親権の父母の一方の代理行為・・・
親権は、原則として父母が共同でこれを行使しなければなりませんが、父母のどちらか一方が、共同の名義で、子に代わって代理権を行使したときは、その代理行為は、親権の共同行使としての効力を持ちます。
(父母の一方が共同の名義でした行為の効力)
民法第825条 父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
この場合、親権者の他の一方が、反対の意思を表示したとしても、そのために代理行為が無効となることはありません。
これは、善意の第三者を保護するためのものであって、親権者の一方が共同の名義であるとするものを、第三者が否定することは困難だからです。
しかし、共同親権者の一方が反対していることがはっきりしているときや、悪意でその代理行為を容認したようなときは、その代理行為は無効とされます。
また、無償で子に財産を財産を与える第三者が親権者である父又は母に、その財産を管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとされます。
(第三者が無償で子に与えた財産の管理)
民法第830条 無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。
2 前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によって、その管理者を選任する。
3 第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様とする。
4 第27条から第29条までの規定は、前2項の場合について準用する。
しかし、親権者に子の財産管理権がなく、その財産を子に与えた第三者が他に管理人を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によって、その管理者を選任します。
第三者が管理者を指定したときでも、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合に、第三者からさらに管理者を指定しないときも、家庭裁判所による選任が行なわれます。
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親権者と子の利益相反行為・・・
親権者である父又は母と、その子との利益が相反する行為については、親権者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。
親権者と子の利益が相反する行為というのは、例えば、親権者と子が買主と売主のように一つの行為の当事者となる場合、子の財産に質権、抵当権などを設定する行為などを指します。
このような行為においては、売主は高く売ることによって利益が大きく、買主は安く買うことによって利益を得るというように、両者の利益は相反します。
このように、親権者と子が利益相反の行為を必要とする場合には、親権者は自分が子の代理行為をしてはならず、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求し、家庭裁判所の選任した特別代理人を子の代理人として取引をしなければなりません。
親権者が数人の子に対して親権を行なう場合に、その一人と他の子との利益が相反する行為については、そのどちらか一方のために、特別代理人を選任してもらって、これと取引をしなければなりません。
例えば、長男の所有財産を二男に売り渡すような場合、親権者が長男の代理人となると、二男には特別代理人を立てて、親権者と特別代理人との間で売買契約を結ぶことになります。
親権者と子の利益が相反する行為については、特別代理人が必要となりますが、その選任の申立ては、子の親権者である父母がしなければなりません。
特別代理人選任の申立てがあったときは、家庭裁判所は、審判によって特別代理人を選任します。
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親権者の財産管理債権の消滅時効・・・
親権者とその子との間に、財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅したときから5年間これを行なわないときは、時効にかかって消滅します。
(財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効)
民法第832条 親権を行った者とその子との間に財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅した時から5年間これを行使しないときは、時効によって消滅する。
2 子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において子に法定代理人がないときは、前項の期間は、その子が成年に達し、又は後任の法定代理人が就職した時から起算する。
財産の管理について生じた債権というのは、例えば、親が子の財産を管理していて、善良なる管理者としての注意義務を怠り、その財産が損害を受けたときは、法律的には親は子に対して損害賠償責任を負うことになりますが、債権者である子が、5年間その債権に何もしなければ、時効によって債権は消滅します。
子が成年に達しない間に管理権が消滅した場合に、子に法定代理人がないときは、時効の消滅の期間は、その子が成年に達し、又は法定代理人が就職したときから起算します。
子がまだ成年に達しないのに管理権がなくなることとして、親権又は管理権の喪失宣言、管理辞退などがあります。
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