離婚訴訟の親権者を父に指定・・・

離婚訴訟の親権者を父に指定・・・

離婚の事案

夫と妻には、長男、二男が生まれた。

夫婦仲が悪化し、妻は、長男、二男を残したまま、夫方を飛び出し、離婚調停を申し立てて、実家に帰った。

その際、2人の子に妻とともに夫方を出るかどうかたずねたところ、長男は妻と同行することを望み、二男は夫方に残ることを望んだので、妻は、長男のみを連れて実家に戻り、以来、夫が二男を、妻が長男を養育してきている。

夫は、二男と2人暮らしで、農業協同組合に勤務し、二男は小学校に入学している。

夫方の近くに夫の姉が1人暮らしをしており、この姉や兄も二男の世話をしている。

夫は、妻に対して、離婚等を求める訴訟を提起した。

離婚の判例

①一審は、離婚を認め、長男、二男の親権者を妻と定めた。

②夫は、一審判決中、親権者の指定部分についてのみ不服申立をした。

控訴審は、以下のように述べて、原判決の一部を取消し、長男の親権者を妻、二男の親権者を夫と指定した。

本件においては、このように既に夫と妻は完全に別居し、その子を1人ずつ各別に養育するという状態が2年6月も続いており、その間、それぞれ異なる生活環境と監護状況の下で、別居当時、5歳4月であった二男は8歳近くになって小学校1年生と終えようとしており、9歳になったばかりで小学校3年生であった長男は11歳半となり、やがて5年生を終わろうとしている状況にある。

離婚に際して子の親権者を指定する場合、特に低年齢の子の身上監護は一般的には母親に委ねることが適当であることが少なくないし、前記認定のような夫側の環境は、監護の条件そのものとしては、妻側の環境に比し弱点があることは否めないところであるが、夫は、前記認定のとおり、昭和53年8月以降の別居以前にも、妻の不在中、4歳前後のころの二男を約8ヶ月間養育したこともあって、現在と同様な条件の下において不適応を来したり、格別不都合な状況が生じているような形跡は認められないことに照らすと、現在の時点において、それぞれの現状における監護状態を変更することはいずれも適当でないと考えられるから、長男の親権者は妻と、二男の親権者は夫と定めるのが相当である。

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長女を父で長男を母の親権者の指定・・・

離婚の事案

夫と妻は、長女と、長男が生まれた。

夫は妻に対して、離婚、2人の子の親権者を夫と指定することを求める訴訟を提起し、妻は夫に対して離婚、2人の子の親権者を妻と指定すること等を求める反訴を提起しました。

離婚の判例

①一審は、夫と妻との婚姻関係は主に夫の飲酒の上での妻に対する度重なる暴力により破綻したとして、妻の離婚請求を認容し、有責配偶者である夫の離婚請求を棄却した。

親権者については、2人の子が約5年にわたり夫のもとで生活しているとして、2人の子の親権者を夫と指定した。

②控訴審は、以下のように述べて、原判決の一部を取消し、長男の親権者を妻と指定した。

長女の親権者は一審どおり夫。

父母が離婚するに際し、未成年の子の親権者の指定は、いずれが親権を行使する方が子の福祉にとって望ましいか、という観点により決定される。

右に認定した事実によれば、夫も妻も、一応はその監護能力について格別の長短は見当たらず、親権を行使することについての熱意も同等のものと認められる。

ところで、証拠によれば、夫は夫婦別居中、2人の子、とりわけ長男に対してせっかんを加えるなど暴力を行使していることが認められ、両者の間に健全な父子関係が形成されているかどうかが多分に危惧されるところ、このことと前認定のとおり本件婚姻が両者の生活の相違と、夫から妻に対する有形力の行使等により別居を繰り返した挙句破綻するに至ったという経緯に照らすと、夫が2人の子の親権者として妻より適当であるとは必ずしも言い難いばかりが、父親の暴力行使の対象となり易い息子については、むしろ、夫は、親権者として多分に懸念されるところがあるということができ、妻の方が親権者として適任でないかと考えられるのである。

一般に、複数の未成年者の子はできるだけ共通の親権に服しめるほうが望ましいが、ある程度の年齢に達すれば、その望ましさは必ずしも大きいものではないと考えられる。

本件の場合、長女は15歳、長男は12歳であって別々の親権に服させることが不合理であるような場合ではない。

また、一応、5年間以上も夫の許で監護養育されてきた事実も軽視できないが、これは夫妻両者の合意に基づくものではない。

長女は高校進学の年齢であり、その生活環境に変更を加えるのは好ましくなく、また、証拠によれば、妻との同居を必ずしも望んでいないと考えられる。

次に、長男は中学進学の年齢になったばかりであり、また、証拠によれば、妻と夫の選択に迷っていると考えられる。

以上の検討結果、結局、当裁判所は、長女は父、長男は母とそれぞれ親権者を指定するのが相当であると判断する。

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夫婦別に親権者と監護権者の指定・・・

離婚の事案

妻と夫は、婚姻し、両者間に長女、長男、二女が生まれた。

夫は、会社員であり、妻は、結婚と同時に退職して専業主婦となった。

妻は、切迫流産の危険から入院したため、長女と長男は、両方の実家に預けられ、休日は夫が自宅に引き取って世話をした。

長男の幼稚園への登園許否が激しくなり、妻と夫は激しい口論をし、その後長男に下痢、嘔吐などの症状が出たため、長男は精神科に通院して治療を受けた。

妻の運転の仕方が原因で、夫は妻を殴打し、妻は、この暴力をきっかけに、翌日子供たち3人を連れて実家に帰り、以後夫と別居した。

妻と子供たちは、両親、兄、兄の妻、兄の子供2人とともに、実家の二世帯用住宅で安定した生活を送っている。

夫と子供たちは、別居後月1回、夏休みは約2週間、冬休みは3日程面接交渉を行なっており、子供たちも夫との交流を楽しんでいる。

しかし、長女は夫にスキーに連れて行ってもらった際、無理にスキーをさせられたことなどから夫との面接交渉を嫌がるようになり、以後は面接交渉に参加していない。

妻は、離婚調停の申立をし、「妻と夫は離婚する。未成年者らの親権者指定については審判によって定める」旨の調停が成立し、その結果妻が未成年者3名の親権者を妻と指定する旨の審判申立をした。

夫の収入は1000万円を超えており、子供1人当たり月額3万円の養育費を送金している。

離婚の判例

①原審は、以下のように述べて、長女及び長男の親権者は夫、監護者は妻と定め、二女の親権者は妻と定めた。

未成年者らの現状を考えると、夫が未成年者らを引き取った場合、現状以上の監護が可能であるかどうか疑問であるといわざるを得ない。

夫は父親として懸命な努力をするであろうことは考えられるが、未成年者らが過去において比較的神経質であったことを考えるならば、あえて問題が認められない現状を変えることは、未成年者らの福祉に反するものといわなければならない。

そうだとすれば、妻を未成年者らの監護者と指定し、監護教育させることが望ましいものということができる。

ただし、未成年者らの親権者については、未成年者らの年齢を考慮して年長である長女、長男の親権者は夫と定め、年少の二女の親権者は妻と定めるのが相当である。

すなわち、未成年者らの人格形成の観点から検討すると、特に年長の長女、長男と夫との従来の情緒的関係を見ると、夫の関与が不可欠であると考えられる。

夫には多少一方的で強引な傾向があるとしても、夫のこれまでに果たした父親としての未成年者らに対する責任感、愛情は他をもって代替できないものということができ、これを継続させることが未成年者らの福祉に沿うものということができる。

父母の離婚によって単独親権者となることはやむを得ないことであるが、未成年者らの健全な人格形成のためには父母が協力することが可能である場合には、協力関係が形成されることが望ましいことはいうまでもなく、幸いにも本件においては、妻と夫とは、未成年者らの養育全般について、その福祉に沿うように配慮し努力することができる能力を有するものと認められる。

②抗告審は、以下のように述べて、原審判の一部を取消し、長女、長男の親権者をいずれも妻とした。

本件において、出生後2年弱で夫と別居することとなった二女はもちろん、長女及び長男についても、特に妻に監護権のみならず、親権を与えることが不適切な事情も見当たらない。

また、もとより、両親が離婚したとしても、未成年者の健全な人格形成のために父母の協力が十分可能であれば、監護権と親権とを父母に分属させることもそれはそれとして適切な解決方法である場合もあるとしても、先に認定したとおりの妻と夫の性格、両者の関係等に鑑みると、本件において双方の適切な協力が期待され得る状況にあるとは思われず、前記のとおり監護者として適当な妻から親権のみを切り離して夫に帰属させるのが適当であるとは認め難い。

そして、先に認定したとおり、夫と未成年者らとの関係は現在概ね良好であるので、親権者を妻と定め、夫は親権者とならなくても、夫としては、従前のような面接交渉を通じて、未成年者らに対し愛情をもって接し、良好な父子関係を保つことは可能であると考えられる。

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