共同相続人の全員の登記申請・・・
登記の申請は、登記権利者と登記義務者の共同申請に基づいてするのが原則です。
しかし、相続登記は、登記義務者となるべき被相続人が死亡しているので、例外的に登記権利者である共同相続人だけですることができます。
<共同相続人の全員の登記申請書のひな形>
登記申請書
登記の目的 所有権移転
原因 平成**年**月**日相続
相続人 (被相続人 山田太郎)
東京都杉並区********
持分 3分の1 山田太郎 印
東京都杉並区********
持分 3分の1 山田次郎 印
東京都杉並区********
持分 3分の1 田中花子 印
連絡先の電話番号 03-****-****
添付書類
登記原因証明情報 住所証明書 申請書の写し
□登記済証の交付を希望しません。
平成**年**月**日申請 東京法務局杉並主張所 御中
課税価格 金***円
登録免許税 金***円
不動産の表示
不動産番号 **********
所在 杉並区*****
地番 **番
地目 宅地
地積 ***平方メートル
価格 金***円
不動産番号 **********
所在 杉並区*****
家屋番号 **番
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 ****平方メートル
2階 ****平方メートル
価格 金***円
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「相続させる旨」の遺言の相続登記・・・
特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、当該遺産を当該相続人に単独で相続させる遺産分割の方法を指定したものと解すべきであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思にかからせたなど特段の事情がない限り、何らの行為を要せずして当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに当該相続人に相続により承継されるとされます。
登記実務では、「相続させる」旨の遺言に基づき、当該相続人による単独相続の登記申請が認められています。
法定相続分の額を下回る価額の特定物の遺産を「相続させる」旨の遺言は、相続分の指定を伴うものではなく、当該特定の遺産を取得した相続人は、法定相続分の額に満つるまで他の遺産を取得することができると解した事例があります。
当該遺言に遺言執行者が指定されている場合も、遺言執行者には遺言に基づき当該相続人対して相続による所有権移転登記手続をすべき義務はないとされています。
所有権移転登記とは
所有権保存登記又は前の所有権移転登記の名義人から所有権の移転を受ける場合にされる。
登記の目的には「所有権移転」と、登記原因及びその日付には「平成○年○月○日売買(又は贈与、相続等)」と記録され、権利者として新しい所有者の住所・氏名が記録される。
合計7人の共同相続人中1人のAに対して特定不動産を「相続させる」との文言を使用した被相続人の公正証書遺言があるが、Aが公正証書遺言に基づく登記をする前に他の相続人Bの申請により相続人全員の保存行為として相続登記がなされた場合、その後、この相続登記を抹消することなく、Aの単独申請による相続を登記原因とする登記申請は受理されず、この場合には、A他6名名義の相続による所有権移転登記をA名義に更正する更正登記手続によるとされています。
所有権保存登記とは
新築などで、初めて甲区に記録される場合に、所有権保存登記がされる。
所有権保存登記の申請をすることができる者は、表題部の所有者等に限定されている。
登記の目的に「所有権保存」と記録され、所有者の住所・氏名が記録される。
登記原因及びその日付は登記されない。
更正登記とは
登記事項に「錯誤又は遺漏」があった場合に、当該登記事項を訂正する登記をいう。
変更登記が、登記事項が事後的に変動した場合に行われるのに対し、登記事項が当初から誤っていた場合に行われる点で異なる。
土地の地目・地積等が誤っていたとき、建物の種類・構造・床面積等が誤っていたときは、更正登記がされる。
遺言者が、その者の法定相続人の1人であるAに対して「不動産をAに相続させる」旨の遺言をして死亡したが、すでにAが遺言者より先に死亡している場合には、Aに直系卑属がいる場合でも、遺言書中にAが先に死亡している場合には、Aに代わって直系卑属に相続させる旨の文言がない限り、民法994条1項を類推適用して、不動産は遺言者の法定相続人全員に相続させると解すべきであり、その相続登記をすべきであるとされています。
民法第994条
1.遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2.停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
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遺産分割の対抗要件である登記・・・
相続財産中の不動産につき、遺産分割により権利を取得した相続人は、登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、法定相続分を超える権利の取得を対抗することができません。
相続人の債権者が相続人に代位して、遺産である土地につき、「登記原因昭和**年**月**日相続、取得者A持分3分の2、B持分3分の1」という共同相続の登記をした場合、代位登記前に遺産分割協議が成立しているとしても、共同相続人は相続人の債権者に対して代位登記抹消の承諾を請求することはできないとされます。
抹消登記とは
既存の登記の権利が最初から存在しなかったか、事後的に消滅した場合には、抹消登記がされる。
遺産分割の調停で遺産である不動産の共有取得が決まって、その登記が未了の間にされた一部共有者の債権者による共同相続の代位登記、共有者の持分に対する差押登記の場合も同様です。
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不実登記の抹消請求・・・
共同相続人Aは、相続不動産につき、無断で、単独名義の相続登記をした場合、共同相続人Bは、次のことができるとの説があります。
①Aに対して登記を共有登記に改めるため全部の抹消を求めることができる。
②Aから権利を取得した第三取得者の利益に害するおそれがある場合には更正登記のみ許され、そのおそれがないときは抹消登記を請求できる。
③Aの登記は、その持分の範囲で事実に合致しており、Bは自己の持分についてだけ更正登記が許される。
④持分についての移転登記が許される。
判例は③の説をとるとされています。
更正登記とは
登記事項に「錯誤又は遺漏」があった場合に、当該登記事項を訂正する登記をいう。
変更登記が、登記事項が事後的に変動した場合に行われるのに対し、登記事項が当初から誤っていた場合に行われる点で異なる。
土地の地目・地積等が誤っていたとき、建物の種類・構造・床面積等が誤っていたときは、更正登記がされる。
所有権移転登記とは
所有権保存登記又は前の所有権移転登記の名義人から所有権の移転を受ける場合にされる。
登記の目的には「所有権移転」と、登記原因及びその日付には「平成○年○月○日売買(又は贈与、相続等)」と記録され、権利者として新しい所有者の住所・氏名が記録される。
被相続人が生存中に売買の原因として相続人1人に対して所有権移転登記をした場合、被相続人の死亡後に、この登記を、相続を原因とするものに改める更正登記手続をすることはできないとされています。
共有者の1人は、その持分権に基づき、共有不動産に加えられた妨害を排除することができます。
共同相続人の1人が共同相続人4人名義の相続登記をした後に、自己の共有持分を第三者に譲渡して、持分移転登記がされている場合、その譲渡が無効であるときは、その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているということができるから、他の共有者は、共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独で、その持分移転登記の抹消登記を請求することができます。
Aは、父の不動産を共同相続したが、共同相続人に無断で自己名義に単独相続登記後に死亡した場合、共同相続人Bは、単独でAの相続人に対して、法定相続分による更正登記手続を請求することができます。
この場合、Bは他の共同相続人の持分についても更正登記手続を請求できるとした事例があります。
しかし、共有者の抹消登記請求は自己の持分に限ると解した事例もあります。
BがAも相続している場合、この相続後の持分にする更正登記手続は認められません。
抹消登記とは
既存の登記の権利が最初から存在しなかったか、事後的に消滅した場合には、抹消登記がされる。
共同相続人の1人が相続開始前に被相続人所有不動産について実態と符合しない不実の所有権移転登記を経由した場合、他の共同相続人による保存行為として登記の全部抹消登記請求を認めた事例があります。
所有権保存登記とは
新築などで、初めて甲区に記録される場合に、所有権保存登記がされる。
所有権保存登記の申請をすることができる者は、表題部の所有者等に限定されている。
登記の目的に「所有権保存」と記録され、所有者の住所・氏名が記録される。
登記原因及びその日付は登記されない。
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