犯人を匿ったキリスト教牧師の罰則・・・

犯人を匿ったキリスト教牧師の罰則・・・

犯人蔵匿罪という罰則があり、これは明らかに罪を犯したとわかる者を匿ったりして、犯人の逮捕を妨害すると、この犯罪が成立します。

(犯人蔵匿等)
刑法第103条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

しかし、この法律には、例外があり、犯人の親族が匿う場合には、罪とはなりません。

(親族による犯罪に関する特例)
刑法第105条 前2条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。

ところで、犯人が日本キリスト教団教会に潜入したのを、その教会の牧師が約1週間もその教会に宿泊させて、犯人を匿った事件があります。

その教会牧師は、犯人蔵匿罪の被告人として起訴されました。

判決は、被告人の所為は、自己を頼ってきた迷える二少年の魂の救済のためになされたものであるから、牧師の牧会活動に該当し、被告人の業務に属するものであったことは明らかである。

ところで、それが正当な業務行為として違法性を阻却するためには、行為そのものが正当な範囲に属することを要するところ、牧会活動は、もともとあまねくキリスト教牧師の職として公認されているところであり、かつその目的は個人の魂への配慮を通じて社会へ奉仕することにあるのであるから、それ自体は公共の福祉に沿うもので、業務そのものの正当性に疑をさしはさむ余地はない。

一方、その行為が正当な牧会活動の範囲に属しており、その手段方法において相当である限り、正当な業務として違法性を阻却する。

刑法は、「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」と規定しており、判決は、ここに根拠を求めてこの牧師を無罪としました。

(正当行為)
刑法第35条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

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入場券でキセル乗車の詐欺罪・・・

駅で入場券だけ買って、無賃乗車した場合、詐欺罪になるどうかが問題になります。

詐欺罪が成立するには、人を騙して財物を騙取するか、財産上不法の利益を受けるかですが、無賃乗車は財物を得るわけではなく、支払うべき運賃を払わないですませるのだから、財産上の不法の利益を受けることになります。

(詐欺)
刑法第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

この場合、騙された被害者が何らかの処分行為をすることが必要とされています。

検察は、無賃乗車の意思を隠して入場券を改札に呈示するのは騙す行為であり、騙された改札係が改札口を通すこと、列車乗務員が輸送することが処分行為であると主張しました。

しかし、裁判所は、改札係が入場させるのは単に駅構内へ入場を認めるだけで、乗車区間の乗車を認めるものではないし、輸送した列車乗務員は、直接騙された事実はないから、騙された被害者が処分行為をしたということにはならず、無罪としました。

一部区間乗車券での典型的なキセル乗車で、詐欺利得罪ば成立した事例もあります。

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公立の教師の父兄からのギフト券が賄賂・・・

公立中学校の教師である山田さんは、中学校の学習指導などの職務に関し、生徒の父兄9名から、12回にわたり、ギフト券12枚合計12万円の賄賂を受け取ったということで起訴されました。

一審では、12回のうち、3回分だけを有罪と認定し、あとの9回分は無罪であると判決しました。

無罪の理由は、9回分のうち3回分は、山田さん又はその妻の家庭教師としての月謝であると認められ、後の6回分は、報酬かもしれないが、卒業時に5000円程度のギフト券を受け取るのは社会通念上違法ではないとしました。

控訴審では、一審と同じ内容でした。

最高裁は、1回分は、被告人が新規に学級担任になった直後の時期において、本件ギフト券の供与は、新しく学級担任の地位についたことから父兄からの慣行的社交儀礼として行なわれたものと考えられ、他の生徒に対するより以上の特段の配慮、便益を期待する意図があったとの疑念を抱かせる特段の事情も認められないとして賄賂とは認定できないとしました。

他の2回分は、いずれも通常の教育指導のほかに、勤務時間外に志望校の選定、学習等に格段のものがあったからこそ、その父兄からギフト券を供与されたものであるから、これもまた賄賂に当たらないとしました。

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無断で写真を撮られ暴行の罰則・・・

山田さんは、無断で山田さんの写真を撮影しようとした田中さんに暴行を加えて、起訴されました。

しかし、裁判所は山田さんを無罪とし、被告人をして、このような行為にはしらせた最大の原因は、被害者らが必要もないのに至近距離から被告人らの写真を撮影した挑発的な行為にあるもので、高度の違法性のある行為ということはできないとしました。

この事件は被告人らの組合活動を、被害者らが証拠して撮影しようとしたことに端を発した事件であり、全体的に見て処罰するに足りるだけの実質的な違法性を具有する可罰的な行為であると断ずることはできないから無罪を言渡すとしています。

判決は、警察官による個人の容貌等の写真撮影は、現に犯罪が行なわれ、若しくは行なわれた直後と認められる場合であって、証拠保全の必要性及び緊急性があり、その撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行なわれるときは被撮影者の同意がなく、また裁判官の令状がなくても許されるとしました。

しかし、一般人は、警察官と異なり犯罪捜査の責務も権限も有しないから、警察官に通報するだけの時間的余裕があるなど他に取るべき手段があるときは、被撮影者の人権侵害を伴いがちな写真撮影行為を自ら行うことは、できる限り慎み、権限を有する官憲の捜査にこれを委ね、他人の撮影が許されるのはごく限られた場合だけだとしました。

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