遺言執行者の職務外・・・
単純な債権の特定遺贈につき、当該債権に基づく請求権の行使、定期的金銭給付債権の受遺者に対する個々の給付、遺贈債権に基づく受遺者に対する毎回の給付について権限がありません。
相続人が遺言の執行としてされた遺贈による所有権移転登記の抹消登記手続請求をする場合の被告適格はありません。
相続人が遺言の執行としてなされた遺贈による所有権移転登記の抹消登記請求の先決問題である遺言の効力につき既判力のある判断を求めようとするときは、遺言執行者がある場合でも、請求の相手方である受遺者を被告として請求することができるとした事例があります。
特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言がある場合には、遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続人に承継されるから、遺言執行者には不動産につき財産分与を原因とする所有権移転登記手続等請求訴訟の当事者適格はないとした事例があります。
遺言執行者には、特定の不動産を相続人甲に相続させる旨の遺言により、甲が被相続人の死亡とともに不動産の所有権を取得した場合における相続登記申請義務はありません。
遺言執行者には、包括遺贈者が生前に売却し、その移転登記が未了である土地の所有権移転登記の申請の代理権限はありません。
遺言執行者が指定されていても相続人不存在手続により相続財産管理人が選任されている場合には、遺贈物件を含めて相続財産全体の管理は相続財産管理人においてすべきであるとされます。
遺言者に相続人は存在しないが、相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は、民法951条にいう「相続人のあることが明らかでないとき」に当たらないとされます。
(相続財産法人の成立)
民法第951条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
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遺言執行者の職務・・・
遺言執行者は、相続財産を管理して遺言の執行に当たるのですから、相続人に対して、その管理に属する相続財産の範囲を明らかにする必要があります。
遺言執行者は就職後遅滞なく相続財産の目録を作成して、これを相続人に交付するものとされます。
(相続財産の目録の作成)
民法第1011条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
2 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。
遺言の内容が財産に関しない認知や相続人の廃除・取消しなどである場合には、財産目録を作成する必要がありません。
包括遺贈の場合は、相続財産全部について調査を行い、その目録を作成しなければなりません。
財産目録には、作成年月日を記載し、遺言執行者が記名押印します。
遺言執行者は、財産目録を作成するに当たり、その正確性を期するために、相続人が立会いを請求したときは、その立会いのうえで、作成しなければなりません。
遺言執行者は相続人の請求があったときは、公証人に財産目録を作成させなければなりません。
公証人は、財産目録を作成する場合に、相続人を立ち合わせなければなりません。
目録2通を作成して、その1通を遺言執行者に交付し、1通は公証役場に保存することを要します。
目録には、立ち会った相続人、遺言執行者の署名押印を要しません。
財産目録作成の費用は、相続財産の負担となります。
(遺言の執行に関する費用の負担)
民法第1021条 遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。ただし、これによって遺留分を減ずることができない。
遺言執行者は遺言の執行に関する費用を相続財産の中からこれを支弁することができるとともに、相続財産の額を超える費用を相続人に請求することはできないことを定めたものと解し、遺言執行者がその執行につき必要な費用を立て替えて支払ったときには、相続人に対して費用の償還を請求することができるが、その場合、各相続人に対して請求しえる額は、費用を、全相続財産のうち相続人が取得する相続財産の割合に比例按分した額であり、かつ、相続人が取得した相続財産の額を超えない部分に限ると解されています。
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複数の遺言執行者 ・・・
遺言者が複数の遺言執行者を指定し、その職務について、遺言で、格別の指定をしなかったときは、各遺言執行者は共同してその職務を行い、その執行方法について意見が分かれたときは、過半数で可否を決することになっています。
(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)
民法第1017条 遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
民法1017条の規定は、遺言者の通常の意思を推定して定められたものですから、遺言者が、規定と異なる別段の意思表示をしたときは、遺言者の意思が優先します。
この意思表示は、必ず、遺言でされなければなりません。
別段の意思表示とは、共同遺言執行者の意見が分かれたときは、その中の特定遺言執行者によって決する旨の意思表示、相続財産の種類によって又は地域別によって分担を具体的に定め、その分担部分について各自が独立して任務を行なう旨の意思表示などです。
各遺言執行者は、任務の執行につき、遺言者が別段の意思表示をした場合も、保存行為は単独ですることができます。
遺言者は、別段の意思表示により保存行為を制限したり、否定することはできないとされます。
複数の遺言執行者の職務の執行方法を定めた遺言は、遺言者の死亡の時から効力を生じます。
(遺言の効力の発生時期)
民法第985条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
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遺言執行者の復任・・・
遺言者が、遺言で、遺言執行者の復任について、格別の意思表示をしなかったとき、遺言執行者は止むを得ない事由のある場合を除いて、第三者に遺言執行の任務を行なわせることができないとされています。
(遺言執行者の復任権)
民法第1016条 遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2 遺言執行者が前項ただし書の規定によって第三者にその任務を行わせる場合には、相続人に対して、第105条に規定する責任を負う。
病気、不在など、一時的に執行を第三者に委ねることが遺言執行者の職務に反しない場合が「やむを得ない事由」とされます。
「第三者にその任務を行なわせる」とは、遺言執行者が第三者をして自己に代わりその地位に就かせ、遺言執行の権利義務のすべてを他人に移すことをいい、ある特定の行為について第三者に代理権を付与することは妨げないとされています。
民法1016条の規定は、遺言者の通常の意思を推定して定められたものですから、遺言者が規定と異なる意義表示をしたときは、遺言者の意思が優先します。
遺言者が遺言執行者に復任を許す場合、特定の者を復代理人として指定する方法と、単に復代理人を選任することを許容するだけにとどめる方法とに分かれます。
この意思表示は、必ず、遺言でなされなければなりません。
遺言執行者が遺言者の遺言者の意思表示に基づいて、自ら第三者にその任務を行なわせた場合には、その選任、監督につき、相続人に対して損害賠償責任を負います。
遺言執行者が遺言者の指定した第三者にその任務を行なわせた場合には、その不適任又は不誠実なことを知りながら相続人に通知し、、又は解任することを怠ったときに相続人に対して損害賠償を負います。
(復代理人を選任した代理人の責任)
民法第105条 代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。
2 代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。
遺言執行者が、やむを得ない事由がないのに第三者にその任務を行なわせた場合、遺言者の別段の意思表示がないのに第三者にその任務を行なわせた場合、履行補助者を使用した場合、遺言執行者は、第三者又は履行補助者の行為について全責任を負います。
遺言執行者の復任を許す遺言は、遺言者死亡の時から効力を生じます。
(遺言の効力の発生時期)
民法第985条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
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