相続財産(内縁の財産分与請求権)・・・

相続財産(内縁の財産分与請求権)・・・

生存内縁配偶者は死亡内縁配偶者の相続人に対して清算的要素及び扶養的要素を含む財産分与請求権を有しないと解して、内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、法律上の夫婦の離婚に伴う財産分与に関する民法78条の規定を類推適用することはできないとされています。

民法第768条

1. 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2. 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3. 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

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相続財産(借地権)・・・

甲乙らは本件借地権を相続したが、乙は共同相続人を代表し地主と賃借人を甲と限定する賃貸借契約を締結したことと、その後、遺産分割により、甲は本件借地上の南側建物を相続し、乙は同北側建物を相続したが、乙は賃貸人に対して、本件賃貸借契約の賃借人名義を甲乙連名にする申入れをしていないこと及び遺産分割による本件借地の相続関係及び地上建物の所有関係の変遷につき特に説明していないこと、本件南北建物建替の建築確認申請の際、申請書の乙は本件両土地の転借人である旨を記載した地主作成名義の土地使用承諾書を添付して提出し、また、原告に対して本件両土地の地代を送付した際には甲の代理人として署名した地代支払通知書を添付するなど、乙は対外的には本件賃貸借契約における賃借人は、甲乙の内部関係においてはともかく、賃貸人との関係においてはこれを甲とする旨合意されていたことは明らかであるから、甲乙は本訴において原告に対し、賃借人が甲乙両名である旨主張することは許されないとした事例があります。

賃貸借契約において賃借人が死亡し、数人の相続人が賃借権を相続した場合、賃貸人が債務不履行等を理由として契約を解除しようとするときは、その意思表示は相続人全員に対してしなければなりませんが、そのうち特定の相続人が賃借物件を使用し、かつ賃料を支払っていて、他の相続人が賃貸借契約に係る一切の代理権を当該相続人に授与したと見られるような特段の事情がある場合は、賃貸人は、当該相続人に対してのみ賃料支払や催告や契約解除の意思表示をすれば足りるとした事例があります。

民法第544条

1. 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
2. 前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。

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相続財産(使用貸借権)・・・

建物の使用貸借の借主が死亡した場合、使用貸借は終了しますが、本件のように貸主と借主との間に実親子同然の関係があり、貸主が借主の家族と長年同居してきたような場合、貸主と借主の家族との間には、貸主と借主本人との人的関係があるというべきであるとして、民法599条の適用を否定して使用借権の相続が認められた事例があります。

民法第599条

使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。

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相続財産(銀行預金等)・・・

預金者死亡後の銀行預金の払戻請求は、共同相続人全員でする取扱がされています。

この取扱を事実たる慣習として行なわれているものと見て妨げないとした上で、相続人が相続により取得した部分の預金の払戻請求を認めた事例があります。

理由として、それが民法92条の適用を受けるためには当事者がその慣習による意思を有するものと認められなければならないこと、預金債権は指名債権として預金者は特定されている可分の金銭債権であり、預金債権者が死亡し相続が開始すると同時に法律上当然に共同相続人に分割承継されること、また、遺産の相続について紛争を生じている場合、相続預金の払戻請求を共同相続人全員ですることは事実上困難なときもあり、あくまで共同相続人全員の署名押印のある支払請求書を要するとすれば、相続により取得した債権の行使が不当に妨げられることともなること、これらを勘案すると、本件で一般顧客たる預金者である被相続人が金融機関との間で私法上対等の立場で預金契約を締結するに当たり、相続預金の払戻請求をするには共同相続人全員でしなければならないとする旨の事実たる慣習による意思を有していたとは到底認めがたいところであり、そうすると、そのような慣習が存するとしても相続人はこれに拘束されることなく、相続預金のうち取得した部分につき、その払戻請求をするには単独でなしえるものというべきであるとしました。

民法第92条

法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

郵便貯金の相続につき、その帰属者及び帰属する範囲が確認されている場合には郵便貯金規則33条を適用する必要はないこと、銀行預金の相続につき、相続人全員の同意書か遺産分割協議書の提出がなければ相続預金の払戻に応じない取扱には合理性があり、大量処理のための必要性も認められるが、相続人全員による払戻請求が困難な場合にまでこの取扱を貫徹するのは不合理であり、現に銀行等においても、葬儀費用等をまかなうための払戻には相続全員による請求を要しない扱いをしていることが認められ、銀行の取扱が事実たる慣習となっているとまでいえないなどの理由により、共同相続人の1人による法定相続分の預貯金払戻請求を認容した事例があります。

郵便貯金規則第三十三条

郵便貯金に関する権利が相続又は会社の合併若しくは分割により承継された場合には、第二十九条から第三十二条までの規定を準用する。ただし、この場合において、名義書換請求書又は転記請求書に添付すべき書類は、相続にあつては戸籍謄本又は相続に関する証明書、会社の合併又は分割にあつては合併又は分割に関する証明書とし、又、二人以上の相続人があるときは、名義書換又は転記の請求をする相続人以外の相続人の同意書を提出しなければならない。

定額郵便貯金につき、共同相続人の1人は自己の法定相続分に応じて払戻請求をすることができるとした事例があります。

遅延損害金は訴状送達の翌日から請求を認めました。

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