後見人と被後見人との養子縁組・・・
後見人が被後見人を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
後見人の任務が終了した後、まだ管理の計算が終わらない間も同様とされています。
民法第794条
後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。後見人の任務が終了した後、まだその管理の計算が終わらない間も、同様とする。
後見人が未成年被後見人を養子とするときは、未成年養子縁組と後見養子縁組につき家庭裁判所の許可を得ることになります。
後見人が15歳未満の未成年被後見人を養子とする場合は、利益相反行為(*)になるので、未成年後見監督人があればその者が、ないときは特別代理人を選任して縁組の承諾をするとされています。
(*)利益相反行為 (りえきそうはんこうい)とは、ある行為により、一方の利益になると同時に、他方への不利益になる行為である。
民法第860条
第826条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。
民法第826条
1. 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2. 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
成年後見人が縁組をするには、その成年後見人の同意は不要とされています。
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未成年者養子縁組許可の申立手続・・・
民法798条に基づく未成年者養子縁組許可の申立は、甲類審判事項です。
①申立権者
養親となる者です。
②管轄
養子となる者の住所地の家庭裁判所です。
③添付書類
養親・未成年又は被後見人・代諾者の戸籍謄本
未成年者又は被後見人の住民票
④審判手続
養子縁組の許可の審理は、その許可基準である縁組が子の福祉に合致するかどうかについて行なわれます。
許可を否定した審判例に次のものがあります。
・子が将来芸子となることが運命付けられる恐れのある場合
・家名の維持・承継のみを目的とする場合
・養親の老後の扶養・世話を目的とする場合
・子の氏の変更のみを目的とする場合
・学区制潜脱を目的とする場合
・非嫡出子に嫡出子の身分を得させるため実体の伴わない単なる戸籍上の操作のみを目的とする場合
⑤審判
審理の結果、許可又は却下の審判がなされます。
許可の審判は、申立人に告知されることにより効力を生じます。
許可審判に対しては不服の申立方法はありませんが、却下審判に対して申立人は即時抗告をすることができます。
即時抗告の期間は、申立人が審判の告知を受けた日から2週間です。
許可のない養子縁組の届出は受理されません。
民法第800条
縁組の届出は、その縁組が第792条から前条までの規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
戸籍法第38条
1. 届出事件について父母その他の者の同意又は承諾を必要とするときは、届書にその同意又は承諾を証する書面を添附しなければならない。但し、同意又は承諾をした者に、届書にその旨を附記させて、署名させ、印をおさせるだけで足りる。
2. 届出事件について裁判又は官庁の許可を必要とするときは、届書に裁判又は許可書の謄本を添附しなければならない。
誤って受理された場合は、養子・養子の実方の親族又は養子に代わって縁組の承諾をした者から、裁判所に養子縁組の取消を請求することができます。
ただし、養子が、成年に達した後6ヶ月を経過したとき、又は追認したときは、養子縁組の取消を請求することができなくなります。
民法第807条
第798条の規定に違反した縁組は、養子、その実方の親族又は養子に代わって縁組の承諾をした者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、養子が、成年に達した後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
民法第798条
未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。
養子縁組許可の審判がされても、この審判によって直ちに縁組の効果を生ずるものではなく、縁組は、許可審判の謄本を添付して養子縁組届をし、この届出によって効力を生じます。
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養子縁組の渉外事件・・・
①コロンビア
申立人(国籍日本)とその配偶者の嫡出子(国籍コロンビア 20歳)間の養子縁組事件につき、法適用通則法(当時、「法例」以下全て同じ。)30条1項により、養親については日本国民法、養子についてはコロンビア共和国民法をそれぞれ適用した上、コロンビア国法上要求されている裁判所による決定についてはわが国の家庭裁判所による許可審判をもって代えうるとして、養子縁組を許可した事例があります。
法適用通則法第三十条
1.子は、準正の要件である事実が完成した当時における父若しくは母又は子の本国法により準正が成立するときは、嫡出子の身分を取得する。
2.前項に規定する者が準正の要件である事実の完成前に死亡したときは、その死亡の当時におけるその者の本国法を同項のその者の本国法とみなす。
②カナダ ブリティッシュ・コロンビア州
申立人夫(国籍カナダ)、申立人妻(国籍日本)がカナダにおいて里親として養育中の子(国籍日本 1歳)の養子縁組許可事件につき、養子となる者の常居所地であるわが国が国際裁判管轄権を有するとした上、申立人夫の準拠法であるカナダ国ブリティッシュ・コロンビア州法が求めている監督官の調査及びその報告書については、日本国の家庭裁判所調査官による調査及び調査報告書をもって代えうるとして、養子縁組を許可した事例があります。
③アメリカ合衆国
・イリノイ州
日本人夫とアメリカ人妻の連れ子(イリノイ州、11歳)間の養子縁組許可事件において、法適用通則法31条により準拠法となる養親の本国法(日本民法)によれば家庭裁判所の許可を要しないが、同条により準拠法となる養子の本国法(イリノイ州法)が裁判所の決定を要件としてることから、その決定に代わるものとして養子縁組を許可する審判をした事例があります。
法適用通則法第三十一条
1.養子縁組は、縁組の当時における養親となるべき者の本国法による。この場合において、養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。
2.養子とその実方の血族との親族関係の終了及び離縁は、前項前段の規定により適用すべき法による。
・ワシントン州
申立人夫、妻(いずれもアメリカ国籍 ワシントン州)と未成年者(国籍日本)間の養子縁組許可事件において、ワシントン州法によれば、養子と実父母との関係が断絶する事から、わが国における特別養子の要件の充足を審査した上、特別養子の主文(未成年者を申立人らの養子とする)をもって申立を認めた事例があります。
④フィリピン
・申立人夫(国籍日本)、申立人妻(国籍フィリピン)と事件本人(国籍フィリピン)間の養子縁組許可事件において、法適用通則法31条に従い日本人夫と事件本人との関係について適用される日本法と、フィリピン人妻と事件本人との関係について適用されるフィリピン法とは、養子縁組の形式的要件を異にするが、法適用通則法34条によれば養子縁組をする場所である日本の方式によることができるので、フィリピン人妻と事件本人との関係についても戸籍管掌者への届出によることができ、これによってフィリピン法が要求する夫婦共同縁組の要件を充足すると解した事例があります。
法適用通則法第三十四条
1.第二十五条から前条までに規定する親族関係についての法律行為の方式は、当該法律行為の成立について適用すべき法による。
2.前項の規定にかかわらず、行為地法に適合する方式は、有効とする。
・申立人夫(国籍日本)とその妻(国籍フィリピン)の連れ子(国籍フィリピン、未成年者)間の養子縁組を許可した事例があります。
・申立人夫(国籍日本)、妻(国籍フィリピン)と妻の非嫡出子(国籍フィリピン、未成年者)間の養子縁組許可事件において、法適用通則法31条によりフィリピン児童少年福祉法典により裁判所の養子決定を要するが、その決定を求めることが困難な特別な事情があるとして、例外的にわが国家庭裁判所の養子縁組許可の審判をもってこれらの要件を満たすものと解するのが相当であるとして養子縁組許可審判をした事例があります。
⑤韓国
申立人夫(国籍日本・韓国人妻がある)と未成年者(国籍韓国 15歳未満)間の養子縁組許可事件において、わが国が国際裁判管轄権を有するとした上で、準拠法である日本法により必要的共同縁組であるとし、養親の本国法の適用については、養父子関係と養母子関係を分離して、それぞれの本国法を各別に適用し、申立人に対し、妻とともに未成年者を養子とすることを許可した事例があります。
⑥中華民国
申立人(国籍日本)と事件本人(国籍中国(台湾) 成人)間の養子縁組事件につき、中華民国民法によれば、成年者を養子にする場合も法院の認可を必要とするところ、この要件は法適用通則法31条にいう保護要件に該当すると解し、わが国の家庭裁判所の許可の審判をもって代えうるとして、養子縁組許可審判をした事例があります。
⑦中国
申立人夫(国籍日本)、申立人妻(国籍中国)と2名の未成年者(国籍日本)間の養子縁組許可事件につき、養親は1名の子女のみと縁組することができるとする中国養子縁組法の適用を法適用通則法42条により排除して養子縁組を許可した事例があります。
法適用通則法第四十二条
外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない。
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特別養子縁組とは・・・
特別養子縁組とは、実方の血族との親族関係が終了する縁組をいい、家庭裁判所は、次の要件があるときは、養親となる者の請求によりその縁組を成立させることができます。
①養親となる者は配偶者のある者であって、夫婦の嫡出子を特別養子をする場合を除いて、その双方が養親となること
②養親の一方の年齢が25歳、他方は20歳に達していること
③原則として、養子となる者の年齢が申立時に6歳未満であること
④原則として養子の実父母の同意があること
⑤実父母による監護が著しく困難又は不適当であることその他特別な事情がある場合において、子の利益のため特に必要であると認める事情のあること
民法第817条の2
1.家庭裁判所は、次条から第817条の7までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
2.前項に規定する請求をするには、第794条又は第798条の許可を得ることを要しない。
民法第817条の3
1.養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。
2.夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合は、この限りでない。
民法第817条の4
25歳に達しない者は、養親となることができない。ただし、養親となる夫婦の一方が25歳に達していない場合においても、その者が20歳に達しているときは、この限りでない。
民法第817条の5
第817条の2に規定する請求の時に6歳に達している者は、養子となることができない。ただし、その者が8歳未満であって6歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は、この限りでない。
民法第817条の6
特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。
民法第817条の7
特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。
特別養子縁組に関する処分の申立をする場合には、被後見人縁組の許可又は未成年養子縁組の許可を得る必要はありません。
民法第794条
後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。後見人の任務が終了した後、まだその管理の計算が終わらない間も、同様とする。
民法第798条
未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。
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