時効の援用とは・・・

時効の援用とは・・・

時効は、時効の完成によって利益を受ける者が、時効が成立したと主張しないと効果が生じません。

取得時効の場合には、それによって物の所有権を取得した人、消滅時効の場合はそれによって債務を免れる人が時効が成立したと主張する必要があるのです。

時効の制度は、真実の権利者の権利を侵害するものです。

時効の利益を受ける事を、良しとしない人もいるわけです。

ですので、時効の利益を受けるかどうかを利益を受ける人の自由選択にまかせたのです。

この選択行為を、時効の援用といいます。

民法145条

時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

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消滅時効の援用者とは・・・

消滅時効の完成によって、直接的に義務を免れる人は、当然に援用権者になります。

債務者がこれに当たります。

以前は、援用権者を「時効によって直接利益を受くべき者」(直接の当事者)に限定していました。

その理由は、直接的に時効利益を受けるべき人が時効利益の享受を欲していないのなら、間接的に利益を受けるべき者が時効利益を受けるのは、理に反するというものでした。

しかし、現在の判例では、間接的な当事者にも援用権を拡張しています。

連帯債務者、保証人、連帯保証人の消滅時効の援用権

連帯債務者とは、3人が連帯して債権者から300万円を借りていたとすると、債権者は3人から100万円ずつ取り立ててもよいし、1人から300万円を取ってもよいとされている債務者の事をいいます。

3人から総額300万円を自由に取り立てることができるのです。

1人の債務者が300万円を支払った時は、それで債務は消滅しますが、3人の債務者の内部では、1人当たりの負担部分が100万円になるように求償権行使によって調整する事ができます。

連帯保証とは、主債務者の保証なのですが、単純な保証人と違うのは、連帯保証人には、催告の抗弁権と検索の抗弁権がないことです。

この抗弁権というのは、債権者が保証人のところへ請求に来た時に「まず、主たる債務者に請求してくれ、そして、主たる債務者が無資力であるなら、そのときは私が支払います」と抗弁する権利です。

連帯保証人には、この抗弁権がないので、主債務者に弁済能力があるのに連帯保証人のところへ請求がきたら連帯保証人は支払わざるを得ないのです。

民法439条には、連帯債務者のうち1人のために消滅時効が完成した時はその債務者の負担部分について他の債務者もその義務を免れる、と規定しています。

3人の連帯債務者のうち1人だけについて、何らかの理由で消滅時効が完成したとすると、その債務者の負担部分である、3人で300万円ですから1人当たり100万円については皆が利益を享受できるという事です。

借金の総額は200万円になります。

消滅時効の完成した当該債務者はもちろん、他の連帯債務者も民法439条によって、直接的に消滅時効の援用ができるのです。

連帯保証人についても民法439条が適用されます。

単純な保証人についても、判例は「保証人は主債務の時効を援用する事ができる」としています。

民法439条

連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。

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物上保証人、抵当不動産の第三取得者の消滅時効の援用とは・・・

物上保証人というのは、AさんからBさんがお金を借りる時、Bさんには担保に提供する不動産等がないので、Cさん所有の不動産を担保に提供してもらう場合のCさんのことをいいます。

Aさんが債権者、Bさんが債務者、Cさんが担保提供者であり物上保証人なのです。

抵当不動産の第三取得者とは、すでに抵当権の設定されている不動産を、そのままの状態で買った人をいいます。

抵当権はそのまま付いていますので、抵当権に基づいて不動産が競売にかけられるとその不動産を失う可能性があるのです。

物上保証人や第三取得者は、債務者ではないので、直接の当事者ではありませんが、主たる債務者の債務が時効で消滅すれば物上保証人の抵当権はなくなりますし、第三取得者は不動産を他人に取られる心配がなくなります。

主たる債務者の有する消滅時効の援用を物上保証人がすることを認めた判例や、抵当権が設定されている不動産の第三取得者に同様の時効援用権を認めた判例があります。

この判例は「民法423条1項本文の規定により、債務者に代位して他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することが許されるものと解するのが相当である」としています。

これは、債権者代位権を行使して主債務者の時効援用権を代位行使することを認めるということです。

抵当権の後順位者は、一番抵当権の被担保債権についての消滅時効を援用しうるか、については、判例はこれを否定しています。

債権者代位権とは、債権者が自分の債権を保全するために必要な場合に、債務者が行使を怠っている財産上の権利を、自分の名で代わって行使する権利をいいます。

債務者の財産が債務者の全債務より不足しているのに、債務者が自分の有する貸金を取り立てなかったり、時効更新をしなかったりするとき、債権者が、その債務者に代わって、債権を取り立てたり時効更新をしたりする場合の権利をいいます。

債権者代位権が行使されることにより得られた財産や権利は、債務者に帰属し、総債権者がその利益を受けることになっています。

債権者代位権を行使したものが優先的に弁済を受けられるのは、そのために要した費用だけです。

慰謝料請求権などのように債務者の一身専属権は対象となりません。

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