子供の火遊びの火事の親の責任・・・

子供の火遊びの火事の親の責任・・・

山田さんの6歳の息子が火遊びをしていて、火遊びをしていた隣の倉庫を全焼してしまいました。

倉庫の持ち主は、失火の責任は、6歳の子供であるから、失火の責任は両親にあるとして、損害賠償の訴えを起こしました。

裁判の内容は、失火の原因が息子の火遊びによるかどうかが問題になり、次いで、息子のせいだとすると、失火の責任を問うことが可能かどうかという点について、息子には失火についての責任を弁識する知能がないから、息子には失火責任を問うことはできないとしました。

この場合に、親の監督責任が問われます。

失火の場合の不法行為責任を問う場合、行為者の過失だけでは足りず、重過失が認められる場合でなければなりませんが、本件のような子供の行為についての監督責任を問う場合にも、その監督義務に重過失が必要であるかが問題になります。

判例では、重過失がある場合のみ、監督義務を怠ったとして責任を問うことができるとしています。

判決は、子供の火遊びについての注意は親として基本的なものであり、子供の性格や行動を少し注意していれば、その兆候はわかるはずだから、両親が不在で、子供だけが家にいるような場合には、近所の者とかその他適当な人に監督を依頼するなどのわずかな注意を払えば自宅やその近辺での火遊びなど未然に防ぐことができるとしています。

失火について、親の責任を問うことができるか否かについては、監督について軽過失があるにすぎない場合には免責され、故意又は重過失がある場合に限って責任を負うとしています。

本件では、息子の両親に重過失があったと認定し、監督責任を認めており、それは、普段、火についての注意だけでなく、前日に山田さん方に下宿していた学生が、手紙類を燃やすのを息子が見て関心を持っていたことから、特に息子に注意するなどの対応が必要で、それをしなかったことに重大な過失を認めました。

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隣室のガス事故で中毒の損害賠償・・・

アパートの一室を借りていた女性が、浴槽用ガス湯沸し器をつけっ放しで眠ってしまい、不完全燃焼による一酸化炭素中毒で死んでしまいました。

そのガス事故で、その隣の幼い2人の子供を持つ母親が、重い一酸化炭素中毒にかかりました。

その後、この母親は回復しましたが、ヨチヨチ歩き程度、知能も幼稚園程度以下となり、子供の面倒も見れなくなりました。

そこで、被害者の姉が被害者を禁治産者にして、後見人となり、子供については、姉の夫婦が養父母となり、訴えを起す準備ができました。

訴えの相手は、眠りこけてガスを不完全燃焼させた隣室の女性が過失責任を負うのは明らかですが、死亡してしまい、その相続人は、損害賠償義務を相続しますが、相続人が相続放棄したら誰もいなくなります。

そこで、被害者の姉夫婦は、家主に対し、ガス漏れはアパートの壁、天井の欠陥に基づいたものだから、民法717条によって、損害賠償の責任請求の訴えを起こしました。

(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
民法第717条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前2項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

家主は、アパート自体、建築基準法の要求をみたしているから、民法717条にいう「設置又は保存」に瑕疵がある場合に該当しないと反論しました。

裁判所は、ガス漏れ事故に対応して、各貸し室間は気密性は保つべきであったとし、家主に対して、約1600万円の賠償を命じました。

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袋地通行権の幅員を広げた事例・・・

山田商店は、工場を所有していましたが、袋地で公路に出るためには、田中さんの所有する土地を4トントラックで通らなければなりませんでした。

しかし、田中さんは、通行権を否定し、幅員2メートルの通路しか認めないとして訴えました。

そこで、山田商店は、田中さんに対し、袋地通行権として、常時4トントラックの運行に必要な幅員として、最低4メートルの通路が必要であるとの主張しました。

判決は、次のような理由で、4トントラックの通行に必要な幅員4メートルの袋地通行権を認めました。

①山田商店の所有地は工場敷地として使用されていること

②山田商店は、原材料、製品の搬入、搬出に常時4トントラックの運行が必要であること

③これに対し、田中さんは、その所有地上に建っている建物に居住しているわけではなく、他人に賃貸しているから、山田商店が通路として用いても、山田さんの土地利用にさしたる不利益を与えるものではないこと

この訴訟は、田中さんが山田商店の所有地に隣接する本件土地を買い、現に使用されている幅員4メートルの通行について、通行権として認められる範囲は、幅員2メートルの範囲であり、残りの2メートル部分は通行してはならないと「通行権不存在確認訴訟」として提起されたものです。

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水浸しにした階下の住民の訴え・・・

過失による漏水や失火で隣家に損害を与えることがあります。

この場合、失火による類焼者は、故意又は重大な過失のある失火者に対してしか損害賠償の請求ができません。

しかし、漏水の場合は、単なる過失でも損害賠償ができます。

都心のマンションの7階の住人が、断水中に水道の蛇口を開けたまま寝てしまい、断水解除により漏水し、6階住民の部屋を水浸しにしてしまった事件で、6階住民が約1950万円の損害賠償を7階住民に求めた裁判があります。

裁判所は、断水中に水道が閉まっているかどうか確認しなかった被告住民は無責任のそしりを免れないと述べた上で、漏水したことへの謝罪も拭き取りもしていないとして、慰謝料も含め、約1480万円の支払をするよう7階住民へ命じています。

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