キャッチボールのサインミス事故の損害賠償・・・

キャッチボールのサインミス事故の損害賠償・・・

山田君と田中君は高校1年生で野球部員、中学時代のバッテリーで、高校に入ってから、同じ高校の野球部に入りました。

ある日、練習前に山田君がマウンドに上がっていたので、田中君はホームベースの後ろにキャッチャーミットを構えました。

しかし、田中君は、硬球でミットを受けるのは初めてでしたので、念のためキャッチャーマスクをつけるために、山田君に「待て」のサインを出したのですが、山田君はカーブのサインだと間違えて、大きく振りかぶりました。

そのことに気づいた田中君は、あわててミットをだしましたが、ボールは大きくカーブしてミットをはじき、田中君の右頬に直撃しました。

田中君は、失明は免れましたが、右目視力が著しく低下し、頬骨と顎骨を骨折し、野球を続けることができなくなりました。

田中君は、事故原因は山田君のサイン見落としと学校側の事故防止対策を怠った注意義務違反にあるとして、山田君と高校を相手取り、治療費と慰謝料など1500万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。

同じような事例で、野球部の練習中、キャッチボールを中断するように求めたのに、そのサインに相手側が気づかず投球し、ボールを右目に当てて大怪我をした当時2年生の元野球部員が、キャッチボール相手と学校を相手取り、約3780万円の賠償を求めた事件で、裁判所は、投球者には、相手の動きの確認と相手との意思疎通を怠った過失があるとして、投球した元部員に約577万円の賠償を命じました。

事故の防止策をとらなかったとされた学校側の過失は認めませんでした。

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友人宅でのガスストーブの中毒死の損害賠償・・・

大学生の花子さんは、和子さんの一人暮らしの部屋に行き、ガスストーブをつけて、夜中に一緒に勉強をしていました。

後日、2人の死亡の第一発見者は和子さんの彼でした。

事故後、警察署の検証の結果として、死亡の原因は酸素不足による不完全燃焼によるガス中毒死で、ストーブには何らの異常はありませんでした。

しかし、花子さんの両親は、失意が酷く、和子さんの両親に法律上の請求ができないか考えていました。

本件事故では、民事上の責任が問題となり、それは、和子さんや両親がその親友を殺害しようとして何らかの細工をしたのでしたら、マンションの管理やガスストーブの手入れを怠っていたとは考えられないからです。

また、和子さんが花子さんを殺したのであれば、殺人罪となり刑事上の責任を負いますが、和子さんも死亡していますから、刑事上の責任はなくなります。

判例では、花子さんか和子さんのいずれかが注意をすれば、本件事故は未然に防げたのであり、花子さんの死亡について花子さんは自分の不注意によって死亡したのだから、和子さんが責任を問われることはないとしています。

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スポーツの練習中の怪我の損害賠償・・・

花子さんと和子さんはママさんバレーの練習に参加しており、花子さんが和子さんにぶつかり、和子さんは右足膝内傷という重い傷害を負ってしまいました。

和子さんは、花子さんを相手取って訴え、この負傷は花子さんの過失に原因するもので、花子さんは他の会員がズボンをはいて練習をしているのに、1人だけセミタイトスカートをはいて、そのままの姿で練習に参加しています。

バレーボールは、狭いコートで数人の競技者が同時に1個のボールを追いつ追われつ、走り回る競技だから、1人が転べば、他の者に不測の事態を引き起こす危険性が高いから、この競技に参加する者には、足の動きが自由なショートパンツかズボンなどをはく義務があります。

それなのに花子さんは、セミタイトスカートをはいて練習に参加し、足の動きが自由でないためにひっくり返り、それによって傷害を与えたのだから、事故による損害を賠償する義務があるとして、治療費、慰謝料、弁護士費用を含めて37万8200円の請求をしました。

裁判所は、一般にスポーツの競技中に生じた加害行為については、それがそのスポーツのルールに著しく反することがなく、かつ通常予測され許容された動作に起因するものであるときは、そのスポーツの競技に参加した者全員がその危険をあらかじめ受忍し加害行為を承諾しているものと解するのが相当であり、このような場合、加害者の行為は違法性を阻却するものというべきである。

被告が練習に参加するに際してセミタイトスカートを着用していたことは、9人制バレーボールの練習に加わる服装としては不適切であり、本件事故の転倒もそれが原因ではないと断定できないのであるが、右服装は練習で許容されているものであり、被告が前衛を不得手としていたとはいえ、飛球をスパイクしたはずみで転倒することは予測される動作ということができるから、被告の行為は違法性を阻却するものといわなければならない。

原告は被告の過失を強調するが、スポーツが許容された行動範囲で行なわれる限り、スポーツの特殊性から離れて過失の有無を論ずるのは適切ではない。

本件の場合、花子さんにスポーツによる不法行為を構成する過失はないとしたのです。

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通勤ラッシュの転倒事故の損害賠償・・・

OLの花子さんは、毎日、私鉄を利用し、通勤ラッシュの中、会社に通っており、ある日、ラッシュで電車を降りる際に、後方の乗客から押し出され、はずみで転倒してしまい、その後続の乗客などに踏まれ、気絶してしまいました。

医師の診断によると下腿骨骨折で2週間の入院、5ヶ月の通院の重症でした。

花子さんは、私鉄に治療費などの補償について私鉄と話し合ったところ、見舞い程度しか支払えないといわれ、裁判を提起しました。

殺人的はラッシュが毎日続いており、ホームに乗務員を配置して、乗客の整理に万全を期すべき注意義務があるのに、これを怠った結果、傷害を受けたものである、主張し、入院治療費、休業補償費などを請求しました。

私鉄側としては、花子さんに気の毒ですが、当日は車内放送で、「順序良く、押し合わずに降車されたい。扉付近のお客様は一度下車した後に乗車してください。」という旨を度々放送しており、扉付近には従業員を8名ほど配置し万全を期していたもので、花子さんの方で、事故を回避する義務があると反論しました。

判決は、私鉄の責任を考えてみると、花子さんの傷害は乗客に押されたものであって私鉄の直接の行為によるものではなく、ホーム上のラッシュの安全対策は現在の交通状態の下ではホームの乗客整理、車内放送などで現在私鉄が行なっている方法しかないとして、花子さんの請求を棄却しました。

この場合、後続した乗客の中の直接、間接に転倒に原因を与えた乗客が花子さんの治療費などの損害を支払うことになりますが、実際には乗客を特定することはできないのです。

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