不動産賃借権の取得時効とは・・・

不動産賃借権の取得時効とは・・・

民法162条、163条をみると、財産権は全て取得時効の対象になりそうですが、占有をともなう財産権でなければなりません。

他人の物を占有しているので、他主占有といいます。

不動産賃借権も占有をともなう場合には、取得時効の対象になりますが、問題はその態様になります。

判例は「土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは民法163条によって土地賃借権の時効取得ができる」旨を判示しており、別の判例は賃料の継続的支払を賃借権の取得時効の要件としています。

農地に場合は、10年も20年も経過してしまうことがあります。

農地の所有権移転や賃借権の設定には県知事ないし農業委員会の許可が必要ですが、時効による所有権や賃借権の取得の場合には、農地法上の許可が必要なのでしょうか?

古い判例では許可不要としていますが、現在では農地取得には知事等の許可が必要なことは周知ですから、10年占有していても「善意・無過失」といえないし、10年の時効成立を否定した例もあります。

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公共用物の取得時効とは・・・

公共用物とは、道路、河川、公園等を指します。

国、県、市町村等が所有している物は公物ですが、その中で公用の指定を受けたものが公共用物です。

私道のように所有権は私人にありますが、道路指定を受ける等の公用負担を受けている物も入ります。

公共用物は原則として取得時効の対象になりません。

しかし、官庁の意思表示による公用廃止処分があったときは取得時効の対象になります。

明確な公用廃止処分がなくても、長年、事実上、公の目的に使用されることなく放置されていた場合、黙示の公用廃止があったとみられる場合です。

判例は「公共用財産が、長い間、事実上公の目的に供されることなく放置され、公共用物としての機能等を全く喪失し、もはや公共用財産として維持する理由もなくなったときは、その公共用財産については、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の成立を妨げない」としました。

民間人の所有物につき、国や市町村等の公共団体が時効で取得することはできます。

国の物は時効で取得できませんが、国は時効で国民の物を取得できるのです。

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取得時効進行中の相続とは・・・

被相続人がある土地を自分の所有物と思って8年間使用してきたとします。

その相続人がさらに引き続き5年間使用してきたとします。

この場合、取得時効は成立するのでしょうか?

民法187条には「①占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有も併せて主張することができる。②前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する」と規定されているのですが、ここでいう「占有者の承継人」に相続人がなるかが、問題です。

古い判例は、相続人は被相続人の占有それ自体を承継する者であり、相続人が自分の占有だけを切り離して独自の主張をすることはできず、民法187条の占有者の承継人の中に相続人は含まないとしました。

その後、判例は変更され、「民法187条は相続のごとき包括承継にも適用され、相続人はその選択に従い自己の占有のみを主張し又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張する事ができる」としました。

ですので、相続人は被相続人の占有8年と自分の占有5年とを合計して13年の占有を主張できるのですが、この場合には、もし被相続人が占有開始時に悪意であったとすると、相続人もその瑕疵を承継しますから、善意10年の取得時効は成立しません。

被相続人が占有開始時に善意であったときのみ相続人はこの土地の所有権を時効で取得します。

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