け出なければなりません。
戸籍法第61条
胎内に在る子を認知する場合には、届書にその旨、母の氏名及び本籍を記載し、母の本籍地でこれを届け出なければならない。
遺言による認知をする場合には、遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添付して、戸籍法61条の規定に従って、その届出をしなければなりません。
戸籍法第64条
遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添附して、第60条又は第61条の規定に従つて、その届出をしなければならない。
遺言執行者は、退治の母から胎児認知の承諾を得ることが必要です。
胎児認知届があった場合、母の本籍地の市町村長は、ただちにその記載をせず、後に出生届があるまでこれをそのまま保存し、出生届がされたときに出生事項とともに胎児認知の旨を戸籍に記載する取扱です。
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渉外胎児認知・・・
胎児認知された子は、出生によって父との間に嫡出でない親子関係を生じますから、日本人の男が外国人の女の嫡出でない子を胎児認知しておくと、その子は生まれた時から日本国籍を取得します。
国籍法第二条
子は、次の場合には、日本国民とする。
①出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
②出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
③日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
しかし、子の出生後の認知では、国籍法2条1号の適用はないので、認知によって日本国籍を取得しないと解されています。
胎児認知は、認知の当時の認知する者の本国法又は子の本国法のいずれかの法律によってもすることができますが、親子双方の本国法にその制度があることを要し、親又は子のいずれか一方の本国法に定めがないときは、胎児認知をすることはできません。
胎児認知の届出があった場合、法例18条1項及び2項の適用上、「子の本国法」を「母の本国法」と読み替えて受否が決定されます。
旧法例18条
法適用通則法第29条
1.嫡出でない子の親子関係の成立は、父との間の親子関係については子の出生の当時における父の本国法により、母との間の親子関係についてはその当時における母の本国法による。この場合において、子の認知による親子関係の成立については、認知の当時における子の本国法によればその子又は第三者の承諾又は同意があることが認知の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。
2.子の認知は、前項前段の規定により適用すべき法によるほか、認知の当時における認知する者又は子の本国法による。この場合において、認知する者の本国法によるときは、同項後段の規定を準用する。
3.父が子の出生前に死亡したときは、その死亡の当時における父の本国法を第一項の父の本国法とみなす。前項に規定する者が認知前に死亡したときは、その死亡の当時におけるその者の本国法を同項のその者の本国法とみなす。
民法上、認知の効力は、子の出生時に遡及しますが、国籍法では生後認知の効力は遡及しません。
遺言で認知された胎児が生まれたときは、遺言執行者は、その事実を知った日から14日以内にその旨を届け出なければなりません。
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認知した胎児が死産の場合・・・
胎児が死体で生まれた時は、死産の届出に関する規程4条によって死産届をすることになっています。
死産の届出に関する規程第4条
1.死産の届出は、医師又は助産師の死産証書又は死胎検案書を添へて、死産後7日以内に届出人の所在地又は死産があつた場所の市町村長(都の区の存する区域及び 地方自治法(昭和22年法律第67号) 第252条の19第1項 の指定都市にあつては、区長とする。以下同じ。)に届出なければならない。
2.汽車その他の交通機関(船舶を除く。)の中で死産があつたときは母がその交通機関から降りた地の、航海日誌のない船舶の中で死産があつたときはその船舶が最初に入港した地の市町村長に死産の届出をすることができる。
3.航海日誌のある船中で死産があつたときは、死産の届出を船長になさなければならない。船長は、これらの事項を航海日誌に記載して署名捺印しなければならない。
4.船長は、前項の手続をなした後最初に入港した港において、速かに死産に関する航海日誌の謄本を入港地の市町村長に送付しなければならない。
死体で生まれた胎児が認知されているときは、死産届のほかに、出生届義務者はその事実を知った日から14日以内に認知された胎児の死産届を母の本籍地に提出しなければなりません。
遺言執行者が胎児認知届をしている場合は、死産届も遺言執行者がしなければなりません。
医師、助産婦その他の者が死産に立ち会った場合には、届出書に死産届を添付します。
また、死亡した子を認知することもできます。
死亡した子を認知する場合は、その子に直系卑属があるときだけです。
この場合、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得ることを要しますので、遺言執行者は、遺言の執行として、子の直系卑属から死亡した子を認知することの承諾を得た上で認知の届出をします。
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認知調停の申立・・・
認知調停の申立は、嫡出でない子とその血縁上の父との間に、法律上の親子関係が形成されることを求めるものです。
嫡出でない子と父との間の法律上の親子関係は、認知によってはじめて発生するものですから、嫡出でない子は、認知によらないで父との間の親子関係の存在確認の訴えを提起することはできません。
また、子の父に対する認知請求権は放棄することはできません。
認知請求権を放棄し、又はその行使を制限する和解契約は、その効力がないとされます。
判例では、認知を求められているAは既に死亡し、20年以上経っているがその間BはAに対する認知請求をしていないが、これはBの出生時に、AとBの母との間で、また、Bを含めた3者間で、Aの認知請求権の放棄の約束と代償の交付があったためであり、子の父に対する認知請求権は、その身分法上の権利たる性質及びこれを認めた民法の法意に照らし、放棄することができないと解されるとともに、長年行使しないからといって行使することができなくなると解することもできず、また、Aの生前に認知の訴えを提起する機会があったからといって、その死亡後3年以内に提起された本訴が不適法となるものではないとしました。
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