仮装の離婚・・・
離婚は、終生の共同生活を目的とする男女の性的結合関係を、永久に解消することですから、無条件かつ無期限でなければなりません。
離婚する意思のない夫婦が、合意に基づいて離婚の届出をした場合、その離婚が効力を生ずるかどうかということについて問題になります。
協議離婚は夫婦合意を要件としますが、この場合の合意は離婚する意思の合致ではなく、合意の仮装又は偽装になります。
このような仮装の離婚であっても、強制執行を免れるための仮装離婚を有効とする判例、また、従来どうり生活保護費を受給するための方便としてなされた仮装離婚を有効とする判例があります。
仮装離婚であっても、詐欺、強迫でない限り、認められている判例があります。
仮装離婚であっても、当事者以外の者と結婚した場合は、他方はこれに対抗できません。
この場合、仮装離婚であることを証明して争えば、無効となる可能性はあります。
また、夫婦は共謀して、合意のない離婚届をしたことになり、公正証書原本不実記載の罪に問われる恐れがあります。
また、仮装離婚した者が第三者と結婚したときは、重婚の罪に問われる恐れがあります。
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本人の知らない離婚届・・・
協議上の離婚は、夫婦の合意に基づき、その届出をして、これが受理されたときから効力を生じます。
届出は、当事者及び証人が、口頭又は書面でこれをすることができます。
当事者の一方又は双方が知らないのに、離婚届が提出、受理されたら、その離婚は有効か無効かの問題が起きます。
このような場合でも、市区町村役場は、実質的な審査をしないで、離婚届を受理します。
これに対しては、当事者の一方がその無効の訴えを起こして、無効を主張することしかできなくなります。
本人が知らないのに離婚届が出される場合は次のような場合です。
①夫又は妻が、相手方の同意があったという理由で、勝手に相手方の記名押印して離婚届を提出する。
②当事者の双方は全く知らないのに、第三者が、悪意に基づいて離婚届を提出する。
例えば、夫婦喧嘩などで離婚が当事者間で口にされ、言葉尻をとらえて夫婦の合意があったものとし、一方が離婚届をしてしまうような場合です。
しかし、夫婦喧嘩で興奮した精神状態にある妻が、離婚に同意したと受け取れ言葉を口にしたからとしても、民法に定める夫婦の合意とするとはいえません。
夫が勝手に妻の記名押印をして提出した離婚届は、違法です。
また、離婚は届出のとき当事者の合意が必要であって、届出前に当事者一方が合意の取消しをすれば、協議離婚は成立しないのですから、夫が妻の知らないうちに離婚届を出してしまうということは、無効又は取消の事由となります。
夫婦が知らないのに、悪意の第三者によって離婚届が提出された場合も、夫婦の合意に基づかない離婚の届出ですから、協議離婚は成立しません。
この場合には、家庭裁判所に申立てをして、戸籍の訂正をしてもらいます。
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離婚の取消・・・
協議上の離婚は、届出の形式が整っていれば受理され効力を生じますから、当事者が知らない離婚届が受理されて、形式的に本人の知らない離婚が成立している場合があります。
これについては、その離婚を取消すことができます。
①離婚の取消しをできるのは、離婚の当事者です。
②この請求は、当事者の一方が他方を相手方として、家庭裁判所の審判又は地方裁判所の判決を求め、その審判又は判決に基づいて、戸籍の訂正を求めることになります。
③離婚の当事者の一方が死亡していて、離婚の取消しを請求しようとすうるときは、検察官を相手方とします。
④離婚の取消の請求は、その請求ができる状態になったときから3ヶ月以内に意思表示しないと、その権利を失います。
本人の知らないうちに離婚届が出された場合は、その離婚を知ったときから3ヶ月以内、詐欺や強迫によって離婚に同意させられた場合には、自由に意思表示ができる状態になったときから3ヶ月以内に、取消権を行使しなければ、取消すことができません。
(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)
民法第747条 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
⑤この期間であっても、当事者があらためて離婚の合意をすれば、協議上の離婚が成立したことになります。
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