隣家の境界線ぎりぎり建物建築・・・

隣家の境界線ぎりぎり建物建築・・・

山田さんは、家を増改築することにしたのですが、狭い敷地ですので、計画通り増築すると、隣地田中さんの境界線ぎりぎりまで建物を建てなければならなくなります。

山田さんは、民法では、建物を建築するには、隣地との境界線から50センチメートル以上の距離をとる必要があることを聞いていました。

そこで、大工さんに隣地の田中さんにばれないように、早く完成するよう頼み、わずか2日間で完成させてしまいました。

田中さんは、境界線ぎりぎりの建物を見て、50センチメートル離すよう怒鳴り込んできました。

民法では、相隣関係として、境界線付近に建物を建築する場合には、境界線から50センチメートル以上の距離を保つよう定めています。

(境界線付近の建築の制限)
民法第234条 建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。
2 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

民法の規定に違反して建物を建てた場合、このような建物にたいしては、隣地所有者は、その建築の廃止又は変更を請求できることになります。

この請求権は、建築に着手したときから1年を経過したり、建物が完成してしまった後は消滅してしまい、隣地所有者はこのために被った損害を賠償を請求できるにすぎません。

山田さんの建物は既に完成してしまっているので、田中さんに損害の賠償をするだけすむのです。

建物完成前に、建築の廃止又は変更を請求すれば、その訴訟中に、工事着手から1年を経過したり、あるいは建物が完成したとしても、廃止又は変更の請求権は、消滅しないと考えられています。

また、東京の中心部では、この民法と異なる境界線ぎりぎりい建築してもよいという慣習があるところもあり、この場合は慣習に従うことになります。

また、防火地域又は準防火地域にある建築物で、外壁が耐火構造のものでは、その外壁を隣地境界線に接して設けることができることになっています。

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隣地の高い塀の設置の撤去請求・・・

山田さんは、その所有家屋の借家人田中さんに対して、建物明渡しの調停を申立て、話し合いの結果、田中さんがその借家を敷地と共に買取ることになりました。

山田さんは、調停成立の際に、田中さんの玄関に面した境界線上に、境界線を明らかにするために塀を設置することに合意したのですが、設置したブロック塀は高さ2メートルの塀を設け、田中さんは玄関からの出入りもできず、塀側の窓からは、風も光も入ってこなくなりました。

田中さんは、ブロック塀の設置は、権利の濫用だとして裁判所に訴えました。

裁判所は、ブロック塀の収去の請求に対して、ブロック塀の高さを1メートル制限して、一部認容しましたが、田中さんの上告により、さらに玄関部分については全部の収去を認容しました。

玄関は、来客を迎え入れ、接待するなど対外的な面においても、建物の構造、配置の面においても、極めて重要な部分であるから、特段の事情のない限り、隣地所有者が、その地上に建造物等を構築して建物所有者の玄関前を塞ぎ、玄関の効用を全く失わしめるようなことは、それ自体権利の濫用として許されず、隣地所有者は、玄関が実在する以上、建物所有者が、玄関から道路へ出るため必要な限度で、隣地を通行することを拒否することはできないとしました。

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建築する敷地に接する道路幅・・・

都市計画区域内の土地に建築物を建築する場合には、その敷地は、建築基準法で定める道路に2メートル以上設置していなければならないのが原則です。

この建築基準法で定める道路とは、次に掲げるもので、その幅員が4メートル以上のものとされています。

①道路法、都市計画法等による道路。

②建築基準法が適用されるにいたった際、現に存在する道路。

③道路法、都市計画法等による新設又は変更の事業計画のある道路で、2年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの。

④土地を建築物の敷地として利用するため道路法、都市計画法等によらないで築造する、政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの。

⑤建築基準法が適用されるにいたった際、現に家が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道で、特定行政庁が指定した道は、建築基準法に道路とみなし、道路の中心線から水平距離2メートルの線を道路の境界線とするとしています。

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隣家の窓に目隠し請求・・・

山田さんの家の横50センチメートル離れて、田中さんが家を建てましたが、田中さんの家の窓からは山田さん窓から家の中が丸見えになってしまいました。

山田さんは、田中さんに抗議をしましたが、聞き入れてくれません。

民法234条には、「建物を築造するには境界線より50センチメートル以上の距離を有することを要す」とされ、民法235条には、「境界線より1メートル未満の距離において他人の宅地を観望すべき窓又は縁側を設ける者は目隠しを附することを要す」とされています。

(境界線付近の建築の制限)
民法第234条 建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。
2 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

民法第235条 境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
2 前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。

山田さんは、田中さんにこの規定により目隠しを請求しました。

判例では、窓が主として通風採光のために設けられたことが認められるにしても、民法235条の規定は、みだりに他人の私生活をのぞき、プライバシーを侵すのを制限する趣旨だから、目的のいかんを問わず他人の宅地を見ることのできる位置と構造をもつ窓は全てこの制限規定に含まれるべきとして、窓に目隠しをするよう命じています。

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