自分で会社設立しますか?
ご自分で会社を設立するならまずはクリック!!
Contents
役員選任決議取消の訴え 役員が退任した場合と訴えの利益・・・
最判昭和45年4月2日(株主総会決議取消、株主総会決議無効確認請求事件)
民集24巻4号223頁、判時592号86頁、判夕248号126頁
<事実の概要>
Xは、Y株式会社の発行済株式数の約5分の1を有する個人株主である。
Xは、Y社創設以来その取締役でもあったが、昭和40年の定時株主総会では取締役として再任されなかった。
そこで、Xが本件株主総会決議の取り消しを求め、複数の法令・定款違反を根拠に提訴した。
第1審はXの請求を認容したが、Y社控訴。
控訴審でY社は、本件株主総会後に、任期満了による役員改選のための株主総会が開催され、新たに適法な役員改選が行われたため、本件訴訟の訴えの利益がないと主張した。
控訴審はY社の主張に対し、形成の訴えは、その出訴要件が具備している限り訴えの利益が認められるのが原則であるものの、形成権発生後の事情の変動により、判決しても何ら具体的実益のない場合には訴えの利益を欠くに至るところ、役員の改選によりXが取り消しを求める選任決議に基づく役員が現存しないことから訴えの利益を欠くに至ったものとして、第1審を変更してXの請求を却下。
これに対してXが上告した。
Xの上告理由では、取締役選任決議の取り消しを求める利益はその地位を喪失させることに加え、会社が受けた損害を回復させるための前提として取締役ではなかったことを確定することにあるところ、後者の利益については失われないと主張している。
<判決理由>上告棄却。
「形成の訴は、法律の規定する要件を充たすかぎり、訴の利益の存するのが通常であるけれども、その後の事情の変化により、その利益を欠くに至る場合がある・・・。
しかして、株主総会決議取消の訴は形成の訴であるが、役員選任の総会決議取消の訴が係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によって取締役ら役員がもはや現存しなくなったときは、右の場合に該当するものとして、特別の事情のない限り、決議取消の訴は実益なきに帰し、訴の利益を欠くに至るものと解するを相当とする。
・・・本件につきかかる特別事情が存するか否かを見るに、・・・Xらの取消を求める株主総会の決議によって選任された取締役らは、いずれもすべて任期終了して退任しているというのであるところ、所論は、取消しうべき決議に基づいて選任された取締役の在任中の行為について会社の受けた損害を回復するためには、今なお当該決議取消の利益があるものと主張し、そういうところは、本件取消の訴は、会社の利益のためにすると主張するものと解されるところがある。
しかして、株主総会決議取消の訴は、単にその訴を提起した者の個人的利益のためのみのものでなく、会社企業自体の利益のためにするものであるが、Xは、右のごとき主張をするにもかかわらず本件取消の訴が会社のためにすることについて何等の立証をしない以上、本件について特別事情を認めるに由なく、結局本件の訴は、訴の利益を欠くに至ったものと認める外ない。」
スポンサードリンク
計算書類承認決議取消しの訴え・・・
最判昭和58年6月7日(株主総会決議取消請求事件)
民集37巻5号517頁、判時1082号9頁、判夕500号111頁
<事実の概要>
Y株式会社は、昭和45年、第42期の株主総会を開催したが、当時Y社は、「水俣病を告発する会」による株主運動の対象となっていた。
本件株主総会の会場の定員は1110名であったが、同会の一株株主を含め、約1400人の株主が参集したため、同会の会員であるXを含め、約300人の株主は会場に入り提出された修正動議も無視してわずか4分前後で審議を終え、計算書類等の承認を求める議案が可決されたとして総会を終了した。
そこでXらは、株主が会場に入場できなかったことや動議を無視して決議したことが株主総会決議取消事由に該当するとして、本件株主総会の決議取消しを求めて提訴した。
第1審はXの請求を認容した。
これに対しY社は、取消事由の存在について争ったほか、控訴審以降、現在(上告時点では第54期)においては、第42期の決算承認決議を取消しても実益がないこと、また、修正動議の無視の瑕疵については、その動議以上の水俣病の補償金及び対策費が支出され、その目的が達成されていることから、訴えの利益を欠くに至ったとの主張をしている。
原審は控訴棄却、
Y社は上告した。
<判決理由>上告棄却。
「株主総会決議取消の訴えのような形成の訴えは、法律に規定のある場合に限って許される訴えであるから、法律の規定する要件を充たす場合には訴えの利益が存するのが通常であるけれども、その後の事情の変化により右利益を喪失するに至る場合のあることは否定しえないところである。
しかして、XらのY社に対する本訴請求は、・・・Y社の第42回定時株主総会における「・・・第42期営業報告書、貸借対照表、損益計算書、利益金処分案を原案どおり承認する」旨の本件決議について、その手続に瑕疵があることを理由として取消を求めるものであるところ、その勝訴の判決が確定すれば、右決議は初めに遡って無効となる結果、営業報告書等の計算書類については総会における承認を欠くことになり、また、右決議に基づく利益処分もその効力を有しないことになって、法律上最決議が必要となるものというべきであるから、その後に右議案につき再決議がされたなどの特別の事情がない限り、右決議取消を求める訴えの利益が失われることはないものと解するのが相当である。
・・・本件につきかかる特別の事情が存するか否かについて検討する。
この点に関し、論旨は、本件決議が取消されたとしても、右決議ののち第43期ないし第54期の各定時株主総会において各期の決算案は承認されて確定しており、右決議取消の効果は、右第43期ないし第54期の決算承認決議の効力に影響を及ぼすものではないから、もはや本件決議取消の訴えはその利益を欠くに至ったというのであるが、株主総会における計算書類等の承認決議がその手続に法令違反等があるとして取消されたときは、たとえ計算書類等の内容に違法、不当がない場合であっても、右決議は既往に遡って無効となり、右計算書類等は未確定となるから、それを前提とする次期以降の計算書類等の記載内容も不確定なものになると解さざるをえず、したがって、Y社としては、あらためて取消された期の計算書類等の承認決議を行わなければならないことになるから、所論のような事情をもって右特別の事情があるということはできない。」
「また、論旨は、修正動議無視の瑕疵は、・・・右動議の目的がすでに達成されているので、右瑕疵は治癒され訴えの利益は失われたというが、XらのY社に対する本訴請求は、株主の入場制限及び修正動議無視という株主総会決議の手続き的瑕疵を主張してその効力の否認を求めるものであるから、右修正動議の内容が後日実現されたということがあっても、そのことをもって右特別の事情と認めるに足りず、他に右特別の事情を認めるに足る事実関係のない本件においては、訴えの利益を欠くに至ったものと解することはできない。」
スポンサードリンク
決議取消の訴えと裁量棄却・・・
最判昭和46年3月18日(株主総会決議無効確認請求事件)
民集25巻2号183頁、判時630号90頁、判夕263号213頁
<事実の概要>
Y株式会社は、臨時株主総会において、決議に加わった全株主(発行済株式総数の約半数)の満場一致で、会社解散、監査役・法定清算人選任の各決議を行った。
本件株主総会の招集には、以下の瑕疵があった。
すなわち、その招集を決定した取締役会に参加した取締役は総数7名中2名のみであり、また、本件総会の招集通知は、法定の招集期間より2日遅れて発送されたものであった。
そこで、Y社の発行済株式総数の1%に満たない少数株主のX1とX2がこれらの瑕疵を理由に、主位的に本件総会決議の無効確認を、予備的にその取消を求めて提訴した。
第1審、原審とも、各株主がY社が解散必至の状態であることを知っていたこと、途中退席者を除きX1を含めた出席者の全会一致で本件総会決議がなされたこと、欠席取締役5名中3名は総会の招集に異存がない上に本件総会決議にも加わっていること、本件総会決議の効力を争う株主はX1とX2のみに過ぎないこと、以上の諸点を理由として、本件招集手続の瑕疵は株主総会決議の結果に影響を及ぼさないことが明らかな場合に該当し、Xの請求を裁量棄却する旨判断した。
Xらは上告した。
<判決理由>一部上告棄却、一部破棄自判(予備的請求に係る総会決議の取消が認められた。)
「株主総会招集の手続又はその決議の方法に性質、程度等から見て重大な瑕疵がある場合には、その瑕疵が決議の結果に影響を及ぼさないと認められるようなときでも、裁判所は、決議取消の請求を認容すべきであって、これを棄却することは許されないものと解するのが相当である。
けだし、株主総会招集の手続又はその決議の方法に重大な瑕疵がある場合にまで、単にその瑕疵が決議の結果に影響を及ぼさないとの理由のみをもって、決議取消の請求を棄却し、その決議をなお有効なものとして存続せしめることは、株主総会招集の手続またはその決議の方法を厳格に規制して株主総会の適正な運営を確保し、もって、株主及び会社の利益を保護しようとしている商法の規定の趣旨を没却することになるからである。
ところで、Y社の・・・臨時株主総会における会社の解散、監査役及び法定清算人の選任の各決議について見るに、・・・右株主総会招集の手続はその招集につき決定の権限を有する取締役会の有効な決議にもとづかないでなされたものであるのみならず、その招集の通知は全ての株主に対して法定の招集期間に2日も足りない会日より12日前になされたものであるというのであるから、右株主総会招集の手続にはその性質及び程度から見て重大な瑕疵がある。」
スポンサードリンク
株主総会決議不存在確認の訴えと訴権の濫用・・・
最判昭和53年7月10日(社員総会決議不存在確認請求事件)
民集32巻5号888頁、判時903号89頁、判夕370号66頁
<事実の概要>
Y有限会社は、X及びその娘であるAを中心とする同族経営がなされていた会社であるが、昭和47年3月ころから経営の行き詰まりを来した。
そのため、X、A及びその他の主要な社員による協議の結果、XとAはその持分をB夫婦(B,C)に譲渡し、Y社の経営から手を引くこととした。
昭和47年5月28日、X、A及びAの夫とB夫婦との間で持分譲渡の合意がなされ、B夫婦は、持分の譲渡を受ける代償として、Y社の債務弁済等のため金500万円を出捐(しゅつえん)し、X、Aは、Y社に対して取締役の辞任届を提出した。
さらに、上記各社員持分譲渡の承認、B、Cの取締役選任等を内容とするY社社員総会決議があったとして、B、Cの取締役就任及びBの代表取締役就任の登記がなされ、以後B夫婦が事実上Y社の経営にあたっている。
Xは、本件訴えにおいて、上記社員総会決議の不存在確認を求めているが、訴えが提起されたのは、社員持分譲渡の合意の約3年後であった。
第1審において請求が認容されたため、Y社控訴。
原審は、本件社員総会決議が会社経営の実権の移転という重大な事項にかかわるものであり、かつ、決議に関する比較的軽微な瑕疵の存否ではなく、決議の存在そのものが問題となっている以上、Xの訴え提起を権利の濫用として排斥することはできないとして控訴を棄却した。
Y社は上告した。
<判決理由>原判決破棄、第1審判決取消し、訴え却下。
「Xは、相当の代償を受けて自らその社員持分を譲渡する旨の意思表示をし、Y社の社員たる地位を失うことを承諾した者であり、右譲渡に対する社員総会の承認を受けるよう努めることは、Xとして当然果たすべき義務というべきところ、当時Aと共に一族の中心となってY社を支配していたXにとって、社員総会を開いて前記Xらの持分譲渡について承認を受けることはきわめて容易であったと考えられる。
このような事情のもとで、Xが、社員総会の持分譲渡承認決議の不存在を主張し、Y社の経営が事実上B夫婦の手に委ねられてから相当長年月を経たのちに右決議及びこれを前提とする一連の社員総会の決議の不存在確認を求める本訴を提起したことは、特段の事情のない限り、Xにおいて何ら正当の事由なくY社に対する支配の回復を図る意図に出たものというべく、Xのこのような行為はB夫婦に対し甚だしく信義を欠き、道義上是認し得ないものというべきである。
ところで、株式会社における株主総会決議不存在確認の訴は、商法252条所定の株主総会決議無効確認の訴の一態様として適法であり、これを認容する判決は対世効を有するものと解されるところ(最高裁昭和・・・38年8月8日第一小法廷判決・民集17巻6号823頁、最高裁昭和・・・45年7月9日第一小法廷判決・民集24巻7号755頁参照)、右商法252条の規定には有限会社法41条により有限会社の社員総会に準用されているので、右社員総会の決議の不存在確認を求めるXの本訴請求を認容する判決も対世効を有するものというべきである。
そうすると、前記のようにXの本訴の提起がB夫婦に対する著しい信義違反の行為であること及び請求認容の判決が第三者であるB夫婦に対してもその効力を有することに鑑み、Xの本件訴提起は訴権の濫用にあたるものというべく、右訴は不適法たるを免れない。」
スポンサードリンク