遺言執行者指定の委託する遺言・・・
遺言者は、遺言で、遺言執行者を指定することを第三者に委託することができます。
遺言者が遺言執行者として指定した者が相続開始前に死亡すると、遺言執行者指定の遺言は効力を失うことになりますが、このような場合を想定して、遺言執行者に指定された者が弁護士であるときは、遺言者が「指定した遺言執行者が死亡したときには、新たな遺言執行者の指定を**弁護士会の会長に委託し、同会長の指定した弁護士を新たな遺言執行者とする」旨を遺言しておくと、新しく指定を受けた遺言執行者と受遺者の共同申請により遺贈による所有権移転登記申請をすることができますので、遺言執行者選任手続を省略することができます。
遺言執行者指定の委託は、必ず、遺言でなされなければなりません。
(遺言執行者の指定)
民法第1006条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。
第三者に遺言執行者を指定することを委託する遺言は、遺言者死亡の時に効力を生じます。
第三者が委託に応ずるかどうかは随意です。
第三者が遺言執行者指定の委託を辞退しようとするときは、遅滞なく、その旨を相続人に通知しなければなりません。
第三者が遺言執行者の指定を委託を承諾したときは、遅滞なく遺言執行者を指定します。
受託者は、遺言執行者を指定したことを相続人に通知しなければなりません。
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遺言執行者指定の方式・・・
遺言執行者の指定の委託を受けた受託者が遺言執行者を指定する場合、その方式を定めた規定はありません。
遺言執行者は、遺言の執行につき多くの権限を有します。
執行行為をするには、その権限を証する書面が必要です。
通常、遺言執行者の資格・権限は、公正証書や家庭裁判所の審判のように公文書によって証明されていますので、遺言執行者の指定も書面で行い、指定書には受託者が署名押印し、その押印は実印を用いたほうが証明力は強くなります。
遺言者が、遺言で、遺言執行者の員数を定めているときにはその意思に従います。
特に員数を定めていないときは、受託者が遺言の内容によって、その員数を定めることができるとされます。
遺言執行者の指定の委託を受けた者が委託に応ずる場合には、遅滞なく、遺言執行者を指定して、これを相続人に通知しなければなりません。
(遺言執行者の指定)
民法第1006条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。
相続人が数名ある場合、その全員に通知すべきかについては、家庭裁判所が行なう遺言執行者選任審判の告知は遺言執行者及び申立人にされている点からみると、通知は1名にすればよいとされます。
委託を受けた第三者が自分自身を執行者に指定することができるかについては、単独の相続人である場合を除いて、認められるものと解されています。
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遺言の知識2 ・・・
<自筆証書遺言と公正証書遺言の比較>
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
作成の方法 | 遺言者本人の自書 | 遺言者が口授した内容を公証人が筆記 |
証人の要否 | 不要 | 2名必要 |
遺言の保管 | 遺言者本人の保管 | 公証役場が原本を保管 |
検認の要否 | 必要 | 不要 |
長所 | ・手軽にできる ・費用がかからない ・遺言の存在や内容を秘密にできる |
・方式や内容の不備により無効となるおそれがない ・偽造、変造、隠匿のおそれがない ・すぐに執行できる(検認が不要) |
短所 | ・方式や内容の不備により無効となるおそれがある ・偽造、変造、隠匿のおそれがある ・検認が必要なので執行までに手間と時間がかかる |
・証人を手配する必要がある ・公証役場に提出書類(遺言者本人の印鑑証明書、遺言者と財産をもらう相続人との続柄がわかる戸籍、不動産の謄本、評価証明書等) ・公証人に支払う手数料がかかる ・遺言内容が証人に知られてしまう |
<遺言作成に際しての注意点>
①自筆証書遺言特有の注意点
印鑑は三文判でもよいとされます。
ただ、実印を用いたほうが遺言者自身が真意に基づいて作成したと推定されやすい効果はあります。
偽造変造対策にも効果があります。
住所は所定の方式には含まれませんが、記載しておくと、不動産登記の際、所有者確認がしやすいです。
実印を押印して印鑑登録証明書を添付するようにしておくと、遺言当時の住所を確認できる公的資料となります。
日付は重要で、これは遺言の先後を確認する手段となります。
「**年**月吉日」は特定できないため不可です。
「**年**月元旦」「**年**月誕生日」なら特定は可能ですが、ちゃんとした日付を記載するのが無難です。
2人以上の者が同一の証書で遺言をする共同遺言は禁止されていますので、夫婦であっても別々に遺言しなければなりません。
訂正(変更)にも方式があるので注意が必要です。
訂正箇所を線で訂正し、訂正箇所へ訂正押印、欄外や末尾に訂正箇所と訂正内容を付記し、署名します。
②公正証書遺言特有の注意点
公正証書の原本は公証役場に保管されるので、遺言者が手元の正本を訂正しても訂正したことになりません。
公正証書のまま訂正するには、新たな公正証書遺言を作成します。
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遺言執行者の選任事由・・・
遺言者は自ら遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができます。
指定の遺言執行者がなくなったとき、家庭裁判所は利害関係人の請求によって遺言執行者を選任することができます。
(遺言執行者の選任)
民法第1010条 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
遺言執行者がないときとは、遺言執行者の指定のない場合、指定の委託をされた第三者がこれを承諾しない場合、指定された遺言執行者が就職を承諾をしない場合、欠格事由該当者を指定した場合などが、これに該当します。
また、遺言執行者が破産者になった場合、辞任又は解任された場合は、遺言執行者がなくなったことになります。
(遺言執行者の指定)
民法第1006条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。
(遺言執行者に対する就職の催告)
民法第1008条 相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、遺言執行者が、その期間内に相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。
(遺言執行者の欠格事由)
民法第1009条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。
(遺言執行者の解任及び辞任)
民法第1019条 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。
2 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
未成年者及び破産者は、遺言執行者になることはできません。
欠格事由のある者を遺言執行者に指定しても、その指定は無効です。
就職後に欠格事由が生じたときは、その時から当然にその資格を失います。
成年後見制度の施行の際、成年被後見人・被保佐人を欠格者とする規定は置かれませんでした。
遺言執行者に成年被後見人・被保佐人である者を指定する遺言は、当然無効ではなく、その地位喪失には家庭裁判所の解任審判が必要です。
民法1010条に基づく遺言執行者選任審判申立事件は、甲類審判事項です。
①申立権者
利害関係人です。
利害関係人とは、相続人・被認知者・受遺者・相続債権者・受遺者の債権者・相続財産管理人など、遺言の執行に関し法律上の利害関係を有する者をいいます。
②管轄
相続開始地の家庭裁判所です。
④添付書類
申立人、遺言者の戸籍謄本
遺言執行者候補者の戸籍謄本・住民票
遺言書の写し
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