法人との契約締結とは・・・
はじめての取引の場合、相手が法人の場合には、法人として本当に存在しているのかを会社の登記事項証明書を取得して確認します。
登記事項証明書は、法務局で取得することができます。
登記事項証明書では、商号、本店所在地、資本金の額、設立年月日、事業目的、役員構成などを確認します。
法人と契約を締結する場合、実際に締結手続きを行なう相手として、代表取締役など代表権限がある人、あるいは代表者から契約締結権限について代理権を与えられている人、あるいは代表者から契約締結権限について代理権を与えられている人と締結する必要があります。
代表者から営業上の代理権を与えられている者として商業使用人の制度があります。
商業使用人とは、営業を補助するために商人に使用される人です。
商法および会社法は商業使用人として、支配人、営業・事業に関するある種類または特定の事項の委任を受けた使用人、物品の販売等を目的とする店舗の使用人を規定しています。
支店長、担当部長、担当課長が、商業使用人にあたります。
商業使用人は、商人に代わって法律行為をする包括的な代理権があるとされています。
支配人とは、営業主から営業所や本店または支店における営業等の主任者として選任された商業使用人をいいます。
支配人は、包括的な代理権があるとされ、その代理権に制限をくわえても善意の第三者には対抗できません。
支配人ではないものの、外見上は、営業所や本店または支店の主任者らしい名称を付した使用人を表見支配人といいます。
このような人は支配人と同等の包括的な代理権が与えられているものとされます。
支配人、営業部長、支社長、支店長、営業所長などがこれにあたります。
それらの者との間の契約は、たとえ内部的に代理権が制約されていても、会社は相手方にその無効を主張できません。
「支店長代理」「支店次長」「支店庶務係長」「支店主任」は、表見支配人にあたりません。
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契約書を作成する・・・
◇契約書の必要性
本来、契約は当事者の合意により成立するので、書面の作成は必ずしも必要ではありません。
書面がなくても契約は成立します。
ただし、保証契約は、書面でなければ、その効力は生じないことになりました。
また、特別法で特定の契約につき書面の作成・交付が必要とされるものもあります。
特定の契約でなくても、原則として取引に際しては契約書を作成する必要があります。
契約内容を明確にし、訴訟や仮差押などの法的手続きに必要だからです。
◇期限の利益喪失条項
契約で履行期限が定められている場合、期限が到来するまでの間は債務の履行が猶予されます。
このように期限の到来まで債務者が受ける利益を期限の利益といいます。
民法は、下記の場合に、債務者は期限の利益を主張することができないと規定しています。
①破産手続開始の決定を受けたとき
②債務者が担保を滅失、損傷、減少させたとき
③債務者が担保提供義務を怠ったとき
債務者は、約束の期限が到来しなくても、直ちに債務を弁済しなければなりません。
実務では、民法に定める場合の他に、特約で期限の利益を喪失させる合意をしています。
これを期限の利益喪失約款といいます。
期限の利益喪失約款は、下記の場合に意味があります。
①代金債権の期限は未だ到来しないものの、債務者が売主以外の他の第三者に対し振り出した手形が不渡りになったとき、また、債務者が他から差押を受けたときなど、債務者に信用不安があっても期限が到来していないため債権回収行為に入ることができない場合があります。
このような場合に、契約締結時に「債務者が1回でも不渡事故を起こしたとき」「債務者に差押命令の申立があったとき」は期限の利益を喪失する、と合意しておけば、すぐに債権を回収できます。
②貸金債権について、債務者が支払困難になり、分割弁済で和解をしたところ、第1回の弁済期から支払わなくなってしまった場合、そのままでは各分割弁済時に、しかも期限の到来した分割金合計額しか権利行使ができないということになります。
このような場合には、「分割金の支払いを1回でも怠ったとき」には、分割金のすべてについて期限の利益を喪失する、と合意しておけば、債務者は残額を一時に支払わなければならなくなり、債権者は直ちに貸金全額を返還請求できることになります。
◇利息・損害金条項
利息・損害金に関する合意がない場合は、買主が代金を支払わないときに、原則3%の損害金しか請求できません。
貸金債権の利息については、利息制限法により次の制限があり、これを超える約束をしても超える部分は無効となります。
元本が10万円未満の場合 | 年20% |
元本が10万円以上100万円未満の場合 | 年18% |
元本が100万円以上の場合 | 年15% |
損害金についても、賠償額の元本に対する割合が、上記制限率の1.46倍を超える約束しても、その超過部分は無効になります。
◇契約解除条項
売買契約における代金支払期限より前に買主が不渡を出した場合など、信用不安を起こしても期限が来ていないので、売主は何ら法的手続きを取ることが出来ないことがあります。
買主は債務不履行がなくても、売主は契約を解除して商品を取り戻すなどの行為が出来るように、法定の解除原因のほかに、売主・買主間の合意で解除原因を定めておくことができます。
◇公正証書作成条項
「甲は甲の費用負担において、いつでも本契約について強制執行認諾約款を付した公正証書の作成に応ずる」という趣旨の規定を設けておけば、公正証書を作成することによって訴えを提起する手間を省くことができます。
◇管轄条項
契約書の中で「自己の住所地を管轄する裁判所を管轄裁判所とする」と合意をしておくと、その後の紛争に対処しやすくなります。
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連帯保証人等の条項とは・・・
◇連帯保証人
債務者が履行出来ない場合を考慮して保証人をつけてもらうときには、保証は連帯保証としてもらいます。
連帯保証人のほうが、単なる保証人より責任が重く、債権者に有利だからです。
商取引における保証は連帯保証と明記しなくとも当然に連帯保証になります。
詳しくは、保証人についてを参考にしてください。
◇所有権留保条項
売買契約においては、売買商品を担保にとっておきます。
そのためには、「売買商品の所有権は代金完済後移転する」という所有権留保特約の条項を契約書に記載しておくと、もし、買主が倒産した場合は、所有権留保特約に基づいて商品を取り戻すことができます。
◇手形発行約束
手形を発行することを合意する場合には、保証人の裏書をもらっておけば、手形上も保証したことになります。
◇印紙
契約書に印紙が貼っていない契約でも無効にはなりません。
印紙を貼っていないからといって、私人と私人の関係を律する民法上の契約の効力には影響を与えません。
しかし、契約としては有効でも、印紙の貼付のない契約書は、印紙税法により、本来の印紙額の3倍の過怠税を徴収されるので、印紙は貼る必要があります。
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