任意認知の方式・・・

任意認知の方式・・・

認知は戸籍法の規定に従って、その届出をしなければ、認知の効力を生じません。

この届出は、一定事項を記載した書面を、認知者である父がその住所地又は本籍地の市区町村役場又は子の本籍地の役場に提出してします。

認知は遺言によってこれをすることもできます。

遺言は遺言者の死亡によってその効力を生じますから、遺言執行者が認知届けをすることになります。

任意認知は、父が任意にその届出をすることができますが、子が満20歳に達したときは、その子の承諾がなければ認知することができません。

例えば、父が子を認知しようとせず、扶養もしないでいて、その子が成年に達したのち、子が有名人になったり、財産を得たりしたのを知って、その子を認知しようとしても、子の承諾がなければ認知届は受理されません。

父は、胎内にある子でも、認知することができます。

ただし、この場合には、その胎児の母の承諾を得なければなりません。

父又は母は、すでに死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、これを認知することができます。

この場合、死亡した子の直系卑属が成年者であるときは、その承諾が必要となります。

例えば、父Aが子Bを認知しないでいて、その子Bが結婚して子Cを産んだ後に、Bが死亡したとしますと、AとCは法律上他人です。

しかし、AがBを認知しますと、AとBは法律上の父子となり、AとCも法律上の祖父と孫の関係が成立します。

この関係ができることによって、相続、扶養などの権利義務関係が新しく発生するのです。

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子の認知の無効・・・

認知は一定の無効原因があるときは、無効とされます。

次のような原因があるときは、その認知は無効とされます。

①認知が、意思能力のない者によってなされたときは、当然無効とされます。

認知は事実の承認であって、意思表示ではありませんが、それでも認知者に意思能力のあることが必要です。

②認知者の意思によらないで、他人が認知の届出をしたときは、無効です。

これについては説明を要しません。

③認知が事実に反するときは無効です。

認知は血のつながりがあることを承認することですから、血のつながりのない者を認知することは無効となります。

④人違いによる認知

⑤認知者が重複しているとき、二人の父が認知することは、当然無効です。

認知が無効であるときは、子その他の利害関係人は、反対の事実を主張する事ができます。

利害関係人というのは、子の母、認知によって相続権を害される者、扶養義務を負うようになる者、実の父母などです。

無効の認知をした者も、その他の利害関係人に含まれますから、認知無効の訴えを提起することができます。

訴えの相手方は、認知者が原告であるときは子とし、子が原告であるときは認知者、第三者が原告であるときは認知者及び子とします。

認知無効の訴えも、家庭裁判所へ調停の申立てをする調停前置主義が適用されます。

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子の認知の取消・・・

民法では、「認知をした父又は母は、その認知を取消すことができない」と規定しています。

(認知の取消しの禁止)
民法第785条 認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。

認知は、事実上の父がその子との間に法律上の親子関係を発生させる身分法上の法律要件です。

事実上の親子関係があって、その事実を承認したものを任意に取消すことができるとすると、子が不利益を被ります。

親子関係が実在する以上、たとえ認知が詐欺、強迫にもとづくものであってもこれを取消すことはできないとされます。

しかし、民法786条は「子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる」と規定しています。

(認知に対する反対の事実の主張)
民法第786条 子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。

これによると、認知者は認知を取消すことはできないが、子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することによって、認知の取消と同じ効果を得ることができるとされます。

ただし、この場合の主張は、認知の取消の訴えではなく、認知無効の訴えによるべきだとされています。

また、人事訴訟法27条は、「子の否認、認知、その認知の無効若しくは取消」の訴えは、子が普通裁判籍を有する地、あるいは死亡のときはその死亡地の地方裁判所に対して提起することができると規定し、家事審判法23条も認知の取消の調停申立てを認めています。

人事訴訟法第27条  人事訴訟の係属中に原告が死亡した場合には、特別の定めがある場合を除き、当該人事訴訟は、当然に終了する。
2  離婚、嫡出否認又は離縁を目的とする人事訴訟の係属中に被告が死亡した場合には、当該人事訴訟は、前条第二項の規定にかかわらず、当然に終了する。

家事審判法第23条 婚姻又は養子縁組の無効又は取消しに関する事件の調停委員会の調停において、当事者間に合意が成立し無効又は取消しの原因の有無について争いがない場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、当該調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、正当と認めるときは、婚姻又は縁組の無効又は取消しに関し、当該合意に相当する審判をすることができる。
2 前項の規定は、協議上の離婚若しくは離縁の無効若しくは取消し、認知、認知の無効若しくは取消し、民法第773条の規定により父を定めること、嫡出否認又は身分関係の存否の確定に関する事件の調停委員会の調停について準用する。

子その他の利害関係人から、家庭裁判所へ、認知取消の調停申立てができるということになります。

認知に承諾を要する場合には、これを欠いた認知届が受理されて戸籍に記載されたときは、承諾者から認知取消の訴えを提起することが認められます。

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