愛人契約で贈与した家の返還・・・

愛人契約で贈与した家の返還・・・

愛人に家を建ててやったのですが、若い男を連れ込んでいたので、家を取り戻したいのですが。

愛人契約は、公序良俗に反する行為を目的とする対価的なものを含む契約ですから、契約は無効であるとされます。

事例では、男が女に贈った家を取り返そうと思っているところへ、女の方から先に所有権の移転登記請求を求める訴えを起こしてきて、男はこの訴訟で、2人の贈与契約は愛人契約であるから、公序良俗に反して無効である旨を主張し、女に所有権が移転する理由はないから、それに基づいて移転登記を求める訴えは失当だとして争いました。

裁判所では、この訴訟について男の主張を認めて、女の登記手続請求を棄却しました。

今度は、男が女に対して建物を明渡せという訴訟を提起したのですが、女は男から贈られた家は、肉体関係を続けていくことを理由として家を贈った不法原因給付にあたるから、男は女に対し、その返還を求めることはできないと主張しました。

(不法原因給付)
民法第708条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

裁判所は、その主張を認め、男は敗訴し、女は所有権の移転登記を受けられないのですが、建物から追い出されることはないとされたのです。

判例は、「708条にいう不法の原因のための給付とは、その原因となる行為が、強行法規に違反した不適法なものであるのみならず、さらにそれが、その社会において要求せられる倫理、道徳を無視した醜悪なものであることを必要とし、そして、その行為が不法原因給付にあたるかどうかは、その行為の実質に即して、当時の社会生活及び社会感情に照らし、真に倫理、道徳に反する醜悪なものと認められるか否かによって決せられるべきものである」としています。

また、高額な飲み代を請求されるようなスナックでの支払い債務を妻が支払う義務はないといえます。

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離婚する夫の資産を強引に調べる・・・

夫が愛人を作り、家を出て行ってしまったので離婚を考えているのですが、離婚に際して慰謝料などをもらうため、夫の関係している顧問先や顧問料を調べたり、銀行預金を調べているのですが、夫から業務妨害で訴えるといわれました。

民法の離婚原因の中に、配偶者に不貞な行為があったときに離婚ができると規定しています。

(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

夫が愛人を作って家を出たわけですから、夫の不貞行為があることは間違いなく、離婚原因があるわけですから、離婚をすることになれば、財産分与や慰謝料の請求権があります。

離婚によって、請求することができる財産分与や慰謝料の算定根拠を知るために、顧問先に行って顧問料を調べたり、銀行に行って、夫の預金関係を調査することが、夫の仕事上の信頼関係や個人としての名誉に関係してきます。

妻の行為が度を越し、結果的に夫の業務を妨害した場合には、夫の勤め先に対しても業務妨害となる可能性があります。

事例として、ある病院の看護婦をしていた妻とその病院の税務関係の仕事をしていた税理士の夫は離婚を考えており、妻はその病院に夫がもらう顧問料を自分に渡すように病院に掛け合いました。

病院も事情を知っているとはいえ、夫の承諾を受けなければ渡せない旨を伝えたのですが、妻は実力行使で病院の前に座り込み始め、病院は営業妨害で妻を訴えました。

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夫の浮気相手の女性に仕返し・・・

夫が浮気をして愛人の家に入り浸るため、子供の養育に支障を来すようになってきたので、私は相手の女性に頼んで別れてくれるように言ったのですが、聞き入れず、離婚することになりそうです。

この相手の女性に仕返しをしたいのですが。

夫婦には貞操義務があり、結婚を継続していく上でこの義務を守ることは当然で、これに違反した場合には離婚原因となります。

(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

また、夫婦は相互に貞操を要求する権利を持ち、この権利を侵害された場合には、それぞれの相手方に対して、慰謝料を請求でき、つまり、妻を裏切った夫に対して慰謝料を請求できるのです。

(財産以外の損害の賠償)
民法第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

また、夫と相手の女性とが共同して、妻が夫に対して持つ貞操を要求する権利を侵害し、その結果、夫婦関係が破綻し、離婚に至るような場合、相手の女性は、損害賠償の責任を負います。

判例では、被告(相手の女性)の主張は、「夫婦関係の破綻は原告(妻)が悪妻であったことに基づくものであり、しかも同棲は夫の強い要望によるものである」とのことでした。

しかし、裁判所は、「被告は、夫のが原告に対して負っている貞操義務違反に対して、故意に加担している事実を否定できず、夫婦関係の破綻が他の事情と相まって生じていること、夫が執拗に被告を求めたなどの事情を考慮しても、被告は原告に対し、30万円の慰謝料を支払うべきである」としました。

また、夫婦のどちらかが浮気をして家庭が破壊した場合、その未成年の子供は親の浮気相手に損害賠償できるかについて、次のような判例があります。

「親の浮気により、女性が日常生活において親の愛を注がれ監護教育を受けることができなくなったとしても、浮気の相手に害意があるなどの特別の事情がない限り、子供に対する関係では不法行為にならない」として、子供には損害賠償を請求する権利はないとしています。

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