特別養子縁組成立の効果・・・
特別養子縁組の成立によって、養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、婚姻障害を除いて終了し、養親だけが養子の法律上の父母となります。
民法第817条の9
養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。ただし、第817条の3第2項ただし書に規定する他の一方及びその血族との親族関係については、この限りでない。
ただし、夫婦の一方が他方の嫡出子を特別養子とした場合には、その養子と他方配偶者及びその血族との親族関係は終了しません。
普通養子縁組に関する規定は、特別養子縁組の目的に反しないものについては適用されます。
特別養子は、普通養子と同様に、縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得し、養親の氏を称し、かつ、養親の親権に服することになります。
また、特別養子は、養親の血族との間に親族関係を生じます。
民法第809条
養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
民法第810条
養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。
民法第818条
1.成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2.子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3.親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
民法第727条
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
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特別養子縁組の判例・・・
①子が生理上の父から認知を受けないまま特別養子となった場合、生理上の父は、この子を縁組後、離縁前に認知することはできません。
②夫の嫡出推定を受ける子が第三者の特別養子になった場合、この子に対する嫡出否認の訴えは認められません。
③夫の推定を受けないが、戸籍上、夫の嫡出子として届け出られている子が、第三者の特別養子になった後に親子関係不存在の訴えが認められるかについて、特別養子縁組前の父子関係不存在という過去の法律関係の不存在を確認すべき特段の事情のあるときに限って確認の利益があるとされます。
この特段の事情の例として、実父母の子と特別養子となった子との婚姻の届出が、戸籍上両者が縁組前に兄弟姉妹の関係にあるものとされていたことを理由に不受理とされたときに、両者の間に婚姻障害のないことを確定する場合が考えられるとされますが、親子関係において婚姻障害が問題となるのは法律上の親子関係についてであり、生理上の父から認知を受けないまま特別養子となった子をこの父が認知することができない以上確認の利益があるとはいえないから親子関係不存在確認の訴えは認められないとした事例がありました。
しかし、この判決は、上告審で、子を第三者の特別養子とする審判が確定した場合には、原則として、子の血縁上の父が戸籍上の父と子の間の親子関係不存在確認を求める訴えの利益は消滅するが、この審判に準再審の事由があると認められるときは、この訴えの利益は失われないとするのが相当である。
子の血縁上の父であると主張する甲が戸籍上の父と子との間の親子関係不存在確認を求める訴えを提起するなどしており、子を第三者の特別養子とする審判を担当する審判官も甲の上申を受けてそのことを知っていたにもかかわらず、この訴えの前に子を第三者の特別養子とする審判がされた場合において、甲が子の血縁上の父であるときは、甲について民法817条の6但し書きに該当するなどの特段の事情のない限り、右審判には、準再審の事由があるとして、差し戻されました。
民法第817条の6
特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。
第二次控訴審判決も、上告人には民法817条の6但し書きに該当する事由があり、本件審判に準再審の事由はないから、訴えの利益は消滅したと判断しました。
しかし、上告審は、原審の認定事実をもってしては、いまだ上告人が被上告人を虐待し又は悪意で遺棄したなどの但し書きに該当することが明白であるとすべき事由が存在するとはいえないから、これのみをもって直ちに本件の訴えの利益を否定するのは相当といえず、これと異なる見解にたって本件の訴えの利益を否定した原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして原審に差し戻しました。
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養子縁組無効調停・・・
養子縁組無効の調停申立は、形式上適式な養子縁組が受理されていますが、当事者の一方又は双方に縁組意思がないため、当初から法律上の養子縁組としての効力がないことの確認を求めるものです。
養子縁組の無効原因は、「人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき」に限ります。
民法第802条
縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
1.人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。
2.当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第799条において準用する第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない。
養親が中等度の精神薄弱者であり、養子縁組につき合理的判断を期待できないような心神の状態であったから養親に縁組意思が欠如しているとして養子縁組の無効を確認した事例があります。
民法802条に基づく養子縁組無効の申立は、特殊調停事項です。
この申立は本質的には訴訟事項であって調停前置の対象となります。
①申立人
・養親又は養子です。
代諾縁組で、養子が15歳未満の場合は養子縁組無効後にその法定代理人となるべき者
・法律上の利益を有する第三者です。
②相手方
・養親が申立人のときは養子です。
・養子が申立人のときは養親です。
・第三者が申立人の場合は養親及び養子、その一部が死亡しているときは生存者だけです。
③管轄
相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。
④添付書類
申立人・養親・養子の戸籍謄本。
養子縁組届出書の記載事項証明書。
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養子縁組無効調停の審判手続・・・
当事者間に縁組無効の合意が成立し、その無効の原因について争いがない場合、家庭裁判所は、さらに必要な事実を調査した上、調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、その合意を正当と認めるときに縁組無効の審判を行ないます。
縁組無効の審判は、適法な異議の申立がないとき、また、異議の申立を却下する審判が確定したときは、確定判決と同一の効力を有します。
しかも、その効力は第三者に及ぶ対世的効力を有します。
利害関係人は家庭裁判所に対し、当事者が縁組無効の審判の告知を受けた日から2週間以内に異議の申立をすることができます。
異議の申立があれば、審判は当然にその効力を失います。
異議申立人は、異議の申立を却下する審判に対して即時抗告をすることができます。
異議の申立によって縁組無効の審判が失効した場合に、当事者がその旨の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起したときは、調停の申立の時に、その訴えがあったものとみなされます。
調停委員は、事件が性質上調停するのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的で調停の申立をしたと認めるときは、調停をしないことができます。
調停をしない措置に対して、不服申立を許す規定はないので、即時抗告は認められません。
民事調停でも調停をしない措置につき同じ規定がありますが、この措置に対して不服申立は認められません。
調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込がない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合において、家庭裁判所が審判をしないときは、調停が成立しないものとして、事件を終了させることができます。
調停不成立として事件を終了させる処分は審判ではないので、これに対して即時抗告や非訟事件手続法による抗告をすることができません。
また、裁判所書記官が当事者に対して行なう通知も、調停手続における審判に該当しないので、同様に解されます。
調停委員会が、調停を不成立としたときは、事件は終了し、この紛争は訴訟手続で解決することになります。
調停が不成立に終わると時効中断の効力を生じないことになりますが、申立人は調停不成立の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起したときは、調停申立の時に、その訴えの提起があったものとみなされます。
調停が不成立によって終了した場合、民事調停法19条に定める期間内に訴えを提起しなかってときは、調停申立に時効中断の効力は認められないと解されていましたが、この場合においても、1ヶ月以内に訴えを提起したときは、民法151条の類推適用により、時効中断の効力を生ずるとされました。
民事調停法19条に相当するのは家事審判法26条2項ですから、家事調停についても民事調停と同様に解することができます。
民事調停法第19条
第14条(第15条において準用する場合を含む。)の規定により事件が終了し、又は前条第2項の規定により決定が効力を失つた場合において、申立人がその旨の通知を受けた日から二週間以内に調停の目的となつた請求について訴を提起したときは、調停の申立の時に、その訴の提起があつたものとみなす。
民法第151条
和解の申立て又は民事調停法(昭和26年法律第222号)若しくは家事審判法(昭和22年法律第152号)による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、一箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。
裁判所書記官は、縁組無効の審判が確定した場合は当事者の本籍地の戸籍事務管掌者に対し、当事者間に合意が成立せず又は合意は成立したが家庭裁判所が縁組無効の審判をしない場合に事件が終了したとき又は異議の申立によってその審判が失効した場合には当事者に対し、それぞれ遅滞なくその旨を通知しなければなりません。
縁組無効の審判が確定したときは、申立人は、その審判が確定した日から1ヶ月以内に、審判書の謄本及び確定証明書を添付して、戸籍訂正の申請を当事者の本籍地又は届出人の所在地にしなければなりません。
申立人が申請をしないときは、相手方が戸籍訂正の申請をすることができます。
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