親権の懲戒権と職業許可権・・・

親権の懲戒権と職業許可権・・・

民法は、親権者が子の監護教育をおこなうについて、その効果をあげるために必要と認められる範囲で、子に対し懲戒を加えることを認めています。

民法822条は「親権を行なう者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる」と規定しています。

(懲戒)
民法第822条 親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。
2 子を懲戒場に入れる期間は、6箇月以下の範囲内で、家庭裁判所が定める。ただし、この期間は、親権を行う者の請求によって、いつでも短縮することができる。

この規定にいう「懲戒の必要な範囲」には、叱責、減食その他肉体的苦痛を伴う加罰が考えられますが、程度を超えることはできません。

懲戒によって子を傷害したような場合には、親権の濫用であるとされるだけでなく、不法監禁や暴行障害などの疑いで刑事処分を受けることがあります。

次に子の懲戒方法として、家庭裁判所の許可を得て子を懲戒場に入れることができると規定していますが、公の懲戒場としては、教護院や少年院があります。

ただし、子をいつまでも懲戒場に入れておくことは許されません。

民法822条2項は、子を懲戒場に入れる期間は、6ヶ月以下の範囲内で、家庭裁判所がこれを定めると規定し、この期間は親権を行なう者の請求によって、いつでもこれを短縮することができるとしてあります。

また、子は親権者の許可を得なければ、職業を営むことはできません。

(職業の許可)
民法第823条 子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
2 親権を行う者は、第6条第2項の場合には、前項の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

この場合の子が、未成年者を指し、成年に達した子は、自由に商業を選び独立して取引行為をすることが認められます。

親権者から職業を営むことを許可された未成年の子は、その営業に関して成年者とみなされます。

しかし、未成年者にまた営業に堪えない事跡があるようなときは、親権者はこの許可を取り消し、又はこれを制限することができます。

親権者が未成年者の子の営業を取消又は制限したときは、その登記をすることで第三者に対抗することができますが、その登記がないときは、善意の第三者に対して、取消又は制限を対抗することができません。

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親権者の財産管理権・・・

親権者は、子の財産を管理し、またその財産に関する法律行為について、その子を代表します。

(財産の管理及び代表)
民法第824条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

ただし、その子の行為を目的とする債務を生じるような場合には、本人の同意を得なければなりません。

親権者が、この管理権を行使するについては、普通の人が自分の財産を管理するに当たって払うのと同じ程度の注意を払って、子の財産を管理しなくてはなりません。

(財産の管理における注意義務)
民法第827条 親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。

この親権者の注意義務は、善良なる管理人として要求される注意義務ですが、親と子の場合は、他人に対する場合に比べて軽減されると考えられますが、親権者の不注意から子の財産上に甚だしい損害を与えるような場合には、損害賠償責任が生ずることもあるとされています。

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親権者の代理権・・・

親権者は、子の財産の管理権と併せて、その財産に関する法律行為について、その子を代表する権利である代理権を持ちます。

例えば、親権者は、子の所有権名義の不動産を売買することができます。

子の財産を担保にして借金をするような場合には、その子の同意を得なければなりません。

親権者に認められる子の代理権や財産管理権は、子の財産上の法律行為に限られます。

例えば、子の所有名義となっている家の修繕、増改築、などに要する費用を借り入れるために、子の所有土地を担保にすることができます。

また、子の所有する株式や債券などの価額の下落を見越して、親権者が売却し、預金又は他の有利な蓄財方法をとることなどもできます。

ただし、子に意思能力があって、その子が自分の意思で財産を売買するような場合には、親権者は単にその子の法律行為に同意し、又は同意しないことができるだけです。

子が同意しないのに、子を就労させる契約を、親権者が勝手にすることはできません。

労働契約は、子が同意しても、親権者が代理して契約することは許されません。

これは、労働基準法で禁じられています。

子の賃金を親権者が代理して受け取ることも許されません。

また、子が成年に達したときは、親権者は遅滞なく、その管理を計算をしなければなりません。

(財産の管理の計算) 
民法第828条 子が成年に達したときは、親権を行った者は、遅滞なくその管理の計算をしなければならない。ただし、その子の養育及び財産の管理の費用は、その子の財産の収益と相殺したものとみなす。

親権者が今まで行なってきた子の財産管理は、現在どのようになっているかを明にして、これを成年に達した子に報告する義務があります。

この場合、その子の養育及び財産の管理のために要した費用は、その子の財産の収益とこれを相殺したものとみなされます。

子の財産の収益は、親権者が親権を行なうために必要な費用のうちにふくまれ、子に返還しなくてよいとされています。

ただし、無償で子に財産を与える第三者が反対の意思を表示したときは、その財産について相殺は認められません。

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