養子縁組の裁判上の離縁原因・・・
裁判上の離縁は、一定の離縁原因があるときに限り、当事者の一方から離縁の訴えを提起することができるものとされていますが、一定の離縁原因について次の場合をさしています。
(裁判上の離縁)
民法第814条 縁組の当事者の一方は、次に掲げる場合に限り、離縁の訴えを提起することができる。
1.他の一方から悪意て遺棄されたとき。
2.他の一方の生死が3年以上明らかでないとき。
3.その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。
2 第770条第2項の規定は、前項第1号及び第2号に掲げる場合について準用する。
①縁組当事者の他の一方から悪意で遺棄されたとき
②他の一方の生死が3年以上不明のとき
③その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき
この離縁原因のうち、悪意で遺棄されたときというのは、例えば、養親が養子を害する目的で扶養義務をおこなわないこと等です。
養子が老齢又は病弱の養親を害する目的で扶養義務を行なわないことも、悪意で遺棄したことになります。
ただ、養親と養子は同居を義務付けられていませんので、単に別居しているということだけでは悪意の遺棄とはなりません。
他の一方の生死が3年以上明らかでないときも離縁原因となりますが「その他縁組を継続し難い重大な事由」があるときも離縁原因となり、次のような場合です。
①縁組の当事者の一方が他方を侮辱、虐待したとき
②当事者の双方が、性格、宗教、習慣などの違いから融和できないとき
③養親が精神病などのために養子を養育することができないとき
④養親が養子の嫌がる職業や不法行為を強制したとき
例えば、特殊な接客業や売春行為を強制する等
⑤養子が浪費をし、あるいは賭博などの犯罪行為によって養親に物質的精神的な迷惑をかけ、養親の生活を不安若しくは困窮に陥れたとき
これらの離縁原因がある場合には、離縁の訴えを提起することができますが、必ずしもその請求が認められるとは限りません。
裁判所は、あらゆる事情を考慮して、自由に判断することができ、離縁が適当でないと判断したときは、離縁の請求を棄却することもできます。
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養子縁組の離縁と氏・・・
養子縁組の離縁が成立すると、養子縁組によって発生した養親と養子との間の嫡出親子関係がなくなります。
この結果、養子と養親の血族との間の法定血族関係もなくなります。
また、養子縁組後にできた養子の配偶者、それらの子、孫及び配偶者と養親、及びその血族との親族関係も全て終了します。
民法816条では、離縁による復氏について「養子は、離縁によって縁組前の氏に復する」と規定しています。
(離縁による復氏等)
民法第816条 養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
2 縁組の日から7年を経過した後に前項の規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。
離縁した養子の旧戸籍が除かれているようなときは、新戸籍を作ることになります。
また、養子が自分で旧戸籍に入りたくないときも、新しく自分の戸籍を作ることができます。
その方法は、離縁届に新戸籍を作る旨を記載します。
離縁した養子は、縁組前の氏に復すると不利益を受ける場合もあり、縁組前の氏に復することをやめて、家庭裁判所に対して、改氏の許可を求めることもできます。
この改氏の請求は裁判官の自由な判断にもとづいて許可又は却下されることになります。
離縁と氏について、次のような場合があります。
①養親の一方が死亡した後で、生存養親と離縁したときは、死亡養親との親子関係はなんの影響は受けません。
氏が変ることもありません。
このような場合、生存養親と離縁した養子が、縁組前の氏に復したいとときは、死亡養親との離縁の許可申請を家庭裁判所へ提出した後で、その許可をえて旧氏に復し、戸籍も縁組前の戸籍に入るのですが、実務上は、生存養親と離縁した養子は、そのことだけで復氏が認められ、戸籍上も復籍できるとされています。
②養父母が離婚した場合の養子は、養父と別れて養母と暮らしても、養父母が結婚中に称していた共通の氏を称していますが、養父と養子との間に離縁が成立すると、養子は縁組前の氏に戻ります。
養子の氏は、養親の離婚によって影響を受けませんが、養父の氏を称していた養子がその養父と離縁したときは、養子の氏は縁組前の氏に復します。
③この場合、養子と養父との親子関係は解消しても、養母との親子関係は続いています。
そこで、養父と離縁した養子が、養母の氏を称したいときは、家庭裁判所の許可を得て、養母の氏を称することもできます。
④養子の配偶者の氏は、結婚に際して氏を変えていた場合には、養子縁組の解消によって、旧氏に復しません。
婿養子が養親の娘と結婚をして、妻の氏を称していて、婿養子が離縁したようなときは、その婿養子はそのまま妻の氏を称します。
⑤養子がある場合、養子は離縁によって縁組前の氏に復しますが、養子の子は、父とともに父の縁組前の氏を称することにはならず、父が養子のとき称していた氏を称します。
ただし、家庭裁判所の許可を得て、父の氏を称することができます。
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養子縁組の離縁の慰謝料・・・
養子縁組の解消や離縁の場合には、財産分与や慰謝料又は損害賠償の請求ができるかどうかについては、特別の規定はありませんが、調停裁判における事件解決方法としては、婚約の解消や離婚に準じています。
養子縁組が実質的に成立していても、その届出がない限り、法律上は養子縁組ではありませんから、このような状態の養子縁組は、結婚における内縁関係に準じます。
また、届出のない養子縁組は、将来その届出をすることを前提とした、当事者間の縁組の予約とも考えられます。
養子縁組の予約が不当に破棄されたときは、損害賠償が生ずるとされますし、養子縁組が離縁となったときも、財産分与若しくは慰謝料の請求が認められる場合もあります。
養子縁組の場合、不当に縁組の予約を破棄したときは、損害賠償の責任が生じますが、予約破棄の原因の主なものとしては、当事者双方の性格の不一致や、当事者の一方の浪費などがあります。
しかし、不当破棄に対する慰謝料や損害賠償は、婚約の不当破棄における貞操侵害などを対象とした損害賠償とは性格が違いますので、婚約破棄の場合と同じではありません。
養子縁組が成立して嫡出関係が発生すると、養子の相続人としての権利を取得しますが、離縁したときは、遺産相続の期待権を失います。
相続の期待権を侵害されたことを理由として、慰謝料を請求する事例がありますが、養子縁組の予約は財産権を目的とした予約ではありませんから、慰謝料請求権は認められないとした事例があります。
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