調停前の仮の処分の申立・・・

調停前の仮の処分の申立・・・

調停委員会は、調停前に、調停のために必要であると認める処分を命ずることができます。

この仮の処分は、調停が成立するまでの間に、相手方やその他の利害関係人の行為によって財産が売却されたり、隠匿されたりして、せっかくの調停が成立しても実効のない状態になる危険がある場合に、その危険を未然に防止するための措置です。

①仮の処分は、調停委員会がその職権に基づいて命じます。

当事者の申立を必要としませんが、当事者は調停委員会の職権の発動を促す趣旨の申立をすることができます。

②管轄

当該調停事件の係属している家庭裁判所です。

③添付書類

不動産登記簿謄本など申立の実情を示す資料

④審理手続

調停委員会が仮の処分をするには、「調停前」すなわち調停の申立があった後その調停の成否が確定し、手続が終了する前に、「調停のために必要であると認める場合」でなければなりません。

この「調停のために必要であると認める処分」については、民事調停法に「現状の変更又は物の処分の禁止その他調停の内容たる事項の実現を不能にし又は著しく困難ならしめる行為の排除」を命じうると規定しているのと同様に解して差し支えないとされています。

また、この処分をする場合には、同時に、その違反に対する法律上の制裁、すなわち仮の処分を命ぜられた当事者又は参加人が正当な理由がなく、仮の処分に従わないときは、これを10万円以下の過料に処する旨を告知しなければなりません。

仮の処分は、執行力を有しません。

執行力を有しないとは、給付義務を強制的に実現する狭義の執行力だけでなく、関係人間に仮の権利関係を定める形成力その他一切の強制力をも有しないことをいうと解されています。

この仮の処分に違反してなされた行為は、私法上有効です。

仮の処分は、特に終期を定めない限り、調停事件の係属中効力を保有します。

調停事件の終了と同時に当然効力を失うことになります。

仮の処分に対しては、不服申立は認められていません。

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共同相続人間の共有物の原状回復・・・

共有物の一部が他の共有者の同意を得ることなく共有物を損傷しあるいはこれを改変するなど共有物に変更を加える行為をしている場合には、他の共有者は、各自の共有持分権に基づいて、右行為の全部の禁止を求めることができるだけでなく、共有物を現状に復することが不能であるなどの特段の事情がある場合を除き、右行為により生じた結果を除去して共有物を現状に復させることを求めることができます。

(共有物の使用)
民法第249条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

(共有持分の割合の推定)
民法第250条 各共有者の持分は、相等しいものと推定する。

(共有物の変更)
民法第251条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

(共有物の管理)
民法第252条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

(共有物に関する負担)
民法第253条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2 共有者が1年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。

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共同相続人の土地使用者へ地代請求・・・

被相続人甲の死亡による相続人乙の持分を相続したAは、被相続人甲の死亡に伴い本件各土地の持分を相続により取得した共有者である丙丁に対して本件各土地の地上建物の収去及び本件各土地の明渡しを当然には請求することはできず、丙に本件各土地の登記済権利証の引渡しなど請求することはできないが、丙丁が共有物である本件各土地の各一部を単独で占有することができる権原につき特段の主張、立証のない本件においては、Aは、右占有者によりAの持分に応じた使用が妨げられているとして、丙丁に対して、持分割合に応じて占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができると解すべきであるから、Aは、甲の死亡によるその持分の相続取得の主張をしていないが、原審としては、前記各事実を当事者の主張に基づいて確定した以上は、適切に釈明権を行使するなどした上でこれらを斟酌し、Aの請求の一部を認容すべきかどうかについて審理判断すべきであるとされています。

(地代)
民法第266条 第274条から第276条までの規定は、地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する。
2 地代については、前項に規定するもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。

(賃貸借)
民法第601条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

(短期賃貸借)
民法第602条 処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
1.樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年
2.前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年
3.建物の賃貸借 3年
4.動産の賃貸借 6箇月

(短期賃貸借の更新)
民法第603条 前条に定める期間は、更新することができる。ただし、その期間満了前、土地については1年以内、建物については3箇月以内、動産については1箇月以内に、その更新をしなければならない。

(賃貸借の存続期間)
民法第604条 賃貸借の存続期間は、20年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、20年とする。
2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から20年を超えることができない。

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共同相続人の株式の処分・・・

遺産分割前に共同相続人甲が他の相続人に無断で相続財産である株式を証券会社を通して売却し、買主がこれを善意取得した場合、他の相続人の甲に対する損害賠償請求訴訟につき、遺産分割手続を経ることなしに、これを認めると、遺産分割手続において寄与分を理由に具体的相続分に変更があった場合などに調整が困難になるなどの点は、右訴訟を審理判断することの妨げの決定的理由にならないとして、これを肯定した事例があります。

(寄与分)
民法第904条の2 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。

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