負担付贈与の受益者・・・

負担付贈与の受益者・・・

負担の利益を受ける者は、贈与者自身であることが通常ですが、特定の第三者あるいは不特定多数の者でもよいとされています。

受贈者が、負担を履行しないときは、贈与者は受贈者に対して、負担の履行を請求することができます。

また、贈与契約の中に、第三者のためにする契約が結ばれていれば、第三者が受贈者に対して直接負担の履行を請求することができます。

贈与者又は第三者が死亡したときは、その相続人が請求することができます。

民法第537条

1. 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2. 前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。

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負担付贈与の撤回・・・

負担付贈与については、贈与の規定が準用されますから、書面によらない負担付贈与の各当事者は、これを撤回することができます。

民法第550条

書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

書面によらない負担付贈与契約に基づき当事者の一方が債務を履行したときは、書面によらない贈与であることを理由にこれを撤回することはできないとされます。

負担の履行を怠っている者が、第三者の場合も、その撤回は受贈者に対してします。

受贈者が死亡した場合、負担付贈与撤回は、受贈者の相続人に対してします。

負担付贈与が、受贈者夫婦家族の長年の貢献に対する報酬の趣旨も含まれていること、受贈者本人のみならずその家族の生活維持を目的としていること、負担の不履行の原因が受贈者の相続人にのみの責任に帰すべきではないことを理由に全面的に贈与の契約の解除を認めるのは相当ではなく、解除の効力が生じるのは贈与物が負担の履行に利用されるべき範囲を限度として、双方の今後の生活を考慮して決定すべきであるとした事例があります。

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負担付贈与の双務契約の準用・・・

負担付贈与の両当事者の債務は、相互に対価関係に立つものではありません。

しかし、実質的には、負担の限度では両者は売買と同じ対価関係にあるとみられます。

そこで、双務契約に関する規定が準用されることになります。

贈与者は負担の限度で、売主と同じ担保責任を負わなければなりません。

民法第551条

1. 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
2. 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。

負担の限度とは、贈与の目的の価額がその瑕疵又は不存在のため負担の額に足りない場合に、受贈者に負担の減額請求権、契約解除権、損害賠償請求権を与える趣旨と解されます。

双務契約に関する同時履行の抗弁権、危険負担、契約解除に関する規定が準用されます。

しかし、負担付贈与では、実際にはどちらか一方が先に履行されますから、同時履行の抗弁権はありません。

危険負担が問題となる場合も少ないとされています。

また、受贈者がその負担である義務の履行を怠るときは、贈与者は贈与契約を解除できると解されています。

民法第533条

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

民法第534条

1. 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2. 不特定物に関する契約については、第401条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。

民法第535条

1. 前条の規定は、停止条件付双務契約の目的物が条件の成否が未定である間に滅失した場合には、適用しない。
2. 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰することができない事由によって損傷したときは、その損傷は、債権者の負担に帰する。
3. 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰すべき事由によって損傷した場合において、条件が成就したときは、債権者は、その選択に従い、契約の履行の請求又は解除権の行使をすることができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。

民法第536条

1. 前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
2. 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

民法第540条

1.契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
2. 前項の意思表示は、撤回することができない。

民法第541条

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

民法第542条

契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。

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負担付贈与の減殺・・・

贈与が、遺留分権利者の遺留分を害する場合、贈与者の死亡する前の1年間にしたもの、及び1年前の日より前にしたものでも、贈与者、受贈者の双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときは、減殺を受けることになります。

民法第1030条

贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

負担付贈与の場合も同様で、その目的の価額から、負担の価額を控除したものを贈与の価額として、その額に達するまで減殺されます。

民法第1038条

負担付贈与は、その目的の価額から負担の価額を控除したものについて、その減殺を請求することができる。

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