仮執行宣言付支払督促で強制執行するには・・・
仮執行宣言付支払督促がなされても、なお支払をしない債務者に対しては、強制執行の手続をとることになります。
強制執行とは、支払をしない債務者の所有する不動産、商品や機械器具、家財道具などの差押や競売をすることによって、債権回収することをいいます。
この強制執行ができるためには、「債務名義」が必要です。
債務名義というのは、確かに債務が存在することを公の機関が証明した文書のことで、民事執行法では、確定判決、仮執行を付した判決、執行認諾約款付公正証書、和解調書、調停調書、仮執行宣言付支払督促などが債務名義に当たると規定しています。
いくら債務名義があるからといって、個人で自力で強制執行することは許されません。
強制執行を行う場合には、国の執行機関である執行官か、または執行裁判所へ執行の申立をすることになっています。
仮執行宣言付支払督促により強制執行をする場合には、まず、どのような債務名義に基づいて強制執行するのかを債務者に知らせるため、債務名義の送達をします。
そのための送達証明申請を支払督促を受けた簡易裁判所にします。
仮執行宣言付支払督促の正本と送達証明があれば、強制執行の申立をすることができます。
債務者のどの財産について強制執行をするかは、債権者が自由に決めることができます。
動産の執行の場合は、執行官へ、不動産の執行の場合は、執行裁判所へ申し立てる事になっています。
すなわち、執行裁判所や執行官に債務名義を提出して強制執行を依頼するわけです。
ただ、執行名義だけでは強制執行はしてくれません。
それは、現在でも債権者と債務者との間の債権が存在し、これが執行力を持つものである事を公に証明する文書である「執行文」が必要だからです。
これを証明するのは裁判の記録を保管する裁判所の書記官であり、公正証書の原本を保管する公証人です。
ここで、債務名義の末尾に執行文を付記してもらいます。
ただし、仮執行宣言付支払督促に関しては、原則としてこの執行文は不要とされています。
民事執行法22条(債務名義)
強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という)により行う。
一 確定判決
二 仮執行の宣言を付した判決
三 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判
四 仮執行の宣言を付した支払督促
四の二 (省略)
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人の作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの
六~七 (省略)
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ADRとは・・・
ADRとは、Alternative Dispute Rsolution の頭文字を取ったもので、裁判外紛争処理といわれています。
訴訟によらず、お金も時間もかけずに、紛争の解決を図る機関として、ADR機関があります。
ADRの解決方法は、手続に参加する担当者が、当事者双方の言い分を聞いて調整しながら合意点をさがして解決を図る「調停」「あっせん」型が主流になっています。
しかし、当事者の言い分を聞いて、証拠を検討して、一定の判断を下して、当事者がそれに従うという「仲裁」方式もあります。
仲裁に対しては、原則として、当事者が不服であっても訴訟を起こせません。
ADRの活動を促進するために「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(ADR促進法)が制定され、平成19年4月1日から施行されています。
認証を受けたADR機関は、特例措置として、①時効の中断の効力を認めたこと②訴訟中でも4ヶ月の訴訟中止を認めたこと③調停前置主義と同様の効果を認めたことです。
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調停と訴え提起前の和解とは・・・
調停とは、裁判所で行う話し合いをいいます。
調停には、民事調停のほかにも、家事調停、農事調停などがありますが、債権回収の場合には民事調停になります。
調停は、話し合いですから、判決が出るわけではなく、話がまとまらなければ「不調」として手続は終了します。
また、申立人が申立を取り下げる事もできます。
調停は裁判所で行う手続なので、当然公平に行われますし、期日どおり進行しますので、話し合いも進めやすくなります。
調停では、調停委員が間に入ってくれ、仲介してくれます。
民事調停手続は、民事に関する紛争につき、当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図ることを目的とする、とされています。
当事者の話し合いの結果、調停が成立すれば、裁判所によって、「調停調書」が作成され、双方へ送達されます。
この「調停調書」は判決と同じ効力を持ちます。
調停調書は債務名義となりますので、これをもとに強制執行の申立ができます。
また、話し合いがまとまらなければ調停は不調となり終了しますが、不調になった後で訴訟への移行もできます。
調停終了後、2週間以内の訴訟提起ならば帖用印紙を使う事ができます。
調停は、債権者側だけで申立ができるというものではありません。
債務者側からも申立ができます。
また、特定調停は「支払不能に陥るおそれのある債務者」が申し立てる事になっています。
また、民事上の紛争について争っている当事者が、話し合いによって、お互いに譲歩しあって、争いを取りやめる約束をするのが和解契約といいます。
自由な話し合いにより、お互いに納得行く上で解決を図ります。
和解については、特に方式を定めていませんから、書面にする必要はありません。
そして、いったん成立した和解の内容について、後日、新たな証拠がでてきたとしても、和解のやり直しはできないことになっています。
紛争防止のためには、和解が成立したときに和解契約書として書面にする事が大切です。
書面にしたからといって、相手が和解の約束を履行されない場合には、訴訟を起こして勝訴判決をもらい、強制執行をすることになります。
これを手間をなくす手続が、訴え提起前の和解あるいは即決和解という手続です。
これは、紛争当事者の一方が、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に和解の申立を行います。
裁判所は和解の勧告をし、成立した和解の内容を和解調書として作成します。
この和解調書は、訴訟における確定判決と同じような効力を持つものですから、相手が約束を履行しない場合には、これに基づいて強制執行をすることができます。
訴え提起前の和解は、費用が安く、債務名義になります。
裁判の関与する和解には、このほかに訴訟上の和解があります。
これは訴訟の途中で、裁判官の和解の勧告により、あるいは当事者からの申し出により、和解の話し合いを行い、話がまとまれば裁判官が和解調書を作成してくれるものです。
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