手形・小切手訴訟の注意とは・・・
手形や小切手の取立訴訟には、手形訴訟手続という特別な手続があります。
通常の訴訟手続と違った方法で審理が進められますので、通常の訴訟なら1年かかりますが、2~3ヶ月で決着がつく場合もあります。
ただし、手形・小切手金の取立であっても通常の訴訟手続によることもできます。
手形・小切手上の権利は、短時間で時効にかかり消滅してしまいます。
約束手形の振出人に対しては満期の日から3年、裏書人に対しては1年で時効にかかります。
小切手の場合には、呈示期間である振出日の翌日より10日経過後6ヶ月で時効にかかります。
ですので、権利が時効消滅しないうちに訴状を出して訴訟を進める必要があるのです。
手形上の権利が時効にかかったときには手形金請求でなく、手形の振り出しや裏書譲渡の原因となった売買や貸借の売掛金請求として訴訟をすることになります。
ちなみに売掛金の時効期間は5年です。
手形の額面金額、支払期日、支払地、支払場所、振出日、振出地、振出人、受取人などの記載事項は、手形要件といい、必ず記載しておかなければ手形上の権利行使ができないことになっています。
手形のどこかの欄が白地になっているときは、補充権が与えられていますから、補充記入しておく必要があります。
振出日が記載漏れの場合、実際の振出日がわかればそれを書きますが、分からないときは満期日よりも前の日を書きます。
手形の振出人に対する請求なら、裁判官に注意されて記入しても差し支えありませんが、裏書人に対する請求は、満期日に適法の呈示をし、それが証明されることが必要です。
それをしていないときは請求権がなくなりますので、裁判の前に補充する必要があります。
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手形・小切手訴訟の特徴とは・・・
手形・小切手金の請求訴訟は普通の訴訟手続で行うこともできますが、手形訴訟手続という特別の手続で行うこともできます。
どちらを選ぶかは原告の自由ですが、訴状に「手形訴訟による審理並びに裁判を求める」と記載しない限り、普通の訴訟を起こしたものと扱われます。
手形訴訟手続によりますと、裁判は手形の支払地管轄の裁判所に起こせることになりますが、証拠調べは原則として書証に限られ本人尋問はできますが、文書の真否や手形呈示に関する事実だけに制限され、証人尋問はできません。
また、被告からの反訴も起こせません。
原告勝訴の判決には無担保の仮執行宣言が付けられ、被告から手形判決に対する異議申立てをされても、そのまま強制執行をすることができます。
被告が手形判決に付せられた仮執行宣言による強制執行の停止を求めるには、その理由の疎明をしなければならないだけでなく、保証金の額も請求金額とほぼ同額の金額を要求されますから、強制執行の停止をすることは難しいのです。
ですので、訴状を出してから強制執行するまで2~3ヶ月ぐらいでできるのです。
しかし、不服の申立はできます。
判決送達の日から2週間以内に異議申立てをすると、通常訴訟手続による審理のしなおしとなります。
ただ、異議申立てをしても執行停止ができないときは、強制執行することができます。
異議申立て後の通常手続による判決には、あらためて控訴ができます。
また原告は、手形訴訟手続の途中から通常訴訟への移行申立ができます。
手形訴訟に関する規定は、小切手による訴訟の場合にも準用されます。
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手形・小切手訴訟の訴状の作成・・・
手形訴訟手続によって訴訟を進めたいときは「手形訴訟による審理並びに裁判を求める」旨を訴状に記載しなければなりません。
これは請求の趣旨のところに記載します。
請求の趣旨は、元本と利息などの金額だけを書きます。
手形金の利息は年6%と規定されています。
請求の原因では、原告が手形の所持人であること、手形の内容、裏書が連続している事を記載します。
訴状には手形の写しを添付することになっていますので、手形とそれについている付箋のそれぞれをコピーし、手形の本体を甲1号証の1、付箋を甲1号証の2というように番号をつけて、訴状の正本・副本にそれぞれ添付しておきます。
小切手の場合には、請求の趣旨の書き方は、裏書人を被告とする場合もしない場合も、それぞれ約束手形の場合と同じです。
この場合にも請求の趣旨には「小切手訴訟による審理及び裁判を求める」と記載する必要があります。
小切手の場合は、拒絶証書の作成の代わりに次のいずれかがついていればよいことになっています。
①小切手に呈示の日を表示して記載し、かつ日付を付した支払人の宣言(銀行の付箋)
②適法の時期に小切手を呈示したが支払わなかった旨を証明し、かつ日付を付した手形交換所の宣言(手形交換所の付箋)
これらの付箋がついてないときは、拒絶証書を作成しない限り、裏書人に対する請求はできなくなります。
統一小切手用紙では拒絶証書義務が免除されているので、訴状にそのことを記載すれば足ります。
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