養育費の支払方法・・・

養育費の支払方法・・・

養育費は、子供の成長過程に応じて生じる監護の費用ですので、定期的に支給されるべきもので、通常毎月一定の金額を銀行口座などに振り込んで支払ってもらうのが通常です。

養育費の支払義務者の資力によっては、将来支払がなされるか不安になったり、現在は就職して収入もあるものの将来退職して、収入がなくなることもあり得るので、一括支払いをしてもらいたいとも考えられます。

しかし、養育費は、定期的な支払いが原則とされています。

養育費を一括で支払ってもらうことは、原則としてできませんが、離婚の協議や調停において、相手方の同意のもとに養育費を一括で支払うように定めることはできます。

ただし、この場合には、資力の関係から総額は少なくなることが通常です。

相手が外国人で海外に住んでいる場合のように、将来にわたって養育費の定期的な支払義務が履行されることが規定できない特別な事情があるときには、家庭裁判所の審判でも一括支払が認められることがあります。

調停などで、養育費を一時金として支払い、将来は養育費の請求をしない旨の調停における合意がある場合には、将来、再度養育費を請求することは、調停成立後にその内容を変更しなければならない事情の変更が生じていない限り、請求は認められません。

養育費について、毎月の支払義務を定めた場合でも、養育費の支払を定めた合意書や公正証書の中で、次のように期限の利益喪失約款を定めることがあります。

支払義務者が定められた月額養育費の支払を2ヶ月以上遅滞したときは、分割払いの期限の利益を喪失し、支払義務者は、権利者に対し、その遅滞額及び将来にわたる未払月額養育費の合計額を一括して直ちに支払う。

このような期限の利益の喪失の定めは、養育費の場合には、無効であり、将来の分についても一括で支払ってもらうことはできないとされます。

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成年の子供の養育費・・・

養育費は、自力で生活できない子供の監護に要する費用であり、子供の養育費の支払を請求できるのは、原則として子供が成年に達するまでです。

20歳未満の子供でも、義務教育終了後、既に働いて経済的に自立している場合には養育費の負担は必要ありません。

成年に達した子供についても、親に養育費の負担を求めることがやむを得ない事情がある場合には、例外的に養育費を請求することができるとされます。

やむを得ない事情が認められる場合としては、病気や心身の障害のために自活することができない子供の治療費や生活費、実際に大学や専門学校に在学していて、働きながらでは学業の継続が困難である場合があたり、この場合には、その学費や生活費の負担を求めることができるとされます。

4年制大学に進学した成年に達した子供の学費・生活費も養育費として負担しなければならないかについては、次の事例があります。

4年制大学への進学率が相当高い割合に達しており、かつ、大学における高等教育を受けたか否かが就職の類型的差異につながっている現状においては、子が義務教育に引き続き高等学校、そして引き続いて4年制の大学に進学している場合、20歳に達した後も当該大学の学業を続けるため、その生活時間を優先的に勉学に充てることは必要であり、その結果、その学費・生活費に不足を生ずることがあり得るのはやむを得ないことというべきである。

このような不足が現実に生じた場合、当該子が、卒業すべき年齢時まで、その不足する学費・生活費をどのように調達すべきかについては、その不足する額、不足するに至った経緯、受けることができる奨学金に種類、その金額、支給の時期、方法等、いわゆるアルバイトによる収入の有無、見込み、その金額等、奨学団体以外からその学費の貸与を受ける可能性の有無、親の資力、親の当該子の4年制大学進学に関する意向その他の当該子の学業継続に関連する諸般の事情を考慮した上で、その調達の方法ひいては親からの扶養の要否を論じるべきものであって、その子が成人に達し、かつ、健康であることの一時をもって直ちに、その子が要扶養状態にないと断定することは相当ではない。

実務上、調停や当事者間の協議や、家庭裁判所の調停において、養育費の支払を将来大学進学した場合に大学卒業までと定めることがあります。

しかし、当事者間に合意が成立しない場合に、家庭裁判所の審判において、将来、子供が大学進学を予定していることを理由として大学卒業までの学費・生活費まで養育費として支払を求めることは、認められないと考えられます。

この場合には、成年に達した後に学費や生活費が不足することが明らかになった時点で、家庭裁判所に、新たに監護親が従前の養育費の支払の期間延長の調停を申し立てるか、子供の側から扶養の申立をすることになります。

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養育費と債務名義・・・

離婚の話し合いで、養育費の支払の合意をし、そのことを合意書や協議書などの書面にしたとしても、将来養育費の支払がなされなくなった場合には、家庭裁判所から支払の督促をしてもらったり、国家権力により強制的に取り立てる強制執行手続の申立をすることはできません。

養育費を裁判所によって強制的に支払ってもらうようにする手続きとしての強制執行は、その前提となる養育費の支払義務の存在が裁判所などによって公に確認された書面が必要となります。

このような強制執行によって実現されることが予定されている、金銭などの支払請求権の存在や範囲、当事者を記載した書面を債務名義といいます。

債務名義となるものには、判決、家庭裁判所の調停調書又は審判書、将来強制執行されることを認める内容の記載がある公正証書などがあります。

養育費について当事者間の協議で取り決めしたにすぎない場合に、支払がなされなくなったときは、家庭裁判所に養育費の支払を求める調停を申し立てる必要があります。

また、協議で取り決めた場合、公証役場に行って、合意書や協議書に記載された内容と同じ内容を公正証書にし、その中で将来履行がなされなくなったときには強制執行されても異議のないことを記載した執行受諾文言を入れておけば、この公正証書によって強制執行することができます。

養育費の強制執行については、通常の債権の強制執行の場合より債権者に有利な定めがあります。

養育費の支払について、債務名義として調停調書や公正証書を作成するときには、将来の強制執行を円滑に進めるために、その金銭の支払が養育費としてなされるものであることを明確にしておきます。

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