夫婦と内縁と同棲と愛人・・・
内縁とは、法律的には婚姻意思をもって夫婦協同生活を行い、社会的には夫婦と認められているのもかかわらず、法律上の婚姻届の手続をしていないために、法律的には正式の夫婦とは認められない事実上の夫婦関係をいいます。
社会生活の上からみれば、普通の夫婦と同一の生活関係を作っており、夫婦と異なるところは全くありません。
内縁と夫婦の違いは、ただ婚姻届出をしているか、していないかだけであり、法律的にも内縁関係は「婚姻に準ずる関係」として保護されています。
しかし、婚姻の届出がないために、保護を受けられないものもあります。
例えば、相続に関していえば、内縁の夫の死亡により、内縁の妻には相続権がないとされます。
また、同棲と愛人関係の違いについて、同棲とは男女が事実上一つ屋根の下に生活している関係をいい、内縁関係にまではいっていない状態であり、愛人関係は特殊な男女の相思相愛の関係にあるものです。
内縁関係が法律的に保護されるのは、夫婦としての実態を備えていることにあり、ただ男女の結びつきにすぎないと思われる関係については、男女がそれぞれの立場と責任で解決すべきであり、法律の保護は受けられません。
また、婚約があった場合には、その婚約が真実夫婦として共同生活を営む意思であることが必要であり、その場合には、婚約関係にある男女は法律の保護を受けることができます。
スポンサードリンク
重婚的内縁関係といえるためには・・・
内縁は、法律的には男女が協力して夫婦としての生活を営む結合であるということから、これを婚姻に準ずる関係とみておりますから、内縁が成立するためには、婚姻の要件が備わることが必要です。
男女の関係が「直系血族又は三親等内の傍系血族」であったり、重婚の禁止にふれるような場合には、内縁関係は認められないものになります。
(近親者間の婚姻の禁止)
民法第734条 直系血族又は3親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
2 第817条の9の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
(重婚の禁止)
民法第732条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
父母の同意が得られないような場合は、それは婚姻の本質とは関係ないので、内縁の成立は認めてよいとされます。
また、男性に妻子がいる場合の内縁は重婚的内縁関係といいますが、重婚的内縁関係といえるためには男性と法律上の妻との婚姻関係が、実質的に完全に失われているか、あるいはそれに近い程度に失われていることが必要です。
つまり、男性とその妻はただ単に戸籍上の夫婦にしかすぎないという客観的な状態が続いていることが認められなければなりません。
妻子ある男性にこのような関係がなければ、法律上は内縁とはいえず、単に同棲関係があるということになります。
スポンサードリンク
内縁関係で生まれた子供・・・
結婚をしていない男女の間に生まれた子供は、嫡出でない子といわれます。
民法では、婚姻意思をもって夫婦共同生活を行い、社会的に夫婦と見られていても、法の定める婚姻届を出さない限り、法律上結婚したことになりません。
ですので、内縁の夫婦の間に生まれた子供は嫡出子とはならず、非嫡出子ということになります。
内縁関係によって生まれた子供というのは、内縁中に懐胎し、内縁成立の日から200日後、あるいは内縁解消の日から300日以内に出生した子供をいいます。
内縁の子供は母の氏を称し、母の戸籍に入ります。
その子供に対し父の認知があるか、あるいは審判若しくは裁判によって、父子関係が確認された場合には、家庭裁判所の許可を得て、父の氏を称し、父の戸籍に入ることができます。
内縁の子供は、母の親権に服しますが、父の認知や審判によって父子関係が確認されたときでも、それによって当然に父の親権が発生するわけではなく、父母の協議で父を親権者と定めたときにかぎり、父との親権関係が発生するとされております。
(離婚又は認知の場合の親権者)
民法第819条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
5 第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
内縁の子供は、その母との間に血族関係が生じ、母や母の血族との間において、お互いに扶養義務を負い、相続も母に限られます。
父との間にこれらの関係を生じさせるためには、父の認知か父子関係の確認が必要です。
民法772条は内縁の子供の場合に類推適用され、内縁関係成立の日から200日以後に生まれた子供は、内縁の夫の子と推定されますから、認知の訴えが起されたときに、父の方で推定をくつがえす事実を立証しないかぎり、父の認知が認められるという効果をもたらします。
(嫡出の推定)
民法第772条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
内縁中に懐胎し婚姻届出後に出生した子供は、たとえそれが婚姻成立の日より200日以内であっても夫の子と推定されます。
父が認知をした後に結婚すると、結婚の日からその子は父母の嫡出子となります。
内縁中に生まれた子が、父母の結婚後に認知された場合には、認知の日からその子は父母の嫡出子となります。
スポンサードリンク