不良学生の暴力行為の親への損害賠償・・・

不良学生の暴力行為の親への損害賠償・・・

太郎君21歳は、夜、自転車で通行中、16歳の五郎君とぶつかりそうになり、太郎君は「気をつけろ」と怒鳴ったところ、その五郎君と連れ立った不良少年と思われる4人が近寄ってきました。

そして、太郎君はその酒を飲んでいると見られる不良少年5人を見て、元気をなくしてしまい、五郎君にされるがままに暴行を受け、全治1ヵ月半の傷を受けてしまいました。

もちろん、刑事事件になりましたから、五郎君の両親は示談を申し出て70万円の損害賠償金支払ったが、他の4人の少年の親たちは知らん振りでした。

太郎君は、それが不服で4人の親たちに対しても、損害賠償の請求をし、裁判所は、損害賠償として金55万円の支払を命ずる判決を下しました。

裁判所は、加害者の少年たちは、中学3年の時から、酒を飲み、喧嘩をし、相手を傷つけ、これらの事実を親は十分に知っていたにもかかわらず、生活指導をすることを怠っていました。

加害者の少年たちが、太郎君に傷害を負わせた事件も、親が少年たちを十分に生活指導しなかったことと因果関係があるから、監督義務者として、親たちにも賠償責任があるとしたのです。

民法の不法行為責任は、未成年者であっても「行為者の責任を弁識するに足るべき知能」を持っていれば、当の未成年者本人が賠償責任を負うとされ、このときは、親は監督責任者は責任を負わなくなります。

(責任能力)
民法第712条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

暴力学生の行為について、親が責任を負わないというのであれば、事実上、被害者は損害賠償金を取れないことになってしまい、裁判所は、その点で親の監督責任を認めたのです。

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校則が違法として損害賠償・・・

太郎君の通う高校では、三ない原則として、バイクについて、免許を取らない、乗らない、買わない、の原則があります。

しかし、太郎君はバイクの免許を取り、親に頼んでバイクを買って内緒で乗っていたのですが、事故を起してしまい、学校から自主退学を勧告されました。

太郎君は自主退学し、その上で、三ない原則違反等を根拠とする実質上の退学強要は違法であり、精神的損害を受けたとして300万円の慰謝料を高校に請求しましたが、一審判決は太郎君の敗訴として、学校長の措置に違法はないとしました。

「三ない原則」の校則については、最高裁も不合理でないとしています。

学校側は、事故から生徒の生命・身体を守り、非行化を防ぎ、勉強時間を確保する、という教育的な配慮を強調しました。

太郎君側では、バイク購入禁止は財産権の保障に反し、バイク乗車の許否は家庭教育の問題であるから三ない原則は不当な干渉などと、校則の不合理性を指摘しました。

判決は、学校長には校則等によって在学生を規律する包括的権能があり、その内容が、社会通念に照らして著しく不合理でない限り、無効にならないと判断し、三ない原則は著しく不合理でないとしています。

また、無断で普通自動車免許を取得することを禁止し、またパーマを禁止した校則に違反して自主退学を勧告された女子高生が卒業認定などを求めた事件で、最高裁は自主勧告に違反性はないと、原告生徒の上告を棄却しています。

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小学生の階段での衝突事故で損害賠償・・・

太郎君は、小学校6年生で駅の階段を下りていく途中で、前を歩く花子さんに後方から衝突してしまい、花子さんは転倒し、階段を転げ落ちて負傷し、救急車で病院に運ばれました。

花子さんは、6日間会社を休み、その後14日間は治療のために30分の早退を余儀なくされ、長期間にわたって通院しました。

花子さんは、この事故は、太郎君が狭い駅の階段で、ふざけて故意に花子さんに衝突したか、少なくとも花子さんに接触しないように通行すべき義務があったのに、これを怠った過失があり、太郎君はこの事故当時、自分の行為がどのような責任をもたらすかについて「責任の弁識」するに足りる知能を備えていたので、不法行為があると主張しました。

(責任能力)
民法第712条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

また、太郎君の両親は、太郎君が無謀な行為をしないよう普段から親権者として注意する義務があったのに、これを怠ったから、監督義務違反があると主張して、花子さんは、太郎君と両親の3名に対し、255万円の損害賠償を請求しました。

花子さんの主張に対し、太郎君と両親は法的責任を争い、花子さんには2年半ほど前に脊髄腫瘍摘出手術を受けたという既往病歴があって、花子さんの主張する諸症状と花子さんが階段で転倒したこととの間には、相当因果関係はないと反論しました。

裁判所は、花子さんが階段を下りているところに、太郎君からぶつけられて転倒し、そのため頭頸部外傷、左第十一助骨亀裂骨折等の傷害を負ったことを認め、それは太郎君の過失によるものとして、その責任を認めたが、花子さんの既往病歴も考慮して、本件事故と相当因果関係を肯定できる治療期間を3ヶ月と12日分と限定した上で、合計97万円余りの損害賠償義務を太郎君に命じました。

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真夜中の酔っ払いに怪我の損害賠償・・・

太郎さんは、隣家の犬の吠える声で目を覚ましたのですが、窓から外を見ると、酔っ払いが外で犬をけしかていました。

しばらく放っていたのですが、誰も注意しないので、外に出て、酔っ払いに注意し帰るよう言ったのですが、帰らないので、酔っ払いの左ひじをつかみ押しやりました。

突き飛ばしたわけではないのですが、ブロック塀にぶつかり倒れ、動かなくなり、救急車を呼びました。

酔っ払いは、日本人に1000人に2人しかかからない頸椎の病気を持っており、思わぬ転倒で四肢の完全な麻痺を起こす可能性があり、これによって寝たきりになってしまったのです。

太郎さんは、傷害事件の被疑者として調べを受け、民事上は1800万円の損害賠償を請求されました。

本件は、刑事事件も情状酌量されて不起訴となり、民事裁判でも賠償義務はないと判決されました。

裁判所は、酔っ払いの騒ぎの時間帯、続いた時間、しつこさ、周囲の住民に与える迷惑、太郎の説得にも応じない反抗的な態度などを考えると、太郎の行為は酔っ払いの喧騒行為をやめさせる説得方法として、社会的に是認される範囲の適法な行為である評価しました。

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