時効取得した土地を売却するには・・・

時効取得した土地を売却するには・・・

時効で土地を取得した場合、権利証もなく、登記簿にも記載がないわけですが、その土地を売却するためにはどうしたらよいのでしょうか?

この場合には、まず登記をしなければなりません。

元の地主から委任状と印鑑証明がもらえれば手続をすることができますが、普通はもらえません。

その場合には、元の地主を相手に訴訟を起こさなければなりません。

そうして判決を取って、その判決を元に登記手続きをします。

権利証は必ずしも必要ではなく、権利証のない場合には保証書で代用できます。

判決によって登記し、登記識別情報を作成して、それからこの土地を他に売却する事ができます。

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所有権の消滅時効とは・・・

<改正後民法>

(債権等の消滅時効)

第166条

1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。

3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。

ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

<ここまで>

民法166条2項を見ますと、所有権を除外しています。

これは所有権は消滅時効にかからないことを示しています。

例えば、山の中にに別荘地を買ったのですが、10年も20年もこれを放っておいたとしても、この土地所有権が消滅時効にかかることはないということです。

ただし、もし、第三者が何らかの原因でこの別荘地を自分の所有物と信じて20年以上も占有していたとすると、その第三者が取得時効でこの別荘地所有権を取得してしまう事はあり得ます。

そうことになりますと、取得時効の反射的効果として真の別荘地所有者はその土地所有権を失う事になります。

これは消滅時効ではなく、取得時効の反射的効果です。

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地上権、永小作権、地役権の時効・・・

3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

民法166条2項の「債権又は所有権以外の財産権」というのは、地上権、永小作権、地役権等の用益物権のほか、形成権とか解除権を指しますが、民法126条には「取消権は5年で消滅時効にかかる」と規定しています。

しかし、形成権というのはその性質上、権利の不行使状態ということが考えられません。

ですので、消滅時効は考えられず、民法126条は除斥期間だとするとの考えがあります。

用益物権については、民法167条2項によって消滅時効にかかりますので、地上権をもっている人もこれを使用しないで20年以上経つと時効で権利を失う事になります。

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担保物権(抵当権、質権)の消滅時効とは・・・

民法166条2項に担保物権は原則として含まれません。

その理由は、民法396条に「抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない」と規定されているからです。

債務者は通常は自己不動産に抵当権を設定します。

この場合は債務者が同時に抵当権設定者です。

債務者の親の所有不動産に抵当権を設定した時は、親が抵当権設定者となります。

民法396条によると、債務者と抵当権設定者とに対しては、抵当権はその被担保債権と同時でなければ、すなわち、被担保債権が消滅時効にかかったときに同時に抵当権も消滅時効にかかると定められています。

抵当権だけ独立に時効にかかることはないのです。

ただし、民法396条に「債務者、抵当権者」と限定しています。

この反対解釈としてそれ以外の人、例えば、抵当権のついている不動産の所有権を買い取った人である抵当権の第三取得者については、民法396条は適用されず、この人に対しては民法167条2項により20年で抵当権だけが消滅時効にかかるとされています。

債権者と債務者との間で利息さえ支払っていれば時効は更新されますので、貸金債権は時効にかからず抵当権はなくなりません。

しかし、その間に不動産を買い取った第三者がいて、それから20年もたってしまうと、この第三者が債権者に対し時効になったから抵当権を抹消しろと請求できる事になるのです。