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被裏書人の氏名だけの末梢・・・
最判昭和61年7月18日(約束手形金請求事件)
民集40巻5号977頁、判時1213号134頁、判夕623号76頁
<事実の概要>
AがBを受取人として振出した約束手形には、第一裏書人欄にB、同被裏書人欄にBと記入された上で抹消、第二裏書人欄にY、同被裏書人欄にYと記入された上で抹消、第三裏書人にCと記入された上で抹消、同被裏書人欄は白地、第四裏書人欄にはD、同被裏書人欄は白地、受取証欄にEと記入された上で抹消、第五裏書人にX、同被裏書人欄にXと記載されている。
Xが本件手形を支払期日に呈示したところ支払を拒絶されたので、Xが提訴した。
原審判決は、手形法16条1項3段の「抹消したる裏書」とは本来裏書署名と被裏書人欄の記載との全体を指すが、被裏書人部分のみの抹消を全部抹消と同視することは、その記載から看取しうる抹消行為者の意思に反するから、被裏書人部分のみを記載がなかったものとみなすべきであり、Xは裏書の連続ある手形の最終被裏書人として適法な所持人と推定される、としてXの請求を認容した。
Yは上告した。
<判決理由>上告棄却。
「約束手形の裏書欄の記載事項のうち被裏書人欄の記載のみが抹消された場合、当該裏書は、手形法77条1項1号において準用する同法16条1項の裏書の連続の関係においては、所持人において右抹消が権限のある者によってされたことを証明するまでもなく、白地式裏書となると解するのが相当である。
けだし、被裏書人欄の記載が抹消されたことにより、当該裏書は被裏書人の記載のみをないものとしても相当であり、ひいては手形の流通の保護にも資することになるからである。」
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手形保証と権利濫用の抗弁・・・
最判昭和45年3月31日(約束手形金請求事件)
民集24巻3号182頁、判時589号67頁、判夕247号180頁
<事実の概要>
A株式会社はB株式会社から船舶5隻の建造を請け負い、前渡金として代金の半額を2回に分割して交付を受けることとなった。
Aは、将来この請負契約の不履行があった場合Bに対して負担すべき損害賠償義務を担保するために、この代金半額相当の約束手形をBに対して振出した。
この際、Aの信用状態が芳しくなかったので、Bの求めに応じてAの役員であったY1・Y2が手形保証をした。
本件手形は、本件請負契約が不履行なく終了したときはAがBから本件手形の返還を受けることになっていた。
本件請負契約は期限に少し遅れたが全て履行された。
ところが、別の造船請負契約においてAがBに対して負担した損害賠償債務についてAが履行しなかったため、Bは本件手形をAに返還せず、X株式会社に裏書譲渡した。
X株式会社は支払期日に本件手形を支払い呈示したが、Aは会社更生法に入っており、支払を拒絶された。
手形訴訟ではXの手形金の支払を求めるY1・Y2に対する請求は認容されたが、原審判決は、手形保証の原因関係たる被保証債務が不成立ということに確定した場合には受取人は手形を所持する正当な権限を有しないから手形を振出人に返還すべきであるし、保証人への請求を認めると無用に煩雑な手続を強いるから、Y1・Y2はXに対し、Bに対する人的抗弁(権利濫用の抗弁)をもって対抗できるとし、請求を棄却した。
Xは上告した。
<判決理由>上告棄却。
「将来発生することあるべき債務の担保のために振出され、振出人のために手形保証のなされた約束手形の受取人は、手形振出の右原因関係上の債務の不発生が確定したときは、特別の事情のないかぎり、手形振出人に対してのみならず手形保証人に対しても手形上の権利を行使すべき実質的理由を失ったものである。
しかるに、手形を返還せず手形が自己の手裡に存するのを奇貨として手形保証人から手形金の支払を求めようとするが如きは、信義誠実の原則に反して明らかに不当であり、権利の濫用に該当し、手形保証人は受取人に対し手形金の支払を拒むことができるものと解するのが相当である(昭和・・・43年12月25日大法廷判決、民集22巻13号3548頁参照。)
そして、右受取人から裏書譲渡を受けた手形所持人につき手形法17条但書の要件が存するときは、手形保証人は、右悪意の所持人に対し右権利濫用の抗弁をもって対抗することができる。」
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支払呈示期間経過後の支払呈示の場所・・・
最大判昭和42年11月8日(為替手形金請求事件)
民集21巻9号2300頁、判時498号6頁、判夕215号96頁
<事実の概要>
Yは満期が昭和36年1月7日で支払場所の記載のある為替手形の引受人である。
本件手形の所持人であるX株式会社が本件手形を支払呈示期間経過後の同年1月11日に支払場所で呈示したが、支払が拒絶されたため、XがYに対して手形金及び同年1月12日以降の遅延損害金の支払を請求した。
原審がXの請求を認めたためYが上告し、上告理由の1つとして、支払場所の記載は支払呈示期間内の呈示についてのみ意味があり、支払呈示期間経過後に支払場所に呈示があっても付遅滞の効力を生じないと主張した。
上告審判決は以下の理由でこの主張を容れ、Yは本訴移行前の支払命令正本の送達(同年3月10日)によって初めて遅滞に陥ったものであり、原判決のうち1月12日から3月10日までの遅延損害金の支払を命じた部分は失当であるとし、その部分に関する原判決を破棄し、Xの請求を棄却した。
<判決理由>一部破棄自判、一部上告棄却。
「支払場所の記載はその手形の支払呈示期間内における支払についてのみ効力を有するのであって、支払呈示期間経過後は支払場所の記載のある手形も、本則に立ちかえり、支払地内における手形の主たる債務者の営業所または住所において支払われるべきであり、したがって支払の呈示もその場所で手形の主たる債務者に対してなすことを要し、支払場所に呈示しても適法な支払の呈示とは認められず、手形債務者を遅滞に附する効力を有しないものと解しなければならない。
本来、手形は支払呈示期間内における手形金額の支払をたてまえとし、それを予定して振出されるものであって、支払場所の記載もまたかかる手形の正常な経過における支払を前提としてなされるものと解するが、・・・当事者の意思に合致するのみならず、手形取引の在り方から見ても合理的であると考えられる。
けだし、・・・もし支払呈示期間経過後もその手形の支払が支払場所でなされるべきであるとするならば、手形債務者としては、手形上の権利が時効にかかるまでは、何時現れるかわからない手形所持人の支払の呈示にそなえて、常に支払場所に・・・資金を保管していることを要することになって、不当にその資金の活用を阻害される結果となるし、さりとて・・・資金を保持しなければ、自己の知らない間に履行遅滞に陥るという甚だ酷な結果となるのを免れないからである。
・・・手形債務者は手形金額を供託しその債務を免れる途がないではないが、しかし手形金額の供託は、手形債務者の資金の活用を阻害して取引の実情にそわない点では・・・異なるところはない。
もっとも、・・・手形所持人が支払呈示期間経過後に支払の呈示をする場合に多少の不便を生ずることは否定できないが、それは支払呈示期間を徒過した手形所持人として当然忍ぶべき不利益といわざるを得ない。
また、・・・手形が・・・文言証券と解せられるのは、・・・健全な手形取引の確保をはかる必要に基づくのであって、その必要を超えてまでも手形の文言証券性を云為することはその本来の趣旨を逸脱するものというほかなく、支払地のごとき手形要件は別として、支払場所のように主として手形債務者の支払の便宜を顧慮して認められた記載事項については、これを・・・制限的に解しても、それが手形取引から見て合理的と認められるかぎり、手形が文言証券であることと格別背馳するものとはいえない。」
本判決には大略以下のような反対意見がある。
①支払場所の記載は所持人にとっても重要であり、手形債務者がこれに拘束されることは文言証券である以上当然である。
②主債務者は供託により債務を免れうるのであり、また、支払呈示期間経過後に主債務者が自己の営業所・住所で資金の準備するのであれば資金の活用を阻害されるという結果は同じであるし、むしろ主債務者が資金の準備をしておくのは当然のことである。
③多数意見のように解すれば、手形所持人は主債務者の営業所・住所を捜索しなければならず、支払呈示期間経過によって遡及権喪失以上の不利益を蒙ることになる。
④支払場所の記載が失効するならば、支払地の記載も失効すると解さなければ、特に主債務者の営業所・住所が支払地位外にあるときには不合理である。
⑤多数意見によれば、満期前遡及の要件としての呈示の場所も主債務者の営業所・住所になるが、それが正当かどうか疑わしい。
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手形法40条3項にいう重大な過失・・・
最判昭和44年9月12日(売掛代金請求事件)
判時572号69頁
<事実の概要>
YはXに対する売買代金の支払のために約束手形2通を振出し、Xの代理人Aに交付した。
当初これらの手形の受取人はXとなっていたが、そのうちの1通である本件手形について、AはYに対して受取人名を抹消して白地にするように求めた。
従前にも同様のことがあったので、Yは求められるままにこれを白地にしてAに手渡した。
XとAの間の紛争からAは本件手形についてはXに引き渡すことを拒み、受取人欄に自己の名を書き込んだ上で白地式で隠れた取立委任書をいて取立銀行に交付し、支払期日に手形交換の方法で呈示させ、その支払を受けてしまった。
支払期日の1ヶ月以上前に、YはXから書面で、Aが本件手形を正当な事由なくXに交付しないこと、本件手形の受取人欄にはX名義が記載されているはずなので、Xの裏書署名を偽造しない限り、これを処分し又は取り立てにまわすことはできないのであるから、A又はその他の者による取立の場合には善処してもらいたい旨の申入れを受けていた。
XがYに対し、本件手形の手形金相当の売買代金が未払であるとして、その支払を求めて提訴。
原審は、Aは正当な手形上の権利者でないのにその支払を受けたものであるところ、Yには少なくとも手形法40条3項にいう重大な過失があったとしてXの請求を認めた。
Yが、①XはAが取立て等を行なうことを予期して権利保全手続をとるべきであったにもかかわらずそれを怠ったものであり、そのようなYの重大な過失を軽減すべきXの過失を認めなかった原判決には理由に齟齬がある、②原判決は、Xの申入れをもってYはAが権利者でないことを容易に知りうべきであり、しかもその無権利者であることを証明すべき証拠方法をも確実に得ることができたとするが、事実の誤認である、③原判決は、YがXの申し入れにもかかわらず何ら調査することなく支払をしたことに重大な過失があるとするが、これは支払人に所持人が実質的権利者であるかどうか等についての調査の責任を負わせるもので、手形法40条3項の解釈を誤っていると主張して上告。
<判決理由>上告棄却。
①について「(本件の)事実関係のもとでは、Xにおいて、その後本件約束手形の受取人欄がYによって抹消された場合のことまでも考慮して、権利保全の手続を執らなければならないものではない。」
②について「原判決によれば、Aは本件約束手形の正当な所持人でないのに、勝手に白地の受取人欄を補充して自己を形式的資格者として満期に呈示したのであるが、Yは、右呈示前・・・Yに到達した書面により、Xから(事実の概要にあるような)申入れを受けていたのであり、かつ、Yは本件約束手形の受取人欄のX名を抹消し、白地としてAに交付したのであるから、必要な調査をすれば、Aが右白地を同人名義に補充して呈示しても、同人が権利者でないことを容易に知りうべきであり、かつ、その無権利者であることを証明すべき証拠方法をも確実に得ることができたものと認めるのが相当で、Yが、何ら調査をすることがなく、漫然、委託銀行をして本件約束手形金を呈示者Aに支払わしめたことについては、少なくとも、手形法77条1項3号によって約束手形に準用される同法40条3項にいう重大な過失があるというべきであるといのであるが、原判決挙示の証拠関係に照らせば、原審の右認定判断は首肯するに足りる。」
③について「前記手形法40条3項によれば、満期において支払をする者は、悪意または重大な過失のある限り、その責を免れることができないこととなるのであるから、かような意味において、右支払をする者は実質的な調査義務を負うものといわなければならない。」
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