仮差押と仮処分を行う場合・・・

仮差押と仮処分を行う場合・・・

お金を貸して債務者が支払わない場合、公正証書や確定判決などの債務名義があれば、債務者の財産に強制執行することができ、これを本差押といい、債務者の財産を差押え、競売にかけ、換金し、その代金をもって貸金に充当することになります。

しかし、債務名義がない場合には、裁判を起こし、判決を得てから強制執行をすることになりますが、判決を得るまでには、一審だけでも1年以上かかることもあり、その間に債務者が財産を処分したり、隠したりして、強制執行をしようとしても債務者に財産がないような事態がおきます。

それを防ぐためには、債務者の今の財産を仮に差押えておき、将来、判決を得て強制執行しても、債権が確実に回収しえることを方法として、仮差押があります。

仮差押の対象は、書画骨董等の有体動産、土地建物の不動産、銀行預金、売掛金等の債権、自動車、船舶、電話加入権、特許権、鉱業権なども仮差押の対象となります。

仮差押は、金銭債権に基づく請求権だけに利用できます。

仮処分は係争物に関する仮処分と仮の地位を定める仮処分に分けられます。

係争物に関する仮処分について、土地の売買契約で買主が代金を支払ったにもかかわらず、売主が土地を引き渡さない場合に、買主は売主に対して通常は土地の引渡請求訴訟を裁判所に提起し、判決を得て土地を取得することになりますが、判決が出るまでの間に、売主がその土地を第三者に譲渡したりする場合があります。

これを防止するため、不動産を売主の手許に置いたままにしておくことが、係争物に関する仮処分といわれるものです。

買主が勝訴したら、不動産を売主から引き渡してもらいます。

仮の地位を定める仮処分について、交通事故で負傷し、加害者からの賠償がないために生活に困窮し治療費の支払もできず、判決まで待てない場合に、加害者から暫定的に治療費、休業補償の支払を仮処分によって求めることができることをいいます。

この仮処分は、具体的には、建築禁止仮処分、営業妨害禁止仮処分、店舗及び設備の占有使用妨害禁止仮処分などのほか、賃金支払、建物明渡し、商品の引渡しの仮処分のように、債権者に一時的な満足を与える仮処分をいいます。

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仮差押と仮処分の保証金・・・

債務者が持っている商品に債権者から仮差押を受けると、仮差押の効力で、商品を自由に販売することができなくなります。

また、商品引渡しの仮処分が出ますと、債務者はその商品を債権者に引き渡さなければならなくなります。

債権者は保全処分命令である仮差押や仮処分をもらうことによって、債務者を不都合にさせて、紛争を早期かつ有利な解決を図れることになっているのです。

債権者から保全処分の申立てが出されますと、裁判所はこれを審理しますが、実務では債務者を呼び出したり、口頭弁論を開いて債務者の意見を聴いたりはしません。

仮差押や係争物に関する仮処分などは債権者の主張と証拠だけによって、迅速に保全処分の決定が出されるのです。

債権者の一方的な言い分や書類のみによって命令が発せられるため、債務者が受けるかもしれない損害を担保するため、原則として、債権者に保証を立てさせることにしています。

保全処分には、まず保証金を用意しなければならず、保証金は裁判官の自由裁量で決まりますが、決まった金額を現金又は有価証券で法務局、地方法務局、その支局、出張所に供託します。

裁判所の許可を得て、銀行や損害保険会社との間での支払保証委託契約に基づき、発行する法令保証証券でもよいとされます。

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仮差押や仮処分の要件・・・

保全処分である仮差押や仮処分の要件は、債権者が、貸し金請求、物の引渡請求など、債務者に請求しえる権利を有していることが前提です。

これを被保全権利といい、債権者はこれを立証しなければなりません。

次に保全の必要性を主張、立証しなければなりません。

保全の必要性とは、仮差押、係争物に関する仮処分では債務者が、その所有の財産を隠匿あるいは処分をしていまい、債権者が将来判決を得て、それにより強制執行しようとしても、不能あるいは著しく困難になるおそれが、現在予想できる場合を指します。

仮の地位を定める仮処分では、差し迫った危険を防ぐ必要性あるいは現在の著しい損害を避ける必要性を指しています。

この要件の証拠の程度を応じて、証拠が薄い場合は保証金を多めに、証拠が厚い場合は保証金の額で調整しています。

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