遺留分の減殺の判例・・・

遺留分の減殺の判例・・・

遺留分権利者及び承継人は、遺留分を保全するに必要な限度で、遺贈及び民法1030条に掲げる贈与の減殺を請求することができます。

民法第1030条 贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によってその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする。

(遺贈又は贈与の減殺請求)
民法第1031条 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

自己を被保険者とする生命保険契約の契約者である被相続人が死亡保険金の受取人を変更する行為は、民法1031条に規定する遺贈又は贈与に当たるものではなく、これに準ずるものということもできないと解されています。

遺留分の減殺の意思表示をする方法について、特に定められた方式はありません。

遺留分減殺請求権を行使する場合、減殺請求権者は、その遺留分を保全するのに必要な限度を指定し、その限度で減殺の意思表示をして、初めて被相続人のなした遺贈等は右限度で無効となり、遺贈等の対象物件は減殺請求権者に帰属することになります。

遺留分を保全するのに必要な限度とは、民法1029条、1030条に則り遺留分算定の基礎となる財産の価額に対するある割合で示すべきであり、被相続人の財産の4分の1という財産の価額に基づかない単なる割合を示したのみの減殺の意思表示はその効力を生じないとした事例があります。

(遺留分の算定)
民法第1029条 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。

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遺留分の減殺の判例2・・・

遺留分減殺の目的物(建物とその敷地)が性質上不可分のものである場合は全部について減殺請求権を行使することができ、超過部分の価額を遺留分権利者が返却すれば足りるとした事例があります。

債権者は、債権者代位権により、自己の債権を保全するため、その債務者に属する権利を行なうことができます。

債務者の一身に専属する権利は除外されます。

(債権者代位権)
民法第423条 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

遺留分減殺請求権は、遺留分権利者がこれを第三者に譲渡するなど、権利行使の確定的意思を外部に表明したと認められるなど、特段の事情のある場合を除き、遺留分権利者の行使上の一身専属権であり、遺留分権利者の債権者は、遺留分権利者に代位して遺留分減殺請求権を行使することはできません。

5名は共有で不動産の贈与を受けたが、4名は持分放棄によって当該不動産は民法255条の規定によって1名の単独所有に帰した場合、1名は直接の受贈者4名から取得した第三者というべきであり、減殺の目的物が受贈者から第三者に移転した場合でも、それが法律の規定による移転等の如く取引行為に基づかないときは、遺留分権利者より第三者への取戻請求を認めても、これによって取引の安全が害されることはないので、このような場合には民法1040条1項但書の場合に準じ遺留分権利者より、その1名に対して直接減殺請求の意思表示をなし得ると解した事例があります。

(持分の放棄及び共有者の死亡)
民法第255条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

(受贈者が贈与の目的を譲渡した場合等)
民法第1040条 減殺を受けるべき受贈者が贈与の目的を他人に譲り渡したときは、遺留分権利者にその価額を弁償しなければならない。ただし、譲受人が譲渡の時において遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときは、遺留分権利者は、これに対しても減殺を請求することができる。
2 前項の規定は、受贈者が贈与の目的につき権利を設定した場合について準用する。

遺言執行者がある場合、相続財産である不動産につき遺留分減殺を原因とする所有権移転等の登記を求める訴えは、相続財産の管理、処分に関する訴訟であるからその被告適格を有するものは相続人ではなく遺言執行者であるとされます。

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遺留分の減殺の順序 ・・・

遺贈を減殺した後でなければ、贈与を減殺することはできません。

(贈与と遺贈の減殺の順序)
民法第1033条 贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。

遺贈の減殺をもって遺留分を保全するに足る限り、贈与の減殺請求はその効力を生じないとされます。

遺留分の減殺は、遺贈、死因贈与、生前贈与の順で行い、「相続させる」遺言は、遺贈と同様に解するとした事例があります。

遺贈は、その価額の割合に応じて減殺します。

遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従います。

(遺贈の減殺の割合)
民法第1034条 遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

共同相続人の遺贈を減殺する場合、その受遺者の遺留分を超える額の部分を減殺の対象とした事例があります。

贈与の減殺は、後の贈与から始め、順次に前の贈与を減殺します。

(贈与の減殺の順序)
民法第1035条 贈与の減殺は、後の贈与から順次前の贈与に対してする。

同日に登記された2つの贈与は同時にされたものと推定されます。

時期を異にする数個の贈与に対して遺留分の減殺が概括的にされたとしても、遺留分を保全する限度でその効力を生ずると解されるから右減殺方法が違法であるとはいえないとした事例があります。

概括的(がいかつてき)とは、物事を大まかにまとめたさまをいいます。

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遺留分の減殺の意思表示・・・

遺留分権利者が遺留分の減殺をするときは、まず減殺の意思表示を被減殺者に到達させることが必要です。

遺留分の減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈のあったことを知ったときから、1年間これを行なわないときは、時効によって消滅します。

相続の開始の時から10年を経過したときも同じです。

(減殺請求権の期間の制限)
民法第1042条 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。

相続問題の処理を委任された弁護士が消滅時効完成前に遺留分減殺請求権を行使せず、委任者に損害を被らせたとして損害賠償を命じられた事例があります。

遺留分権利者が遺贈の無効を信じていたため、遺留分減殺請求をしなかったことが、もともと肯定しえる特段の事情が認められないとして、遅くとも右遺贈に係る遺言無効確認訴訟の一審敗訴判決時から減殺請求権の消滅時効の進行が開始するとされた事例があります。

減殺すべき遺贈のあったことを知った時とは、当該遺贈を目的とする遺言が真正に成立し、その内容が遺留分を侵害するものであることを認識した時をいい、遺留分権利者が遺言書のあることを知ってもこれが偽造であることを信じて成立を争い、仮定的に受遺者がその遺言に基づく遺贈を放棄したことを抗弁として主張したことをもって減殺すべき遺贈のあったことを知ったものと直ちに断じ得ないとした事例があります。

被告が遺言書の検認手続において、遺言の存在を知ったとしても、原告の遺贈の主張に対して遺言の効力を争っており、しかも遺言の効力について確定判決があるわけでもない以上、いまだ減殺すべき遺贈のあったことを知ったということはできないとした事例があります。

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