手形の代理行為・・・

手形の代理行為・・・

取引を行う場合に、本人を代理して行う人を代理人といいます。

会社の場合には、実際に取引を行うのは社長や取締役といった会社の代理人です。

個人の場合には、代理人が取引を行う場合には、「山田太郎 代理人 田中五郎」という肩書きで行います。

代理人が行った手形上の取引について、本人が責任を負うのは、代理人が与えられた権限の範囲で取引を行った場合です。

代理人が自分の利益のために手形を振り出したような権限濫用の場合でも、そのことを受取人やその受取人から裏書譲渡を受けた第三者などが知らなければ、本人が手形金支払の義務を負います。

権利濫用の場合で、受取人や第三者がその事情を知っていた場合には、本人は責任を負いません。

また、取引を行った人が代理権をもっていなかった場合も、本人は責任を負わず、これを無権代理といいます。

ただし、代理権を与えていないのに、本人が与えられたと表示して取引を行った場合にはそのような表示をした本人に対して手形上の権利を行使することができます。

(代理権授与の表示による表見代理)
民法第109条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

(権限外の行為の表見代理)
民法第110条 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

(代理権消滅後の表見代理)
民法第112条 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

このように、本来無権代理行為であるものの、本人に対して効果が生じる場合を表見代理といいます。

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手形の裏書の連続・・・

裏書とは、手形を他の人に譲渡する方法で、手形が誰から誰に譲渡されるのかを手形の裏面に書くことから、裏書と呼ばれます。

裏書して手形を譲渡される人を裏書人、譲渡される人を被裏書人といいます。

裏書は、裏書人と被裏書人との間で行われ、振出人とは関係ないところでなされる独立した行為で、裏書人が裏書について振出人に承諾をもらったり連絡したりする必要はありません。

裏書によって手形を譲り受けた人は、満期日まで待って振出人に対して手形金の請求をすることができ、満期日まで待たなくても、他の人に譲渡することができます。

満期日以前に現金が必要な時は、銀行などの金融機関や他の人に譲渡することで、現金にすることもできます。

ただし、満期日前に金融機関に譲渡するすることを手形割引といい、一定の利息で割り引かれることになります。

裏書の方法は、手形の裏側の「裏書欄」に記載し、押印します。

被裏書人欄は無記名でもよいとされます。

裏書は連続したものでなければならないので、1番目の裏書欄で被裏書人になっている人は、2番目の裏書欄では裏書人欄にその名前が記載されることになります。

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手形の裏書の効力・・・

手形の裏書には、権利の移転効力があります。

裏書人の持つ手形上の権利は、裏書することによって、全て被裏書人に移ります。

また、担保効力があり、裏書することで、裏書人は被裏書人ばかりでなくその後の手形譲受人に対しても、呈示期間内に呈示を受けた場合に手形の支払を担保する責任を負うことになります。

手形の保持人が裏書譲渡した後、さらにその手形が裏書譲渡された場合は、もともとの手形の保持人は、自分が譲渡した相手ばかりでなく、次に譲渡された相手に対しても手形金を支払う責任を負います。

多く裏書譲渡された手形というのは、手形の担保をしている人が多いことを意味するのです。

また、裏書の効力として、資格授与効力があり、これは裏書の連続している手形では、手形を現在保持している人が手形の権利者と推定されることをいいます。

連続して裏書されている手形を保持している人が手形上の権利者でないと主張するためには、振出人の側でその手形保持人が不正な手段で手形を得たことを証明しなければなりません。

手形の支払呈示期間が過ぎても裏書による手形の譲渡はできるのですが、支払呈示期間が過ぎているということは、手形の流通を促進させるための効力である裏書人の担保的効力を認める必要がありません。

ですので、支払呈示期間経過後に裏書により手形を受け取った場合、手形の所持人は、振出人に対して支払を求めることはできるのですが、裏書人に対して支払を求めることはできません。

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