不動産担保権の実行とは・・・

不動産担保権の実行とは・・・

債権の担保のために不動産に抵当権を設定している場合に、債務者が債務の履行をしないときは、抵当権に基づいて不動産を売却したり、賃料などを優先的に取得して債権の回収をします。

不動産を目的とする担保権である抵当権、不動産先取特権、不動産質権による債権を回収する方法としては、これらの担保権実行が必要となります。

担保権の実行には、担保不動産競売の方法と、担保不動産収益執行の2つの方法があります。

担保不動産競売とは、競売による不動産担保権の実行であり、担保不動産収益執行とは、不動産から生ずる収益を被担保債権の弁済に充てる方法による不動産担保権の実行です。

担保権を実行する以前の債権回収の方法として、物上代位による賃料などの差押があります。

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担保不動産競売とは・・・

抵当権は、その目的となる物の財産価値を把握し、債務が期限に弁済されないときに目的物をお金に換えて、その売却代金から優先的に弁済を受ける権利です。

この換価・弁済を受ける手続を担保不動産競売手続といいます。

債務者が金銭債務を履行しない場合に、その債権が抵当権あるいは根抵当権で担保されているときは、担保不動産競売によって目的不動産を強制的に売却し、債権の強制履行を受けることができます。

抵当権者にとっては、実際は担保不動産競売の申立をするよりも、費用、時間、回収金額の点から、所有者や他の抵当権者の同意のもとに、目的不動産を売却する任意売却をして債権の弁済に充てるほうが得策です。

任意売却では、配当の可能性がない後順位抵当権者との間では、抵当権設定登記抹消料を支払うことにより、後順位の抵当権をはずしてもらうことになります。

後順位抵当権者が莫大な金額を要求してくる場合がありますので、この場合は、買受人からの抵当権消滅請求で対抗することも出来ます。

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担保不動産競売の申立手続とは・・・

◇担保不動産競売の申立

抵当権の実行をするためには、下記のことが必要です。

①抵当権があること

②抵当権で担保される債権であること

③その債権の履行期限が来ていること

④競売手続費用や先順位債権の配当を差し引き後に、申立債権者の配当が見込まれること

抵当権の存在は、下記の文書を提出して証明します。

①確定判決などの謄本

②公証人が作成した公正証書の謄本

③登記事項証明書

抵当権の仮登記では実行の申立はできません。

◇申立費用

①申立印紙

申立印紙は4,000円です。

ただし、手数料は、実行しようとする抵当権の個数により計算されます。

②予納金

不動産鑑定士の鑑定評価料、執行官の現況調査費用、競売手数料に使われる費用は予納しなければなりません。

③予納郵券

執行裁判所が競売手続を進めるための送達、通知などに要する郵便切手です。

④登録免許税

不動産による差押登記の登録免許税として、請求債権額または極度額の1000分の4に相当する金額を納付しなければなりません。

◇申立裁判所

抵当権に基づく担保不動産競売の申立は、競売申立書と添付書類、各種目録を予納金、登録免許税、予納郵券とともに目的不動産の所在地を管轄する地方裁判所に提出して申し立てます。

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担保不動産競売手続の流れとは・・・

①差押と債務者の使用収益

執行を担当する裁判所は、債権者から不動産競売の申立により開始決定をすると、通常、不動産所在地を管轄する法務局に差押登記の嘱託をした後、債務者に開始決定を送達して差押の効力を生じさせます。

差押の効力により、債務者は不動産を処分できなくなりますが、不動産の使用、収益を妨げないので、競売手続の進行中、債務者は対象不動産を自由に使用し、または賃料などの収益を得ることができます。

②物件調査

競売開始決定後、執行裁判所は、執行官に競売物件の形状、占有関係その他の現況調査を命じます。

執行官は調査の結果について現況調査報告書を作成します。

これをもとに裁判所書記官は、買受人が売却により効力を失わず引き受けるべきことになる権利、賃借権や法定地上権の有無等を記載した物件明細書を作成します。

裁判所は、不動産の売却基準価格を決定するために不動産鑑定士である評価人に評価書を作成させます。

現況調査報告書、物件明細書、評価書の写しが、裁判所内の専用の閲覧室に事件番号の見出しを付して、入札期日の1週間前までに備えられます。

③売却

ほとんどの裁判所で期間入札の方法が採用されています。

入札期間は1週間以上、開札期間は入札期間満了後1週間以内に定められますが、買受申出があるまでは、債権者は買受人等の同意を要せず、自由に取下げができます。

④引渡し

買受人は、代金納付期日に裁判所に代金を納付することによって不動産の所有権を取得します。

買受人は、原則として代金納付日から半年以内に、占有者に対し引渡命令の発令を求めることができます。

引渡命令に対しては、執行抗告が可能なため、買受人はこの間は執行に着手することができません。

執行抗告により書類が高裁に送られると、早くても2ヶ月間は強制執行ができないことになりますが、原審却下も出るようです。

引渡命令が確定すると、買受人は、執行官に不動産の明渡しの強制執行の申立をします。

執行官は、申立人またはその代理人と日時を打ち合わせて現場に行き、占有状態を確認し、引渡命令の名宛人である占有者に対して明渡しの催告をします。

占有者が不在であれば、鍵職人を同行させて開錠させます。

1ヵ月後くらいに執行を断行することになりますが、申立人は、それまでに荷物の運び出しや保管場所、鍵の取替えなどの手配をしなければなりません。

当事者が死亡した場合の担保不動産競売とは・・・

①債務者死亡の場合の対処方法

債務の相続人を債務者と表示して申立をします。

②所有者死亡の場合の対処法

申立債権者は、競売申立前に、現在の所有者たる相続人に代位して相続登記をなし、その相続人を所有者と表示して競売の申立をしなければなりません。

これは差押記入の嘱託登記ができないからです。

東京地裁の運用では、所有者が被相続人のままとなっている不動産登記事項証明書の提出による申立を受理し、受理証明申請をさせ、その書類を代位原因証書としてすみやかに代位による相続登記を申請し、相続登記を経由した登記事項証明書を提出させ、先になされた競売申立に基づき競売開始を決定し、差押記入登記の嘱託をしています。

③債務者・所有者の相続人が不明の場合の対処法

申立債権者はあらかじめ利害関係人として家庭裁判所に相続財産管理人選任の審判申立をしなければなりません。

④法人の所有者・債務者の代表者の死亡

申立の際、同時に競売申立のためだけの特別代理人の選任を求めます。

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