保証人への時効更新の効力・・・

保証人への時効更新の効力・・・

民法457条1項に、主たる債務者に対し時効更新がされたときは当然に保証人にも効力が及ぶ、とされています。

保証債務は主たる債務に当然に附従するとされていますので、主たる債務に関して発生したことはすべて保証人に効力が及ぶのです。

主たる債務につき時効更新があると、その効力は連帯保証人にも及びます。

連帯債務者となると、少し違ってきます。

民法434条に「連帯債務者のうち1人に対する履行の請求は他の債務者に対して効力を生ずる」と定めており、民法440条には「前6条に規定する場合を除き、他の連帯債務者に対して効力を及ぼさない」としていますので、連帯債務者の中の1人に対して履行の請求という方法で時効を更新した時は、その更新の効力は他の債務者に及びますが、その他の理由による更新の場合は及ばない事になるのです。

また、保証人に対して時効更新があったときその効力が主たる債務者に及ぶかというと、これは及びません。

保証債務は主債務に附従しますが、主債務は保証債務に附従しないからです。

債権者が保証人や連帯保証人の財産につき差押、仮差押、仮処分をしたときは、保証債務について時効は更新しますが、それだけでは主たる債務の時効を更新しないのが原則です。

しかし、民法155条によると、右の差押や仮差押のあったことを主たる債務者に通知した時は、主たる債務についても時効が更新すると規定しているのです。

この通知の方法としては内容証明郵便でもよいですし、裁判所から主たる債務者を利害関係人として差押、競売開始決定書等を送達してもらうこともできます。

連帯保証人や連帯債務者に対する時効更新は、原則として主たる債務者に及びません。

連帯債務者の1人に対する請求は他の債務者にも時効更新の効力を及ぼしますので、履行の請求による更新だけは例外的に主たる債務者にも効力を及ぼす事になります。

履行を請求する訴訟を連帯債務者や連帯保証人に対して提起すれば、主たる債務者を被告にしていなくても主たる債務の時効も更新する事になります。

民法458条は、民法434条を連帯保証人についても準用していますので、履行の請求に関しては両者は同じ扱いとなります。

主たる債務者に対して確定判決があったときは時効10年となり、この場合、連帯保証人や保証人に対しては判決がないときでも保証人の債務も同様に10年の時効になるとされています。

この逆に、保証人や連帯保証人に対しては確定判決があって時効が10年になっても、主たる債務の時効が10年にならないとされています。

保証債務は主債務に附従しているということで、連帯債務は債務者同士が独立し対立しているのですが、履行の請求だけは例外なのです。

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抵当権者への時効更新の効力・・・

民法396条には「抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない」としています。

債務と抵当権とは一体ですから、債務が消滅しない限り抵当権も消滅しないわけで、債務について時効更新があったときは抵当権の時効も更新する、ということなのです。

民法396条には債務者及び抵当権設定者とありますので、その他の抵当権の第三取得者とか後順位抵当権者については、主たる債務について時効更新があっても、それだけでは後順位抵当権者等に対する関係では抵当権の時効は更新しないとされています。

債権者Aが債務者に500万円を貸し、債務者所有不動産に一番の抵当権を設定したとします。

その後、別の債権者Bがこの債務者に300万円を貸し、同じ不動産に二番の抵当権を設定したとします。

債権者Aの500万円が10年の消滅時効にかかったとすると、債務者は、当然この援用権がありますが、もし、債務者がこれを援用しない時は、債権者Bに援用権があるのでしょうか。

援用できるとすれば、債権者Bは実質的には自分が一番抵当権者になれるわけですから、利益になります。

しかし、判例は、物上保証人、抵当不動産の第三取得者にも援用権を肯定してきましたが、まだ二番抵当権者には援用権を認めていません。

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手形債権の時効の更新・・・

約束手形の振出人、為替手形の引受人については3年、裏書人については1年、小切手の振出人や裏書人については6ヶ月と、手形・小切手の時効期間は規定されています。

手形債権の時効を更新するための催告には、手形の呈示は必要ありません。

ただし、これは裁判外の催告ですから、それから6ヶ月以内に裁判を起こさないと時効更新の効力がなくなってしまいます。

手形債権と原因債権の関係ですが、商品の売主は買主に対し売買代金請求権を持ちます。

これを原因債権といいます。

もし、この場合に買主が売主に約束手形を交付したとします。

そうすると売主は手形金請求権を持ちます。

この両者の関係は、「売買代金の支払に代えて」手形を交付することありますが、普通は、「売買代金の支払確保のために」手形を交付したとみなされています。

すると、手形債権と原因債権の2つの債権が存在する事になります。

商品売買代金請求権の消滅時効は2年です。

約束手形所持人の手形振出人に対する手形金請求権の消滅時効は3年です。

原因債権が時効にかかったら手形債権はどうなるのでしょうか?

この売主と買主とは直接の当事者ですから原因関係に基づく抗弁をもって手形債権に対抗できるわけです。

これを手形の人的抗弁といいます。

ですので、商品売買時から2年以上経った時に、売主が買主に手形金を請求してきたら、原因債権が消滅しているから手形金を支払う義務はなくなるのです。

ただし、手形は多くの場合、第三者に廻されます。

この場合に人的抗弁は主張できないので、売買時から2年以上経った時、第三者から手形請求を受けたら買主は手形金を支払わざるを得ません。

商品売買から3年以上経ったら、更新がない限り、売買代金請求権の手形金請求権も消滅時効にかかります。

また、商品売買代金については債務承認等の時効更新事由があったとしても、それは手形金請求権の時効は更新しないとされています。

法律的に両債権は別物であり、消滅時効期間も違いますから、主債務の承認は手形債務の承認とはならないと解されています。

手形債権について手形書換などの債務承認によって時効更新したら、原因たる売買代金の消滅時効を更新するのでしょうか?

判例では、商品売買代金の支払確保のために手形を交付した時は、その手形授受の当事者間においては、手形金請求訴訟を提起することは、手形が原因債務の支払手段であることから、債権者はその代金支払請求をしていることにほかならない、ゆえに手形金請求によって手形のみならず原因債権の時効も更新する、としています。

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