寄与分とは・・・

寄与分とは・・・

共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、民法900条から902条までの規定によって算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とするとされています。

この場合、共同相続人の間で寄与分の協議が調わないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、民法904条の2第1項に規定する寄与をした者の請求により、寄与分を定めます。

(法定相続分)
民法第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
1.子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
2.配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
3.配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
4.子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

(代襲相続人の相続分)
民法第901条 第887条第2項又は第3項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系卑属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2 前項の規定は、第889条第2項の規定によって兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する

(遺言による相続分の指定)
民法第902条 被相続人は、前2条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前2条の規定により定める。

(寄与分)
民法第904条の2 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。

就職・婚姻の断念、訴訟追行の激励援助、跡取り指名、祭祀承継については、それが事実であるとしても、被相続人の財産の形成・維持・増加に直接結びつくものではないから寄与分として考慮すべき事情に当たらないと解した事例があります。

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寄与分を定める申立・・・

家庭裁判所が寄与分を定める場合、寄与相続人の申立がなければなりません。

原審判は、寄与分を定める申立がないのに、相続人のうち相手方甲、乙にそれぞれ240万円の寄与分を認め、本件遺産の価額から右寄与分を控除し、残余について法定相続分に従って割り算した上具体的相続分を算定しているが、家庭裁判所は寄与をした者の請求がない限り職権で寄与分を定めることはもちろん、寄与分を考慮した遺産分割の審判をすることも許されないと解すべきであるとして、これを取消して差し戻した事例があります。

遺産分割審判に対する即時抗告審において、申立人が調停の過程で何度も寄与分を主張し、準備書面にも自己の寄与分を考慮して分割すべき旨を記載している場合には、申立人に寄与分を定める処分の申立をする趣旨かどうかを釈明して寄与分についての審理を尽くすべきであり、その申立のないことを理由に寄与分を認めなかった事例があります。

家庭裁判所は、遺産の分割の審判において、その当事者が寄与分を定める審判の申立をすべき期間を定めることができます。

この場合、その期間は1ヶ月以上でなければなりません。

この期間が経過した後にされた寄与分を定める審判の申立は却下することができます。

この期間が定められなかった場合でも、遺産の分割の審理を著しく遅延させると認められ、かつ、申立が遅延したことにつき申立人の責めに帰すべき事由のあるときは、家庭裁判所は、当該寄与分を定める審判の申立を却下することができます。

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遺産分割の審判手続・・・

遺産分割の審判は、相続による共有を解消して遺産を各相続人に帰属させますが、この審判において、家庭裁判所は、金銭の支払い、物の引渡、登記義務の履行その他の給付を命ずることができます。

この給付命令は執行力ある債務名義と同一の効力があります。

鑑定料を申立人が立替払いしている場合、主文で、これを各当事者が負担するとし、相手方らは申立人に対して、負担金を支払えと命じた事例があります。

遺産分割審判では、共同相続人は各自の法定相続分の額で遺産を取得します。

共同相続人Aを除く他の相続人が、早期解決のため各自が希望した遺産をそれぞれ取得できれば、他は取得しなくてもよく、たとえそれが法定相続分よりも少ない価額であっても異議を述べない合意をしている場合、その合意に基づき、合意をしている相続人らの取得額が法定相続分を下回り、Aの取得額が法定相続分をはるかに上回る分割審判をした事例があります。

共同相続人54名中52名が遺産分割の調停案を受諾したが、残る2名が期日に出頭しなかったために調停が不成立となった事案において、この調停案を相当であるとして、これに従った遺産分割の審判をした事例があります。

遺産分割審判の抗告審が、被相続人の預金額につき、遺産分割協議の過程における相手方の虚偽の説明を誤信し、これを前提に一定額の金員を取得してその余りの請求はしない旨の抗告人の意思表示には要素の錯誤があるとし、これを有効として遺産を分割した原審判を取消して差し戻した事例があります。

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遺産分割審判の即時抗告・・・

当事者・利害関係人は、遺産の分割及び遺産分割の申立を却下する審判に対して、その告知を受けた日から2週間以内に即時抗告をすることができます。

相続人ごとに審判の告知が異なる場合の遺産分割の審判に対する即時抗告期間については、相続人ごとに各自が審判の告知を受けた日から進行します。

寄与分を定める審判に対する即時抗告期間も同様です。

遺産分割のような非訟的な裁判の不服申立は、その理由と限度に拘束されることなく、事件全般について審理判断をなし得るので、既に当事者の一方から適法な抗告がされた以上、その後における他方の抗告は二重抗告であり、不適法となるとした事例があります。

不利益変更禁止の原則が遺産分割の裁判に適用されるかについては、抗告審が原裁判所の抗告人以外の相続人間の精算金の違算を指摘しながら、この金員の支払を受ける相続人はこれに満足しているから、抗告人はその額の変更を認め得ないとした事例がありますが、同じ非訟事件である財産分与の裁判には不利益変更禁止の原則は適用されないとした最高裁判例があります。

不利益変更禁止の原則とは、上訴審においては、上訴した人に不利益な内容となる裁判をしてはならないという原則をいいます。

上告は、判決に憲法違反があるとき、又は絶対的上告理由があるときにすることができます。

上告受理の申立は、判決に憲法違反、又は絶対的上告理由があるとき以外の法令違反、判例違反があるときにすることができます。

上告受理の申立に対して附帯上告を提起し、又は上告に対しての附帯上告受理の申立をすることはできません。

附帯上告とは、民事訴訟で、上告人の上告に対して、被上告人が第一審または第二審判決のうち自己に不利益な部分の変更を求めてする上告をいいます。

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