勝手に離婚届を出し婚姻・・・

勝手に離婚届を出し婚姻・・・

夫は妻に内緒で勝手に離婚届を出し、他の女と婚姻届を出した場合にはどうなるのでしょうか?

まず、夫と他の女との関係は、両名とも婚姻意思をもって、婚姻届を出したのですから、一応、有効となります。

夫と妻の離婚届は偽造による離婚届であり、無効となります。

そうなると夫と他の女との結婚は重婚となり、取消うべき婚姻となりますが、取消されるまでは一応有効な結婚として取り扱われます。

(重婚の禁止)
民法第732条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

(不適法な婚姻の取消し)
民法第744条 第731条から第736条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
2 第732条又は第733条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。

重婚となると、刑法上重婚罪となり、刑事事件化して起訴されると、2年以下の懲役となります。

重婚関係にある男女の間にも夫婦として互いに守貞操義務及び同居協力義務を負担しているものといえないこともない。

しかし、重婚関係になることを知って婚姻届をして、故意に刑罰に処せられるべき重婚罪を犯した者については、その結果生じた身分関係に基づく権利により、その者を保護すべきではないものというべきであるから、このような場合においては、民法748条3項を準用ないしこの規定の趣旨からして、故意に重婚関係に入った者は、その相手方に対し、一般に婚姻関係から生ずる権利を主張し得ないものと解するとしました。

(婚姻の取消しの効力)
民法第748条 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
2 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。
3 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。

この見解によると、夫は妻との間にのみ守貞操義務、同居義務を負い、他の女との間にはないことになります。

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離婚後の氏の変更・・・

離婚した場合、婚姻によって氏を改めた方は、当然に婚姻前の氏に復します。

(離婚による復氏等)
民法第767条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

夫婦の一方が死亡したときは、当然に復氏するのではなく、復氏することができるとされているにすぎません。

(生存配偶者の復氏等)
民法第751条 夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。
2 第769条の規定は、前項及び第728条第2項の場合について準用する。

しかし、離婚の場合には、離婚の日から3ヶ月以内に、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができます。

この届けは、「離婚の際に称していた氏を称する届」といいます。

一度、婚氏のの継続使用を選択した以上、婚前の氏に変更するには、家庭裁判所に氏の変更許可の申立てをし、戸籍法107条1項の「止むを得ない事由」があると認められて許可されなければなりません。

戸籍法第107条 やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
2 外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から6箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。
3 前項の規定によつて氏を変更した者が離婚、婚姻の取消し又は配偶者の死亡の日以後にその氏を変更の際に称していた氏に変更しようとするときは、その者は、その日から3箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。
4 第1項の規定は、父又は母が外国人である者(戸籍の筆頭に記載した者又はその配偶者を除く。)でその氏をその父又は母の称している氏に変更しようとするものに準用する。

この「止むを得ない事由」は、名の変更の場合に要求される「正当な事由」よりも厳しく、その人個人の主観的事情では足りず、社会秩序的観点からの客観的な合理性を必要とします。

一般的には、氏名のうち氏の変更は難しいのです。

しかし、離婚に際しての氏の選択は、個人の意思を重視しており、離婚という特殊な状況下の選択でもあるので、止むを得ない事由を、いくらかゆるやかに解釈してもよいとの見解があります。

婚氏継続の届出が、本人の不本意な意思によるものであり、その氏の使用期間が比較的短く、範囲も小さく、改氏しても社会的弊害はほどんどないようなときは、氏変更が許可がされるようです。

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離婚後の子の氏の変更・・・

離婚し妻が子の親権者となり子を引き取る場合、子の氏は夫の戸籍に入ったままで、夫の氏のままなのです。

妻は、当然に婚姻前の氏に復します。

この場合、妻が婚姻前の氏に戻すことを望み、また子の氏も妻と同じ氏に変更したい場合には、必ず家庭裁判所の子の氏の変更許可を得てからしなければなりません。

(子の氏の変更)
民法第791条 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
3 子が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前2項の行為をすることができる。
4 前3項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から1年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。

子は未成年者ですから、手続は自分でできず、親権者が法定代理人として手続することになります。

ただし、子が15歳になれば1人でできます。

子の氏の変更は、親権者の個人的な感情も加わって変更するものであるので、成人した子供に常に望ましいとは限りません。

そこで、子供が20歳になった場合に、もう一度母親と同じ氏で良いか否かを考えさせ、考えた結果、父親と同じ性の方がよいとの結論に達すれば、子供の希望を聞かなければなりません。

20歳になってから1年以内に限り許されます。

もし離婚するときに胎児がいたとすると、その生まれる子供は離婚前の氏である夫の氏を名乗ることになりますので、その場合も子の氏の変更許可の申立てをする必要があります。

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